中国のことが書いてあるが、同時にこの国(日本)のことが書いてある。読み始めて知らぬことが沢山ある事を再認識した。特に中国で帝国陸軍がやったことの深刻さをきちんと自覚していない自分を知った。中国はその酷い行為の全てを極東軍事裁判による結論を基礎として、付き合いを再構築する姿勢であることも成程良くわかった。そして、この国にはこのようなことをきちんと考えられるリーダーがほとんどいないことも絶望的な感覚になる位の本当のことのようだ。最後の方には空気のことも出てくる。
南京大虐殺は無かったとこだわる人の気持ちもあるだろうが、その頃帝国陸軍は思っても居なかった中国全土への展開へと暴走し、かの国の方々を苦しめている。そのことを我々はきちんと学ぶ機会もなかった。なぜ先の大戦にはまり込んだのかを長年の疑問として類書を読んできたが、対米のことが殆どでこの分野については初めての知識を極めて濃縮した形で読むことができた。
世界の中の日本と言う国がいかに変な国であるのか、薄々感じていたことでもある。それは中国も相当に変である。しかしかの国は世界で初めて大国になり、数千年の歴史を経てきた、他に類のない集合体であり、せいぜい中世以降に統一されて出来上がった西洋的国家の概念から超越しているという認識である。最初に中国があり後からやって来たあなたたちとは違うのよと言うことなのだ。
現在の共産党一党独裁と資本主義の組み合わせが異様に見えるのも、この本を読んでゆくうちになんとなくそうなのかという気になった。毛沢東の紅衛兵による伝統の破壊とトショウヘイの改革開放による資本主義(社会主義市場経済)の導入は奇妙に見えるが実は非常に効率的な経済システムでもあるようだ。二つのエポックが伝統的な儒教の縛りを解き放ち、国の在り方を変えた。
民主党政権の無様も指弾されているし、安倍の対中外交もある意味で的を得ていないし、リスキーだとみている。周恩来と田中による相互認識の所まで立ち戻るのがやはり相互に正しいことの様に見える。
3人による鼎談は、実に深い。タイトルがアイキャッチのために少々俗っぽいが、このうちの二人による「おどろきのキリスト教」を読んだものとしては、期待以上の内容だと言いたい。
380頁の大著である。読むのに時間がかかった。それでも読みだすと止まらない新鮮な驚きと発見がある。米中二台大国と伍しながら日本が生きてゆくには、というくだりは切実である。なかなか日本の外交ではできそうもない自立が必須だ。
と、まあ、ザックリと感想を書いたが、この本は是非読んでもらいたいと思う。中国についての色々な見方がより具体的に見えてくるはずだ。そして、日本と言うものも再認識すべき弱点を抱えていることが情けない。
写真:なでしこJapan の試合を見ていたら、ちょっとさむいのか人の足に絡んできた。