広田寛治のブログ

音楽と社会と歴史と

MC考(最終版)/伊豆田洋之の「間(ま)」をめぐっての妄想

2012年05月18日 12時09分01秒 | ライブ・ドラマ・映画
(ご注意/まじめに書いてますが、笑いながら読んでください)
ライブの楽しみのひとつにMCがある。曲間のおしゃべりだ。作品からは味わえないミュージシャンの人柄や生き方が伝わってくるからだ。それだけにそのミュージシャンの初めてのライブに行ったときのMCの第一声に耳を澄ます。
たいていは無難なウエルカム・トークをして場をなごませる。ポール・マッカートニーもリンゴ・スターこのタイプだ。無口なジョージ・ハリスンは「サンキュー」という一言ですべてを言い表していたように感じた。ジョン・レノンが生きていれば、今でも聴衆を挑発するようなMCで始めるかもしれない。
エリック・クラプトンもザ・フーもそうだが、ロック系の海外ミュージシャンはたいてい愛想がない。その極地はほとんど喋らないボブ・ディランだ。それに比べれば、キャロル・キングやサイモン&ガーファンクルといった弾き語り系はトークも含めてひとつのショーになっている。
日本のミュージシャンはけっこう話し好きが多い。とりわけフォーク系のミュージシャンは演奏時間より話のほうが長いこともある。さだまさしのように話に起承転結があればまだいいが、つまらない話が続くと、心のなかでは曲を聴かせてくれと叫んでしまうこともある。日本でもロック系のミュージシャンは必要最小限のMCしかしない。そんななかでミスター・チルドレンやサザン・オールスターズといったメジャーバンドは観衆とのコミュニケーションの取り方がうまい。
そんなミスチルでもMCを考えるのはたいへんらしい。デビュー20周年を記念した今回のライブでは、ボーカルの桜井がMCの難しさを語り、ドラマーの鈴木に一部MCを担当させ、鈴木は毎日MCのことで頭がいっぱいで寝不足だと笑いながら語っていた。無口なんだかおしゃべりなんだかわからない井上陽水はヘタウマMCの王様だ。
さて、ここからが本題だが、ポール声の伊豆田洋之のMCは不思議だ。決して聴衆思いのポール・マッカートニー風ではない。シャイにみえるところはむしろジョージ・ハリスン風だ。だが、客席にとまどいをもたらす意味不明な「間(ま)」が多いのは、ボブ・ディランに近い。日本人では陽水タイプだ。ただ陽水は自嘲気味に笑いを取って「間(ま)」を巧みに笑いに変えるが、伊豆田は観衆を放置する。ご本人は決してそんな風には思っていないのだろうが、MCなんてどうでもいいと思っているように感じさせるところは、やはりボブ・ディランにいちばん近い。喋るのかと思ったら水を飲むだけというのもディラン風で、もっと堂々とやれば、もっとかっこいいはずだ。
彼のライブに足を運ぶたびに不思議なMCだなという思いが強まっていったが、前回のライブで個人的には謎が解けた気がしている。オリジナル曲を歌う前のMCではさほど「間(ま)」を感じさせないし、笑顔をみせることもあるのだ。熱心なファンの方には周知のことかもしれないし、まったくの的外れかもしれないが、おそらくこの「間(ま)」は、ポール声で歌う時に顕著なのだろう。そして、その「間(ま)」こそが、彼のポール声ライブの生命の源なのかもしれない。ちょっとオカルトじみていると笑われそうだが、その「間(ま)」とは、彼のなかにポールが降臨するために必要な時間、彼にポールが憑依(ひょうい)するために必要な時間なのではないだろうか。「科学」が好きな人は、その「間(ま)」を、彼の中にインプットされたポールのデータベースにアクセスする時間、と言い換えてもいいのかもしれない。彼はあの短い時間を使ってポールになりきり、ポール声で歌いはじめ、われわれを夢の世界へと誘ってくれるのだ。
それにしても伊豆田洋之のポール声はすばらしい。ビートルズが音楽の世界遺産なら、彼の声は国宝に指定されるべきだ。機会があったらぜひ彼のライブに足を運んでその声を確認してみてください。

●ベスト盤発売記念ライブ
ゴールデン☆ベスト 伊豆田洋之~夢のふるさと~発売記念オフィシアル・ライブ・パーティ 
伊豆田洋之、伊豆田洋之を歌う
2012年6月30日土曜日
出演:伊豆田洋之
司会:サエキけんぞう
ゲスト:土橋一夫(曲解説)
開場:17:30 開演:18:30
前売り・予約 3500円+1プレートor 2ドリンク(1000円)
当日      4000円+1プレートor 2ドリンク(1000円)

前売り5/21より
店(メール)or イープラス
(入場は 同列&店優先)
場所:風土カフェ&バー「山羊に、聞く?」 http://yagiii.com/
TEL: 03-6809-0584 FAX:03-6809-0572
MAIL:info@yagiii.com
住所:東京都渋谷区代官山町 20-20モンシェリー代官山 B1F
交通:代官山駅正面口。徒歩1分。右斜め前に直進。右側2軒目のビル地下1階



『音楽』 ジャンルのランキング
コメント (6)   この記事についてブログを書く
« 5月16日(水)のつぶやき | トップ | 事件104「1971年7月31日 マ... »
最近の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
真面目に読みました。 (yasu)
2012-05-18 23:49:53
フレンドリーではない、むしろ、居心地の悪さを感じる「間」を考察して下さって、ファンとして嬉しく思います。
大きく息を吸って、エリック・カルメンの声に変貌する瞬間も見事ですよ。
ホッ (hirota)
2012-05-19 07:46:44
おそるおそる書きました。エリック・カルメン機会があったらこっそり楽しみます。ベスト盤もきてみようと思っています。
ファンのひとりとして (Aira)
2012-05-19 20:04:17
大変興味深く読ませて頂きました。

伊豆田さんの他の誰とも違う「間」に、はじめの頃は戸惑いを感じたものでしたが、今では1曲毎にミネラルウォーターを口に運ぶその間、「次への間」を楽しめるようになったような。。。 考察、ありがとうございました。
ありがとうございます。 (hirota)
2012-05-20 06:32:49
あのとまどわせる感。聴き手にとっての「間」でもあるのですね。日本の伝統芸能は「間」をたいせつにするってよく聞きます。
伊豆田は観衆を放置する (yuu)
2012-05-22 00:38:27
「伊豆田は観衆を放置する」
どう表していいかわからないあの間をこの言葉で表現されて、思わず大きく頷きました。
オーディエンスにまったく媚びないあのMCは、ある意味彼の生き方そのもののようだし、音楽に対する自らの向き合い方なのだと思います。
そしてファンである私たちはもどかしさを感じながらもあの歌声と演奏に納得させられ、惹かれずにはいられないのです。
同感です。 (hirota)
2012-05-22 07:11:38
生き方を貫くことって大事ですよね。とくにミュージシャンにとっては…。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ライブ・ドラマ・映画」カテゴリの最新記事