WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

長い夜ともお別れか

2021年10月01日 | 今日の一枚(I-J)
◎今日の一枚 548◎
Joe Pass
Ultimate Best
 入院中である。薬疹に悩まされて苦戦したが、原因が判明し、ここ数日体調はいい。薬疹のため、顔の薄皮が剥けてごわごわして突っ張る感じだが、それでも少し前までの顔全体が焼けただれるような熱さから比べればかなりいい。
 薬疹の原因だった眠剤を止めたため、夜は相変わらず眠れない。しかし、眠剤を服用していてもほとんど眠れていなかったことを考えると、寝始め2時間程度でも眠れている現状の方がいいともいえる。夜は長いが、kindleのおかげて退屈しなくなった。当初、netflixでも見て過ごそうかと考え、無制限のポケットwifiも準備したが、ほとんど見なかった。kindleではいろいろ読んだ。日本史関係はもちろん、小説、神道や神社、キリスト教神学、社会学、思想と乱読だった。昨日からはずっと気になっていたジェリー・ケーガン『「死」とはなにか』を読んでいる。すぐに解約すれば1か月間無料で使えるらしいkindle unlimitedにも登録して使っている。とはいっても、一定の散財はしたが。
 退院の見通しが立った。予定通りの日程ですみそうだ。家に帰れるのはすごくうれしいが、kindleとの豊饒な長い夜もこれで終わりかと思うと、少し寂しい気もする。

 今日の一枚は、ジョー・パスの2019年リリース盤『アルティメッド・ベスト』である。巨匠ジョー・パス生誕90周年を記念した2枚組ベスト盤のようだ。入院中ということで、相変わらずapple musicで聴いている。ジャズギターの巨匠と呼ばれ、すごいテクニックを誇りながら、ジョー・パスの音楽には聴き手を拒絶するようなところが全くない。いつも聴き手に寄り添う音楽だ。私が知ったのは、エラ・フィッツラルドとの一連のデュオ作品によってだった。エラを聴こうと思って買ったアルバムだったが、ジョー・パスの優しく誠実さが漂うギターの響きのとりこになった。
 深夜の静まり返った病室で、kindleを読みながら聴くには最適である。闇の中から立ち上がってくるようなギターの響きに胸を打たれる。