還暦を迎えるようになると、自分の良かった時期、ちょっと病的だったかもと思われる時期がいくつか思い描けるようになってくるようだ。さらに、生き甲斐の心理学を勉強して行くと、それが理論的にどうかが、徐々に判ってくる。
良かった時期というのは、周りの環境に充分適応し、さらにこころの状態(プロセススケール)も良い時のようである。
男性であれば、仕事や学業で良い成績を上げた時などであろう。私も、営業で若いころ表彰された時とか、マーケティングで良い仕事をした時などを幾つか思い出す。そういう時の状態を、世間では、本人の努力や教育の成果とか、いろいろ理由をつけるが、心理的状態に眼をつける人は殆どいない。
しかし、心理的状態は結構大きな比重をしめている。
それは、どういう状態なのだろうか?一言で言えば、冴えている時である。思考が観念的になるのでなく、五感・体感・感情とぴたっと統合され、行動もスムース。何か打てば響くという状態だ。
戦後、カウンセリングや心理療法で有名なカール・ロジャースが発表したパースナリティ理論で言えば命題15だ(難解な心理学用語なのでなれない方は読み飛ばしてください)、
15) 心理的適応は、自己概念が、象徴のレベルにおいて、有機体の感官的・内臓的経験をことごとく自己概念と首尾一貫した関係に同化しているか、もしくは同化するであろうときに存在するのである。
ロジャーズ全集 パースナリティ理論8 伊藤博訳 岩崎学術出版社 132p
冴えている時は、自分の暗い感情をも抑圧することなく、充分吟味し、その中から的を得た意味づけをする。例えば、営業で若いころ良い成績を上げた時は、一日の感情の激しい変化に自分でもおかしいのではと思ったことがある。逆に言えば、それだけ感情を抑圧せず、意味づけを考えられたのだろう。
原発問題など、様々な人間模様が見られ、あるいは自分自身のこころの動きもあり、いろいろ勉強になる。命題15がもっとポピュラーになれば、原発問題も随分早く解決できるのになあと妄想してしまう。
健康に生きる 10/10