健康楽園。

健康に関する情報・提案を主にする。

漱石の時代。

2006-03-14 | 読んでみた。finding.
坊ちゃんの時代―凛冽たり近代なお生彩あり明治人

双葉社

このアイテムの詳細を見る
小学校時代一時期漫画家になろうと思ったことがありました。絵が下手ですし、まったく無理だというこが判り断念しましたが、憧れは強かったです。漫画家って本当に凄い人たちです。ストーリーと絵と両方抜きん出ていないと勝負になりません。比い稀なる才能と努力と勉強が必要だと思います。
この坊ちゃんの時代・アジアに造詣の深い関川夏央さんと、漫画家谷口ジローさんとの共作で全五巻の長編です。
漫画ですと、小説よりも、明治という時代の、西洋文化の大量流入、西洋列強に追いつき追い越せという雰囲気というか、その時の空気・気といったものが直に感じられるような気がします。
まさにこの作品も、西洋文明に憧れ、取り入れても完全に同化できない宿命・焦りの中で懸命に生きていた人たちが等身大で描かれています。時代が主人公かも知れません!!
ロンドンに留学して数々の名作と生み出した漱石が、不機嫌で、酔っ払いで、胃弱で伊豆で喀血事件を起こしてしまうところまで出てきます。そして最後にも漱石が表われ、挙国一致体制で上昇気運の強かった時代の流れに翻弄される主人公が次々と登場してきます。
ドイツに留学したエリート森鴎外はドイツに恋人を残したまま帰国します。恋人は日本まで追いかけてきて結婚を迫りますが、鴎外は踏み切れません。恋人の視点で、日本の古い因習・決断力の不足を指摘され興味深いです。
石川啄木もとんでもない性格者として書かれており、作品とのギャップに驚きます。
幸徳秋水も登場し、軍国主義に走る時代背景も明らかに感じさせてくれます。
作家と作画家が違うという難しいことの多い共同作品ですが、見事成功していると思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする