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Transmeta、再建計画を発表

2005-01-28 00:25:36 | パソコン
Transmeta、再建計画を発表
「やり方を変えるべき時」とTransmetaのペリーCEO
 IT Media はじめ複数のメディアで業績の悪化が伝えられていたが、実際にライセンス事業の強化とプロセッサ事業の整理といったような再建計画が報じられ、驚きを持って見ている。

 Crusoe が発表されたのは、わたしがノートPC(PCG-C1XG)を購入してからすぐだった。次の SONY VAIO C1 には Crusoe が搭載され、ものすごくうらやましく感じたのを覚えている。
 しかし今、Transmeta はプロセッサ開発から手を引こうとしている。なぜだろう?

 Transmetaの方向性は正しかった、のは確かだ。正しかったからこそ、Intel も AMD も低消費電力の プロセッサを開発した。今、デスクトップ向けのプロセッサもどのようにして消費電力を減らすのかを考えている(これは、発熱の問題のためだが)。
 しかしなぜ、Transmeta は失敗してしまったのだろうか??

 1つには、コードモーフィングによる性能低下の問題がある。Crusoe が低消費電力である理由の1つがこれだ。Crusoe は 128bit VLIW の RISC プロセッサと聞いている。このプロセッサは x86 命令をそのままでは実行できないので、コードモーフィングにより x86 命令を動的に RISC の命令に翻訳しているのだ。かつ VLIW は並列に実行可能な複数の(かつ相互に依存しない)命令(128bit 版では4つらしい)を1つの命令として実行する技術だ。一般的にはソフトウェアのコンパイル時に1つの命令にまとめるはずなのだが、Crusoe ではこれを動的に実行時に実施している。
 一度変換した命令はメモリにキャッシングされるらしいが、それにも限りがある。変換作業には時間がかかるのは自明で、これにより Crusoe は消費電力は小さいが性能の低いプロセッサとして一般に認識されてしまった。
 何やら、初期の JavaVM の話に似ている。しかし Java はそれに取って代わる技術が無かったのに対し、Transmeta に対しては x86 のアーキテクチャで本家 Intel と AMD が立ちふさがった。
 一般ユーザの認識は恐ろしい。電池のもちに大差なければ、遅い Crusoe よりも速い PentiumM を使うに決まっている。そしてそれが PC メーカの Transmeta 離れにつながったのだろう。

 なお、遅い理由はコードモーフィング以外にもあるようだ。そもそも周波数も Intel 製に比べると低いし、バス周りもイマイチだったらしい。
 とは言うものの、誰もが数GHzものプロセッサを作れる、という訳ではないと思う。Intel のようなメーカが逆におかしいくらいだ。クロック周波数1GHzというとプロセッサ内部は1ns(1/1000000000秒)で動作する。どれくらい速いのかと言うと、光速が300000000m/sだから光が30cmしか進めないくらいの時間だ。よっぽどの半導体設計技術力がないとそんなことはできないのではないか。
 ようやくEfficeonでIntelのしっぽをつかみかけたところまで来たが、間に合わなかった。

 もう1つは、生産の問題だ。台湾のファウンダリである TSMC に生産を委託して失敗し数が出せず、それなりに勢いがあった初期の段階でつまづいた。これで PC メーカが採用を躊躇してしまいその後売れなくなった、というのも十分に考えられる。生産を富士通に移したことによっても、一度与えてしまった悪印象は払拭できなかった、ということだろう。

 これらの原因によりユーザにも PC メーカにもそっぽを向かれてしまっては、素晴らしい着眼点から生まれたプロセッサも実績を出すことができなかったということか。


 では、ライセンス事業はどうなのだろう。Transmeta の説明では、要はコストをかけずに収入が得られる、ということらしい。

 そううまくいくのだろうか?
 ライセンス事業で収入を得るためには、当然その技術が他に無いほど素晴らしいものでなければいけない。ライセンスを受けたメーカがそれがなくては製品を作れないか、もしくはそのメーカが競合他社に勝るために必須な技術でなくてはならない。
 今、NEC、富士通、ソニーが LongRun2 のライセンスを受けている。本当に低消費電力化に使える技術なのだろうか? NECは記者会見で、2005年の製品から LongRun2 を搭載した製品を出すと表明していた。最初にライセンスを受けた NEC がいつ製品を出せるのかそして成功するのか、それが LongRun2 が本当に使える低消費電力技術なのかを計る1つの指標になると思う。
 TSMCや富士通でEfficeonを作れるところを見ると製造上の特殊技術は使っていないようだが、だからと言って簡単に使いこなせる訳ではないだろう。他社にも使いこなせるような技術なのか、というのも使える技術かどうかを判断する基準になりそうだ。それと同時にNECの技術力も問われるだろう(先に富士通が製品を出してきたりなどしたら、大事だ)。
 NEC が成功すれば他社もライセンスを考えるだろうし、そうでなければ、Transmeta の時代は終わってしまう。

 Transmeta はすばらしい技術を持った会社だと思っていただけに、残念でならない。
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