『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第15章  エピローグ  3

2008-07-24 07:51:05 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 アンドロマケは、心中、強く強く祈っていた。
 『アステアナクス。この子は、幼い乳飲み子だ。もしかして、もしかして、一命を助けてくれるのでは、、、、そうあって欲しい、お願いだから、、、。』
 立ちはだかった兵は、アンドロマケに告げた。
 『私が、これから言うことは、私の意志ではない。この子は、トロイの城壁の高みから、投げ落とされて、死ななければならない。耐えてください。』
 もう助けは何処にもなかった。彼女は、幼子アステアナクスを、その骨も砕けよとばかりに腕の中に強く強く抱きしめた。アンドロマケは、母として、この子にしてやれることは祈りだけであった。彼女は、命長らえることの身の守りにと、ひと振りの短剣をアステアナクスの身にしのばせた。
 兵は幼子アステアナクスを連れ去った。
 ヘクトルの息子アステアナクスに死を与えることで、トロイ戦争は終結した。
 アステアナクスを連れ去った兵の心の中には、優しさがあった。彼はできるだけ、この子が苦痛少なく、命が果てるように心くばりをして、投げ落とす地点を選んで城壁の上に立った。
 アステアナクスの、その小さな身体が宙に舞った。沈みゆく太陽が力をふりしぼって、生きる意志を起こせと、その小さな体躯を照らした。
 幼子は、城壁の下、雑草が密生している草地に落ちた。幼子の声はなかった。
 『死ぬな!死ぬな!死ぬな!生きろ!』 兵は、絶叫で彼を送った。


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