熱帯魚・金魚・犬

愛するペットとの日々

People Are People

2005年04月17日 | Weblog
澤山トオル

この名前のマンガ家をご存知だろうか。

今まで2冊の単行本を「一気堂書房」という
はっきりいって聞いたこともない出版社から出している。

そしてまた彼は恐ろしく寡作だ。
処女作「つぐみの庭」は1992年発行。
2作目の「アフターグロウ」は2001年の発行。
10年近い間が空いているのだ。

しかし作品の雰囲気はというと驚くほど変わらない。

彼の作品の特徴は静まり返った空間を感じさせる絵だ。

どんなに激しい暴力シーンが描かれていても、
それは水底で行われているかのように
登場人物たちの背後には広大ではあるが、
どこか淀んだ空間が広がっている。

そして描かれているのは一貫して、
人間の心である。
しかもどちらかといえば、人間の心の暗部。

彼の作品に出てくる登場人物には必ず、大きな欠如がある。

愛情や、周囲の人間に対する配慮、そして道徳心。
そういった心の動きに関わるものが何か大きく欠如している。

「つぐみの庭」に収録されている60ページほどの中篇、
「地軸」ではそれは愛情だった。


主人公は妻子を持つ、もうすぐ40になる男だ。

社会的な地位もある程度あり、
会社では将来を嘱望される身。

家庭も円満なように周囲からは見えているし、
実際本人達ですら問題に気付かないほど、
彼らは幸せに過ごしている。

しかしそれはあるひとつの小さな事件をきっかけに崩れる。
最初は、微妙な<ずれ>だが、
確実に今までの<幸せな丸い世界>の形を
いびつに変えていくのだ。


澤山はその微妙なずれの積み重ねを執拗に描いていく。

男は自分の心にそして感情の動きに違和感を感じる。
本当は誰に対しても、何に対しても
愛情を抱いていない自分に気付き、
そのギャップを埋めるための行動を開始する。

やがて違和感はふくらみ、
男は周囲をゆるやかな狂気で包み込んでいく。

狂気は別の狂気を喚起する。
狂気の連鎖がおこるのだ。

人間の心の暗闇にある共通項がそこから見えてくる。


そして最新作(といってももう4年前だが)の
「アフターグロウ」では主人公は11歳の男の子だ。

澤山が描く欠如はさらに進み、
今度の主人公の彼にはおおよそ人間らしい感情全てが
欠如しているように見える。

彼は新興住宅地に住んでいる。
普通の小学生としての暮らしが描かれている。
20ページほど、その様子が描かれているのだが
そこには「地軸」と同様、微妙なずれが仕込まれているのだ。

やがて、親、友人、教師を巻き込み、
彼を中心として物語は大きく動いていく。

今度の話では多くの人が死んでいくが、
その死は救われない死ばかりである。

<裏切り>というのがこの作品のキーワードと思われるが
そこには多種多様の裏切りが描かれている。

主人公の少年に強烈な不快感を抱きつつも
次はどうやってやるのか、
その次はどんな残酷な方法で、と読者に期待させる。

読み進めれば進めるほどに
その残酷な思考法に同化させられている。

不快と思っていた心の動きが自分の中にも在る、
そのことに気付かされるのだ。

そして物語は最悪な状況でふいに終わる。


澤山の描く物語には救いがない。
はっきり言って、読後感は最悪といってもいいほどだが、
なぜだか読み出すと止まらない魅力がある。

決して一般受けするとは思えないが、
私は次回作を待っている。
たとえ、それが10年後であろうと。
しかもそんな作家がいないことを知っているわけだけど。


今日の曲
People Are People/Depeche Mode
なんか今回の話にあいそうな曲だと思いました。

かけない。

2005年04月16日 | Weblog
面白いネタはあるけどかけない。
残念至極である。
5年後くらいに忘れてなければ書こう。

さて、どうでもいいことだが
私の鼻毛が伸びる速度がとても早い気がする今日この頃だ。

髪が伸びるのが早い男はスケベである
というのは何回か聴いたことがあるので
鼻毛が伸びるのが早い人はなんていわれるのかを調べてみた。

全く忙しいのか暇なのか自分でもよくわからないが、
気になってしまったものはしょうがない。
取締役会の資料を作るよりも熱心に調査をしたところ
どうやらこの説が有力らしい。

鼻毛が伸びるのが早い人は食に卑しい

つまり、食い物が好きなあまり
あちこちのにおいをかぎまわるから
ついでに沢山のホコリも吸ってしまうことになり
結果として鼻毛が伸びるのも早いという算段だ。

卑しいっていわれてもなぁ。

かなり質素な食生活を送っているし、
何しろ晩飯のメインは豆腐だ。
どこにいやしさがあるというのか。

自分で考えてみたところの原因は、
<タバコ>と<掃除を怠っているが故のハウスダスト>
であると思われるが、
よくよく考え直してみると
最初に書いたとおり他人と比べたことがないので
本当に私の鼻毛が伸びるのが早いのかわかったものではないし
大体において鼻毛が伸びるのが早い人はなんていわれるか
なんて調べるわけもないのだ。

嘘なのだよ、つまりは。
あぁしかも練れてない。
素敵な嘘を考える余裕をギブミー。

続・フレッシュ

2005年04月05日 | Weblog
もうすっかり忘れていたが
私にだって新入社員の頃があった。
社会人になりたてで
何が何やら全くわからない頃があった。


4月1日に入社式を終えるとバスに乗って
2箇所の研修所に新入社員は分かれていく。
それから3ヶ月の研修期間を研修所で過ごすのだ。

今から考えるとよく耐えたと思う。
だってつまんなかったし。


研修が始まって1ヶ月くらいたった頃だった。
朝礼でトレーナー
(各クラスの担任のような人がいてそれをトレーナーと呼んでいた)
がおもむろにこんなことを言い出した。

「今朝は研修所から駅までボランティア活動として掃除をしていただきます」

ざわざわと室内がどよめくが特に大きな声もなくすぐに静まる。
ま、社会人だしな。

「何か質問はありますか?」

トレーナーの声にこたえ、私は挙手をして発言を許してもらった。

「今、トレーナーはボランティアとおっしゃいましたが
 私はボランティアというのは自主的に行うものであると解釈しています。
 もしボランティアであるというのであれば私は掃除には参加しません。
 業務命令ということであれば勿論、掃除に参加します。
 いかがですか?」

私は組織に君臨するのは好きだが、
(本当か?最近そんな自信ないな)
組織内で無意味な活動をするのが大嫌いなのだ。
(なんだかつながってないけどまぁいいや)

大体私の体をさかさまにして振ったところで
ボランティア精神のかけらも出てきやしないのだ。
さらに、その言葉をあいまいにして使われるのはもっと嫌なのだ。

結局組織としての活動であることを認めさせ、
私は掃除に参加した。


しかし、同じようなことは度々研修中に起こり、
私はその都度、まっとうで素敵な発言をしていたわけだが
その結果、縁もゆかりもない広島に行くことになったわけである。

ちなみにボランティア活動の際、違うクラスで同じ発言をしていた
私の親友(その時点で12年の付き合い。現在24年目の付き合い)は
長崎に赴任することになった。


そのほかにも
「よしむらくんは笑顔が足りない」
などと、一文の得にもならないような言われたり
「まわりに変な影響を及ぼさないで」
などの沢山のお言葉を研修期間中に頂戴した。


フレッシュじゃなかったのですね、俺…