古代日本国成立の物語

自称「古代史勉強家」。趣味は各地の遺跡、神社、歴史博物館を訪ねること。学芸員資格保有。

息長氏の考察③

2019年03月31日 | 古代日本国成立の物語(第二部)
 息長氏の本拠地である琵琶湖東岸の湖北地方には多数の古墳がある。とくに姉川中流の南岸、横山丘陵の北端周辺に位置する長浜古墳群と天野川下流域、横山丘陵の南端周辺に位置する息長古墳群に集中している。
 長浜古墳群には長浜茶臼山古墳をはじめとする数十基の古墳がある。どれも詳しい調査が行われていないため推定の域を出ないようだが、築造時期としては最も早いもので4世紀後半とされるがその最盛期は5世紀と考えられている。丘陵の尾根に築かれた長浜茶臼山古墳は全長が92m、葺石のある二段築成の前方後円墳で築造時期は4世紀後半とも5世紀前葉とも言われる。丘陵の西側1キロほどのところにある丸岡塚古墳は前方部がすでに失われているが全長が130mに復元しうることが明らかになった湖北最大の前方後円墳で5世紀中頃の築造と推定される。また、丘陵東麓には第30代敏達天皇の皇后である息長広媛の陵墓として宮内庁が管理する村居田古墳がある。墳丘の多くが失われているために墳形や規模に諸説あるようだが、全長100mを超える前方後円墳で5世紀中葉から後半の築造と考えられている。さらに丘陵の西麓には応神天皇の皇子である稚野毛二派皇子(わかぬけふたまたのみこ)の墓とされる5世紀後半の垣籠古墳がある。全長が50数mで前方後円墳とされていたが、最近になって前方後方墳であることが確認されたという。
 このように長浜古墳群では少なくとも5世紀の100年間に数十mから100mを超える規模の前方後円墳あるいは前方後方墳が継続的に築造されていることがわかる。

 次に息長古墳群を見てみると、こちらは長浜古墳群が最盛期を終えたあとの6世紀に入ってから最盛期を迎える。丘陵南西端の北陸自動車道沿いに位置する後別当古墳は全長が50m余りの帆立貝型の前方後円墳で5世紀後半の築造とされている。その後別当古墳を真南に500mのところにある塚の越古墳は全長が40m余りの前方後円墳で、5世紀末から6世紀初頭の築造とされる。盗掘を受けており、副葬品として鏡1面、金銅製装身具の残片をはじめ、馬具、金環、ガラス製勾玉、管玉、丸玉、切子玉などが確認されている。続いて塚の越古墳の東、丘陵南端の山津照神社境内にある山津照神社古墳は全長63mの前方後円墳で6世紀中葉の築造とされる。明治時代の社殿移設に際する参道拡幅工事で横穴式石室が発見され、3面の鏡のほか、金銅製冠の破片、馬具、鉄刀・鉄剣の残欠、水晶製三輪玉など、塚の越古墳とよく似た副葬品が見つかった。被葬者は息長宿禰王との言い伝えがある。また、山津照神社由緒には「当地に在住の息長氏の崇敬殊に厚く、神功皇后は朝鮮に進出の時祈願され、帰還の際にも奉賽の祭儀をされて朝鮮国王所持の鉞(まさかり)を奉納されました。これは今もなお当社の貴重な宝物として保管してあります」とある。そして後別当古墳の北西、丘陵の南西端の縁にある人塚山古墳は全長58mの前方後円墳で6世紀後半の築造と考えられている。
 なお、塚の越古墳や山津照神社古墳の副葬品として出土した金銅製装身具や馬具などの存在はこの地域の首長が朝鮮半島と交流していたことを示すものと考えられている。また、これらは湖西地方の高島市にある6世紀前半の築造と考えられる前方後円墳である鴨稲荷山古墳の副葬品とも似ている。その副葬品とは、金銅製の広帯二山式冠と沓、金製耳飾り、捩じり環頭大刀・三葉文楕円形杏葉など大変豪華なものであった。

 以上の通り、息長古墳群では長浜古墳群が最盛期を終えたあとの5世紀後半から6世紀後半の100年間にわたり、数十m規模の前方後円墳が継続的に築かれている。のちに近江国坂田郡と呼ばれるようになるこの湖北の地では、5世紀において姉川流域を中心に栄えて長浜古墳群を築いた勢力と、6世紀に入って天野川流域で栄えて息長古墳群を築いた勢力が認められる。これは長浜の勢力が息長に移動あるいは分岐したのか、息長を拠点にしていた勢力が長浜の勢力より優位に立ったのか、いずれであろうか。仮にいずれもが息長氏であるとすると、5世紀に栄えた姉川流域の古墳群を築いたのはまさに神功皇后からすぐあとの応神天皇の時代の息長氏であり、6世紀の息長古墳群は継体天皇時代の息長氏によって築かれたと考えることができるだろう。このあたりは継体天皇を考える機会に掘り下げてみたい。


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大橋信弥
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歴史
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