スタバ 男たちの６秒間

　おいら、よくスタバに行きます。もちろん、タンブラー持参。
　行きつけのスタバに感じの良い店員の兄さんがいるんですよ。
　挨拶といい、接待態度といい完璧。
　面倒な注文をしても、ニコニコと応対してくれる。
　だが、この兄ちゃんちょっとカマっぽい

　いや、もちろんカマっぽくてもなんら問題ない。別に、マッチョな兄ちゃんに注文をとってもらいたいわけでもない。
　だけど、すごく丁寧でな彼は、おつりを渡すときに、ギュっと両手で、おいらの手を包んでくれる。

　これは、正直、キツイ.....。

　彼の秘儀・おてて包みは強烈。
　暖かい彼の温もりの感触は、３時間は消えることはない。
　下手をしたら、その後数日間、お腹を壊すことになる。

　彼には申し訳ないが、彼からおつりをもらうことだけは、なんとしても避けたい。

　そこで、おいらはそのスタバに向かう際、必要以上に慎重に事を運んでいる。
　行く前に小銭の額を確認することは、もちろん。ほぼ全てのメニューの金額は暗記している。



　行きつけのスタバに近づく。入口まで、３メートル。約６秒で入口まで到達する。
　ガラス越しにカウンターの店員を確認する。
　そして、例の彼の姿を見つける。

　財布の小銭は、500円玉１枚、10円玉１枚。そう多くはない。
　入口まで、あと２歩。
　オーダーを考える。
　ラテ・ショートサイズと何か１品、フードメニューを頼みたいところだ。
　ここで計算を間違えば、おてて包みの洗礼を浴びてしまう...

　ラテのショートサイズは￥３１０だが、タンブラー持参なので20円引きで、￥２９０。
　おつりをもらわない為には、￥２１０か￥２２０のフードメニューが欲しい。
　だめだ、そんなメニューはないぞ...。

　入口まで、あと１歩。もう自動ドアは開き始めている。
　諦めて、近くのタリーズに行くならば、今しかない！

　閃いた！　タンブラーを隠せばいい！！
　ラテのショートサイズに、シュガードーナツ。これを、マイ・タンブラーを使わずに注文すれば計510円！（タンブラーを持参すると、本来は20円引きで、490円）
　２０円は惜しいが、この際やむ終えない...。

　そして、俺は、スタバの扉をくぐっていく。



　スタバに入るまでの６秒間、俺は、彼に男同士の戦いを挑んでいる。