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4画面思考による上杉鷹山の改革分析

2009年04月02日 | 歴史に学ぶ
 

先日のブログで、江戸時代中期の米沢藩主・上杉鷹山の藩政再建について書きました。米沢藩上杉家といえば、初代藩主は上杉景勝。現在はNHKの大河ドラマ『天地人』の重要な登場人物の一人として、人気俳優の北村一輝さんが好演していますね。

さて上杉鷹山はこの米沢藩の9代藩主です。といっても嫡流ではなく、10歳で遠く九州にあった小藩(高鍋藩)からきた養子でした。上杉謙信、そして景勝以来の名門上杉家とはいえ、度重なる不幸から財政が破綻し、幕府に藩政を返上(つまり自主廃業)することまで考えていたという米沢藩の藩主となった一人の青年が、以後50年以上にわたり生涯のすべてをかけて藩政再建に取り組み、最後には膨大な負債をすべて返済したうえに、財政黒字を生む体質にまで持って行ったのですから驚きです。それも、家臣や領民の圧倒的な支持を得ての話です。

もちろん、米沢藩だけではなく、全国各地で藩政改革が行われていました。また江戸幕府自体でも、有名な8代将軍吉宗の「享保の改革」、松平定信の「寛政の改革」、そして水野忠邦の「天保の改革」など、財政再建のための試みは、何度も行われていたのです。けれども、それらの改革のほとんどが失敗に終わりました。薩摩藩や長州藩などいくつかの藩では改革に成功ましたが、それらの藩が、幕末に「雄藩」と呼ばれ、明治維新の主役になっていくのです。

さて、私は歴史学と教育学、そして経営学の融合を目指しており、この上杉鷹山の経営革新事例についても、いつか本格的に分析してみたいと思っていました。けれども目の前の仕事に追われて、延ばし延ばしに・・・。

ところが、いつも懇意にしていただいている早稲田大学大学院博士課程の村田康一さんに、先日ブログで紹介した本をお貸ししたところ、あっという間に経営学的な視点で重要ポイントの抽出作業を仕上げてしまわれたのです。

さらに村田さんや私の恩師でもある北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の近藤修司教授が、すぐにこの村田さんの分析に対するコメントや4画面への変換までもして下さったのです。これには本当に驚きました。「熱い思い」をもって仕事をされている方々にとっては、「時間がないから」とか「忙しいから」という自分に対する言い訳はないのです。私も大いに参考になりました。

さて、この上杉鷹山の改革実践ですが、藩主は経営者(社長あるいは地方自治体の首長)に相当します。また重臣たちは創業以来の古参社員や取締役クラス。藩士(下級武士)は企業の第一線を担っているはずの社員たち。そして百姓たちは住民、消費者、顧客といったところでしょうか。

近藤先生は経営革新を進めていくうえで、「4画面思考」の重要性を提唱されています。「4画面思考」とはどういうものでしょうか。JAISTの「石川伝統工芸イノベータ養成ユニット」のHP(http://www.jaist.ac.jp/dento/yongamenetc.htm)からその説明を引用します。

4画面思考法は経済合理主義と人間主義の二軸思考により、未来を創り出す改革実践法で、近藤教授の長年の改革実践活動の中から生まれたものです。4画面思考は自分ごとで改革テーマを宣言して、「現状の姿」「ありたい姿」「なりたい姿」「実践する姿」を鮮明に表現する事で、未来を創り出すエネルギーを引き出すことができます。「現状の姿」は現実を直視して、自分達の強みや持ち味そして機会を発見します。「ありたい姿」は理想とする社会貢献を明示し、コミットメントします。さらに、「なりたい姿」は目標とオンリーワン戦略を構築し、それを実践する姿で、日常の業務の中で「見える化」します。改革人材や組織は、改革人材の思いでもあるこの4つの姿の暗黙知を「見える化」することにより、改革知識が共有化できて、改革実践力が倍増し成果を生み出すことが出来るのです。

この「4画面思考法」をつかって、上杉鷹山の改革を企業の経営革新と考えて分析してみます。

まずは企業の「ありたい姿」として、上杉鷹山は住民、消費者、顧客の幸福と社員の幸福を第一に考えています。まさに現代の企業の多くが掲げている経営理念そのものです。また、「現状の姿」においては、あくまでも現場を基軸に、SWOT分析に近い手法で現状を把握していこうとしています。さらに「なりたい姿」として、人材育成のための具体的な手段(藩校)や、コミュニケーションの重視を掲げ、モチベーションの向上を図っています。そして「実践する姿」においては、新田開発や特産品の開発などをあげ、日常業務、第一線の社員を中心にした商品開発や販路開拓を行っています。

江戸時代中期の藩政改革の成功事例であっても、近藤先生の提唱されている4画面に当てはめてみると、その成功要因が実にはっきりと見えてくるのです。あらためて4画面分析は、今後も様々な歴史的な事例の分析に応用できると確信しました。

今回は近藤先生と村田さんのおかげで、私の今後の研究の、一つのスタイルが見えてきたような思いです。本当にありがとうございました。

 


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2 コメント

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Unknown (山谷)
2009-04-03 20:27:19
こんばんは
先日のMOTではご苦労様でした。
今年のMOT参加者の皆さんは熱い方が多くとても楽しく学ばせていただいてます。

勝手ながらブログへのリンク付けさせて頂きました。
よろしくお願いします (平野)
2009-04-05 21:56:34
先日はどうもありがとうございました。
山谷さんの和装のいでたちに、
「この人はただ者ではない!」と直感しました。(笑)
私も山中の出身で、山谷さんとは年代も近い(昭和37年生)ようです。私も山谷さんのブログにリンクを張らせていただきました。今後ともどうぞよろしくお付き合いくださいますよう、お願いします。

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