健康楽園。

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ツ、イ、ラ、ク。

2006-03-19 | 読んでみた。finding.
ツ、イ、ラ、ク

角川書店

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姫野カオルコさんの小説は文庫本の短編を読んだだけでした。齋藤綾子さん風の乗りが抜きん出ている作家さんかと思い込んでいました。
だけど、この物語は全く違う印象でした。辛酸を舐めて苦労し、成熟した深い考えを持って生きていくことがどういう結果を得ていくんだろうということを示し、見せてくれる。
主人公・森本準子は比い稀なる強さで生き抜いていく。一方、自分の思いさえ表現できない未成熟な友人・愛には、厳しい断定が下されてしまう・「神がかりに自己肯定するブスほど怖ろしいものはない。(そなたは、けなげに努力している。美人ではないが可愛い女であるぞよ!)という許しのロザリオを儀式は愛に与えた。神がかり的なブスは美女を排斥するのに全身全霊をかたむける。」242ページ。ブスを評するのも村上龍さんのように比喩しない、直球で判じてしまう。
中学生ライフ、学園には、憧れと、希望だけに満ちた生徒ばかりでないと・「現実の少女は煩雑に濡れた閨房にいることを女子である当事者は熟知しているのだから・・・。」168ページ。主人公準子と、国語教師は、このキッカケでツイラクしていくのだ・「はめてやろうか」・アンクルレットの鎖の小さな鉤を小さな穴にはめるために・206ページ。
愛し合った2人が、お互い相手を身体をはって守るっていうことがどういうことか知らされる。
主人公を見守る、魅力的は小山内先生も出現・「時間のルールを無視した色香である。内面の美という呪文を心ある人間ならば嫌悪すべきだ。広告代理店が女性消費者に向けたおためごかしだ。牡にとって自分はおばあちゃんであることを熟知して、かつ、牝(メス)であることを放棄していないからである。だから浅ましさも焦りも無い。色気でなく色香は年齢には関係ない。」223ページ。「苛められそうな男は、もっと正確に言うならば苛めてほしそうな男は、年端もゆかぬ者から良人より年上のものまですべてを食ってきた。死の予感は39年前から彼女の傍らにあり、だから彼女は食えるものは食ってきた。爛れた情事は彼女の優雅を損なうことなく、むしろ助長した。」225ページ。別れから20年。この強い味方小山内先生の葬儀から2人は再会を果たしていくのだが・・・。
そこは、ギリギリのところに立って、生き抜いた人生だけが、いかに豊かな実りをもたらすかを予感させるフィナーレになってる。
コメント (2)
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