WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ミラノ・パリ・ニューヨーク

2006年12月10日 | 今日の一枚(Q-R)

●今日の一枚 97●

Sir Roland Hanna   

Milano , Paris , New York

Watercolors0003  エロチックなジャケット写真だ。ジャケット写真は好きだが、ローランド・ハナその人やこの作品の内容とどう関係があるのかは、まったく不明である。この女性は、なぜスカートをめくっているのだろうか。パンストを直しているのだろうか、それとも……。などと変なことを考えてしまいそうだ。まあいい、私は基本的にエッチなことは好きなのだ。

   Sir Roland Hanna (p) ,

   George Mraz(b) ,

   Lewis Nash(ds) ,

 ローランド・ハナの2002年録音盤だ。数年前発売と同時に、雑誌広告でこのジャケットを見てすぐに購入した。ライナーノーツによると、ローランド・ハナは、ニューヨークのクイーンズ大学のジャズ科で主任教授をつとめており、クラシック界の一流ピアニストにも匹敵するその演奏技術ゆえに、「ピアノの魔術師」の異名をとる男だ。

 さて、内容だが、むさすが「ピアノの魔術師」、うまい。一音一音がしっかりしおり、展開もなかなか面白い。ジャケットとは相反して、生真面目で、さわやかな演奏であり、エッチで隠微な雰囲気など微塵もない。ピアノは清く正しく美しく、そして滑らかで優しい。

 けれどもわたしの耳は、大好きなジョージ・ムラーツのベースに釘付けだ。やわらかいが、グーんと落ちるような、太くて深い音だ。決してでしゃばることはないが、音自体がしっかりとした自己主張をしている。ムラーツは職人気質だ。いわゆる「呪われた部分」の音楽家ではないかも知れないが、職人にしか到達できない深い境地を知っているような気がする。以前、何かの記事で書いたが、ジャズを聴き始めた頃、自分の気に入ったアルバムの多くがGeorge Mraz(b) であることを知り、大きな驚きをもったものだ。

 ムラーツは、1944年、チェコスロバキア生まれのベーシストだ。