このアンテナショップは、金沢の観光スポットとして有名な東茶屋街の一角にあります。季節はまさに冬。北陸の古都・金沢らしい（？）寒い日であるにもかかわらず、たくさんの観光客が訪れていました。 
さて、目的の喜八工房・アンテナショップですが、古い町屋を利用した落ち着いたたたずまいのお店です。なんか、懐かしい感じですね。 
中に入ると、あらかじめ電話で連絡してあったこともあり、酢谷さんが笑顔で迎えてくれました。
それでは、さっそくインタビュー開始です。
平野：アンテナショップを始められて、一年余りになりますが、どういったお客様が来られますか？ 酢谷：観光に来られて、珍しさから立ち寄られる方が多いですね。その方たちに山中漆器のよさを知っていただこうと、自分なりに一生懸命お話させていたたいています。 平野：お店を訪れる方の中で、どんな方が商品（山中漆器）を買い求めていかれるですか？ 酢谷：初めて漆器を買われる方よりも、今まで使っていた方、そしてその良さをわかっておられる方が、「もう一つ」といって買われる場合が多いと思いますね。 平野：このアンテナショップをやっていて、良かったことはなんですか？ 酢谷：「お客様がそんなふうに思っていたのか」と気づかされること、そして反対に、「自分が思っていたことが伝わっていない」ことに気づくことですね。
こうしてお話を伺っている間にも、次々にお客様が入ってこられ、そのたびにインタビューは中断。こういうお店に立ち寄られる方は、中高年の夫婦連れがほとんどかなと勝手に思っていたのですが、見ている限りにおいては、若い人の来店もかなり多いのに驚きました。男女のカップルや女性二人連れ、あるいは一人旅らしい女性の方など、本当にいろんなお客様が立ち寄られているのです。酢谷さんはそうしたお客様の一人一人に優しいまなざしを向け、また丁寧に山中漆器の良さについて説明しておられました。
最近、いろんなところで「こだわり」や「情報発信」の重要さが提言されています。でも、自分勝手な「こだわり」や一方的な「情報発信」も目に付くようになりました。この点、酢谷さんのアンテナショップでは、酢谷さんが言われるように、「お客様の思いを受け止め、また自分の思いを伝える」自然なコミュニケーションが行われています。酢谷さんご自身は、ブログやホームページなどの「デジタル」ツールでの情報発信を積極的になさっている方なのですが、一方では山中温泉の本店や金沢でのアンテナショップにおいて、お客様との会話という「アナログ」ツールを大切にされているのです。この「デジタル」と「アナログ」の２つのツールを使いこなすことで、お客様とのコミュニケーションがより深いものになるのですね。
お店の中には、素敵な塗り物がたくさん・・・どのお客さんも熱心に見入っていました。
そんな酢谷さんですが、ここ数年というもの、ご自身で「人生最大の逆境」といわれるくらい、大変な苦境を経験されたそうです。けれども、酢谷さんによれば、それが逆に自分を奮い立たせてくれるきっかけになったとのこと。「何事もなく順調に行っていたら、近年の環境の悪化の中で、じわじわとダメになっていたかも・・・」と静かに語られる酢谷さんからは、内に秘めた熱い決意が感じられました。
こうしてあっという間に時間は過ぎ、最後に酢谷さんに固い握手をしていただいてインタビューを終えました。酢谷さんの熱い思いが伝わってきて、私も元気をいただくことのできた一日でした。
【参考】喜八工房のＨＰ： http://www.kihachi-web.com/
喜八ブログ（酢谷さんのブログ）： http://www.kihachi-web.com/kihachi/
喜八工房（本店）： 〒922-0111 石川県加賀市山中温泉塚谷町イ３２３
TEL 0761-78-0048 FAX 0761-78-5092
