WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

カフェ・モンマルトルからの眺め

2006年12月25日 | 今日の一枚(M-N)

●今日の一枚 105●

Trio Montmartre    

Cafe' En Plein Air

Watercolors0003_2  数日前から、文庫になったドゥルーズ=ガタリの『アンチ・オイディプス』を読んでいるのだが、どうも頭に入らない。若い頃に熱中して読んだ本なのだが、脳が硬化してしまったのだろうか。それとも3日前の忘年会での深酒がたたってまだ身体の調子が悪いせいだろうか。分裂分析をうたうこの本には、二日酔いこそがふさわしいなどとわかったようなことを思うのだが、脳が活動しない。あきらめて、村上春樹訳のスコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャッツビー』に変えたのだが、やはり脳が働かない。今日はもうだめだ、音楽にしようと考え、CDを取り出した。不思議だ。少しずつ脳が動き始めた。

 ニルス・ランードーキー率いるトリオ・モンマルトルの2000年録音盤『カフェ・モンマルトルからの眺め』だ。フレンチ名曲集である。恥ずかしいが、私はフランスものが好きだ。別にフランスかぶれというわけではないが、フランスの音楽のもつ哀愁の響きにグッときてしまうのだ。フランスものと聞いただけで、心の予防線が緩み、気を赦してしまう傾向があるのには困ってしまう。

 ニルス・ランドーキーの写真をみると、どうもキザな野郎だという思いがしてならない。いかにも「ピアノの貴公子」然とした風貌である。もちろん偏見である。ひがみかもしれない。アルバムは全体として、美しく、メロディアスなサウンドだ。けれど、それだけで終わらないところが、このグループのすごいところだ。時にロマンティックにそして時にダイナミックにサウンドは流れる。ベースは腹に染み渡るような力強い音をだし、ドラムもなかなかのやり手だ。そしてニルスのピアノはどこまでも端正でリリカルな響きを忘れない。どんな時でも真面目に曲の美しさを追求する男なのだ。その真面目さが好きだ。真面目さという資質は、あるいはジャズ演奏家にはプラスのものではないのかも知れないが、私はニルスの真面目さにどこかで共感を覚えている。そのキザにみえる風貌にもかかわらずである。あるいは、1963年生まれという、私と同世代(私の1つ下だ)ゆえの共感かもしれないし、デンマーク人で歌手だった母親とベトナム人の医師である父の間に生まれたというジャズ演奏家としては異色の生い立ちゆえかもしれない。

 この美しいサウンドは、やっと二日酔いの後遺症をだっした身体には、やさしく響いてくれる。

 


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1 コメント

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平泉様 (kenyama)
2006-12-29 12:28:26
平泉様
こんにちは。初めましてkenyamaと申します。
無愛想な私のブログにリンクを張っていただいき恐縮です。
ついつい、二日酔いと文庫判『アンチ・オイディプス』の記事をみてコメントさせていただきました。
そうですね。どちらかと言えば、二日酔いで読んでも、入ってくるのは『千のプラトー』の方でしょうか。『AO』は、そのまま脳のぐちゃぐちゃの中を流れていってしまいそうで、『MP』の方が、引っ掛かるというか、分かりやすいというか、二日酔いの朝にはぴったりかと。
今後ともよろしくお願いいたします。
kenyama
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