私は雑誌『新潮』で上下巻とも読んでおり、その深淵な内容と、これぞ沢木耕太郎の文体、文章と思わせられ、感嘆したものだった。
沢木耕太郎が25年を掛けて、準備し、西川一三に直にインタビューもし、執筆したという。
旅人沢木耕太郎が目指した、まさに旅人としての真髄を生きた、第二次大戦末期、敵国の中国大陸の奥深くまで「密偵」として潜入した若者・西川一三の物語である。
動機は、密偵という役割を担っていたが、西側一三は、戦後も旅を続けた。
旅人は、どうしても知らない世界、未知なる世界への思いを断ち切れないのである。
巷の片隅で、私は、沢木の文章に、西川一三の生き様に、真に深く頷きながら読んだ。
旅人の経典ともいえる一冊だと思う。
<蛇足>
沢木耕太郎の『深夜特急』を読んで、旅人になった人の文章を読むことがある。
『深夜特急』で、旅に魅入られた人が、いかに多いことか。
私も、旅に魅入られ、未知の世界に焦がれる心裡は、とてもよく分かる。
いくら年を重ねても、私は旅に駆られて、分厚い時刻表を持って旅立った18歳、19歳の時のままだ。
でも、実は、
私は、沢木の『テロルの決算』を、読んで、こういう視点と文章を書けるライターになりたいと思った。
思ったまま、そのまんまだけど、今も。
そう思ったことが、いろんなことで心が折れそうになった時、少し、私の励ましになっている。
後藤竜二が、どんな立派な評論でも読まれなければ意味がない。物語のような評論を書けと私に言った。
その物語のような評論(評伝)が沢木の『テロルの決算』だった。
沢木耕太郎に、憧れたのだった。
憧れたまま、そのまんま、だけど、今も。
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