WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

青空にまっすぐに伸びるサウンド

2012年09月22日 | 今日の一枚(W-X)

☆今日の一枚 332☆

Wayne Shorter

Native Dancer

Scan10024

 なぜか、今週はずっと通勤のクルマの中でこのアルバムを聴いた。CD-Rに焼いたクルマ用のものがたまたまあったのだ。長かった今年の夏。その夏もようやく終わりそうな今日このころであるが、この夏を追想しつつ聴くのになかなかマッチした作品ではないか。水平線まで広がる海とずっと向こうまで続く砂浜、青い空と白い雲の情景がそこに浮かぶようだ。

 ウェイン・ショーターの1974年録音作品、『ネイティブ・ダンサー』。ヒット作である。ハービー・ハンコックやミルトン・ナシメントを迎えて作り出されたポップで気持ちの良いサウンドもさることながら、やはりこのアルバムでの聴きものはウェイン・ショーターのソプラノ・サックスの音だ。

 優しい音だ。感傷やノスタルジアを感じさせるような内省的な音ではない。音は内側ではなく、外に向かっている。ソプラノ・サックスの響きが、青いく広い空に向かってどこまでもどこまでもまっすぐに伸びていくようだ。ただただすがすがしく、気持ちの良い、さわやかな音だ。僕は思うのだけれど、サックス奏者あまたあれど、ウェイン・ショーターはその音の個性において、完全に傑出している。どんな初心者が聴いても、その違いが明確にわかるほどにだ。このアルバムは、その音の個性が最良の形で表現された作品のひとつといえようか。

 今日は秋分の日、高校生の長男はバスケットボールの練習だが、私はこれから、私の実家と妻の実家の墓参りに行かねばならない。今日も、クルマでこのアルバムを聴いていこうか。


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