『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 1323

　『はい！解りました』
　ギアスは、快く返事を返したまではよかった、ここでギアスは戸惑う。
　『松明に火をつけるにはどの方法で？』と一瞬迷う。
　黄鉄打ち火切りでやるか、パン工房から火をもらって来るかと考える。
　彼は予備に準備してある松明を素早く手に取る、パン工房に向けて走る。この集落において常に火のあるところはパン工房なのである。
　ギアスは、パン工房の火の守り役担当に持参した松明に火を点けてもらう、彼は火の点いた松明を手にして走る、松明が風を切る、火勢を増して燃えあがる、話し合いの場に着く。
　パリヌルスが話し合いの推移を考えて場に準備した松明は、場の適当な箇所に、ほどいい高さで地にたてられている。
　ギアスは、その配慮の準備に心が打たれた。
　ギアスはたいまつに火を移す、燃えあがる、場を明るく照らす。
　パリヌルスは、大きな木板を手にしている。四人の顔が松明のかがりの明るさに照らされて表情がつぶさに見てとれる。
　『お～、ギアス、ありがとう。これで一同の顔が晴れ晴れと見える。暗闇で話を交わす、話が見えないときがある』と声をかけてギアスをねぎらう。
　松明が燃える、あたりを明るく照らす、彼ら四人はその明るさに身を正す。
　パリヌルスが話し始める。
　『新艇に衝角構造体の取り付けの是非と可否が決まった。俺が考えている衝角構造体を取り付けた新艇、いわゆる新々艇の構想について述べる』
　一同と目を合わせる。
　『戦闘艇のことを思い浮かべてくれ。衝角構造体を散り付けたことより、艇の重さが少々増えはしたが艇の強度が強くなった。そして、その結果として想定した以上の走行安定性得た、と同時に海上において発生する諸状況に対応する強度も増したといっていい』
　オキテスが口を開いて言う。
　『おう、それは確かに言える。その通りだ！』
　『それはだな、艇体の重心をこれまでの船に比べて、下部に移ったことに起因している。設計の時点では全然考えてもいなかった。予想もしていない事であった。いい結果に働いた、これらのことを考えるに至って、新々艇の構想に到ったのである』
　オキテスが口を開く。
　『そうか、パリヌルスが考えた戦闘艇の衝角構造体構想を理解した』
　ドックスとギアスがうなずく、オキテスが話しを続ける。
　『俺がこの件について考えていることは、新艇を使用する日常の気軽さ、これを失いたくないと考えている。この状況を逸脱しない構造で衝角構造体の取り付けに大賛成だ。営業のスタンスに立脚しての考えも含んでいる』
　このオキテスの言葉にパリヌルスが答えた。