WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

パリ北駅着、印象

2006年12月08日 | 今日の一枚(K-L)

●今日の一枚 95●

Kenny Drew     Impressions

Watercolors0001_1 ちょっと、いいんじゃないの、っていうか、かなりいいんじゃないの(若者風にいってみました)。

 ケニー・ドリューの『インプレッションズ』、日本タイトル『パリ北駅着、印象』として発売された1988年録音盤だ。1980年代のケニー・ドリューは、お洒落な水彩画風ジャケット作品を量産していた。タイトルも感傷的なものが多く、女性を中心に結構人気があった。実際、ちょっとジャズをかじって知っているスノビッシュな男の子にとっては、女の子を口説く有効なツールの一つだったかもしれない(僕もそのひとりだ)。当然のことながら、この一連のドリュー作品は、筋金入りの(と自分でおもっている)コアなジャズファンには不評であり、軟弱な作品というイメージがまとわりついてしまった。

 20年近くたった今、聴き返してみると、これが意外と新鮮なサウンドである。ロマンチックだが、感情に流されない理知的な音である。音の隙間を有効に使った叙情的でデリケートな演奏があるかと思えば、しっかりとスウィングするジャージーな曲もある。熱い演奏もある。この時期のドリュー作品の中で、このアルバムが一番好きだ。

 われわれは、見栄や偏見というドクサで物事を見てしまいがちだが、時間というろ過装置は、それらをきれいに洗い流してくれる。