御旅所(おたびしょ)とは、神社の祭礼において神(一般には神体神体を乗せた神輿)が巡幸の途中で休憩または宿泊する場所です。
御旅所に神輿が着くと御旅所祭が執り行われます。
もともとの現在の天満神社の場所が御旅所でした。
寛平5年(893)現在の場所に「池大神」を遷し、それにともない御旅所を別の場所に遷しましたが、その後現在の場所(六分一字船引)にお旅所を定めました。
写真(写真上)は、天満神社の御旅所地蔵堂です。
神仏混淆(しんぶつこんこう)
この地蔵堂には、稲美町の有形文化財である地蔵菩薩立像(写真下)が祀られています。
基礎部には「延文元年(北朝1356)」の年号があり、現時点で町内最古の石造物です。
神社の御旅所に地蔵像とは不思議な感じがしませんか。
このことについて『知っておきたい日本の神様(武藤誠著)』を読んでおきましょう。
・・・・6世紀のなかば、仏教が伝わった。そこには有益な知識や技術が含まれていた。
平安時代のはじめになると、神社側では「このままでは、自分たちは時代おくれになるぞ」と言う声がひろまった。
そのため、神社を支配する豪族や武士が、僧侶をやとって神前で仏事を行った。
また、仏教がわも、庶民に慕われている神道と結びつくことによって布教を有利に進めることができた。
中世以降、本地垂迹説(ほんちすいじゃくせつ)によって、「日本の主だった神様は、仏が仮の姿で現れたものだ」とされた・・・(以上、『知っておきたい日本の神様』より)
このように、日本では仏教と神道が争うことなく融合していました。
しかし、明治政府は、仏教と神道の分離を命じました。
明治以前、神と仏は融合(神仏混淆)していました。御旅所と天満神社もその代表的な例です。
*『稲美町史』・『元気まち ふるさと いなみ』(稲美町商工会)参照