古代日本国成立の物語

自称「古代史勉強家」。趣味は実地踏査と称して各地の遺跡、神社、歴史博物館を訪ねること。学芸員資格の取得を目指して勉強中。

博物館教育の実際 ~大阪府立近つ飛鳥博物館における中高生向け学習プログラムの模索~

2018年09月14日 | 学芸員資格・博物館
 博物館教育論の第二回課題レポートです。課題内容は以下の通りです。

 タイトルは「博物館教育の実際」。博物館教育の実践事例を取り上げ、その特徴と課題を検討して下さい。各自が内容に応じたサブタイトルを設定して下さい(必須)。大学での学習にふさわしいレポート構成と形式として、①それぞれの意味段落に見出しのついた、「はじめ・なか・おわり」あるいは「起承転結」の構成が明確なレポートを作成するよう心がけて下さい。②出典(引用・参考文献)を明記して下さい。③文字数は800字以上。

 このレポートを書くにあたっては本当に数多くの博物館の取り組みを調べてみました。最初は東京23区のすべての区立の歴史博物館の取り組みを調べて共通する特徴や課題を探ろうとしました。また、これまで見学した全国の博物館の取り組みも調べてみました。そして、なかなか論点が定まらない状況にあっても、レポートとは関係なく時間の許す限り各地の博物館見学を続けていました。そんななかで約20年ぶりに訪ねた地元の「近つ飛鳥博物館」に強く惹かれました。地元ということもあって親近感を持ったこと、帰省中のゴールデンウィークに計画されている様々なイベントに参加して現場感のある情報収集ができること(これらのイベントは残念ながら雨天中止となりましたが)などなど、何となくリアリティのあるレポートが書けそうな予感がしました。そして集めれるだけの情報を集めてみようと思い、関係するWebサイトを行ったり来たりしているうちに少しづつ見えてきました。悩んで苦労した分、前回のレポートよりも楽しく書けました。先生からも高い評価をしてもらえたので素直に嬉しかったです。



「博物館教育の実際 ~大阪府立近つ飛鳥博物館における中高生向け学習プログラムの模索~」

1.はじめに
 私は現在、社会人として会社勤めをする傍ら、独学で古代史を学んでいる。近い将来には私のように古代史を学ぶ人々を何らかの形でサポートする仕事に就きたいと考えている。それが学芸員という形で実現できればこの上なく幸せである。そういう背景のもとで本レポートの対象とする博物館を考えた結果、これまで学んできた古代史の知識や全国各地の歴史系博物館を見学してきた経験が活かせること、自分自身が当該博物館教育の対象になり得るという意味で大阪の自宅からそれほど遠くないロケーションにあること、というふたつの理由から大阪府立「近つ飛鳥博物館」を選択することとした。

2.近つ飛鳥博物館の概要
 まず、近つ飛鳥博物館(以下、当館という)の概要を確認しておく。当館は「歴史、民俗等に関する資料を収集し、保管し、及び展示して府民の利用に供し、もって府民の文化的向上に資するため」(注1)、大阪府南河内郡河南町にある近つ飛鳥風土記の丘の隣接地に建設され、1994年に開館した歴史系博物館である。
 当館ホームページによるとこの地域は「府下でも有数の歴史と文化がストックされているところで(中略)古代の国際交流が、古墳・寺院などに封じこめられている。(中略)あたかも地域全体が『歴史博物館』の様相を呈しているのであって、飛鳥・白鳳時代の歴史的雰囲気に浸り、古代のロマンに想いをはせる場、あるいは歴史・文化を実感する体験学習の場、さらには地域的有為性をふまえた生涯学習の場に、このうえなくふさわしい」(注2)とある。当館が位置する河南町は日本最古の官道である竹内街道の沿線にあたり、難波と大和を結ぶ結節点として要衝の地である。また、すぐ近くには聖徳太子や推古天皇、用明天皇などの陵墓とされる古墳もある。歴史の教科書と現実世界が重なる場所であり、歴史を学ぶに相応しいところと言える。
 ホームページにはさらに当館の使命として、①教育・学習、②大阪の魅力向上、③府民協働、④研究・事業企画、の4点があげられ、とくに①については「隣接する史跡一須賀古墳群や王陵の谷と呼ばれる磯長谷の古墳、収蔵する多くの実物資料を活かし、古墳文化を復元・体感することを通じて、現代の文化や社会の根本を探る教育・学習を行います」(注3)と記される。
大阪府が公開する平成24年時点のデータを見ると、収蔵品は約14,000点、職員数は9.5人(うち学芸員は5人)、年間の事業費は約1.6億円とあり、これらのリソースを使って前述の使命を果たすべく活動しているということになる。結果、年間の入場者数は約12万人で入場料収入が約720万円である。次に当館における教育活動を考察する。

3.近つ飛鳥博物館における教育活動の内容
(1)常設展示
 「近つ飛鳥と国際交流」「古代国家の源流」「現代科学と文化遺産」という3つのテーマで常設展示が行われている。当館ホームページにある展示資料リストを集約すると、展示資料は全部で269点で、うち実物資料が179点と全体の約7割を占める。主として近隣の遺跡から出土した鏡や沓などの副葬品、埴輪や土器などの遺物である。地域住民にとって地元の遺跡からの出土品の実物を間近に見れることは否が応でも地域の歴史に対する興味がそそられる。

(2)特別展示・企画展示
 常設展示のほかに特別展示、企画展示、あるいはスポット展示と呼ばれる展示が継続的に開催されているが、1994年3月の開館から今年3月までの24年間の通算回数は125回にも及ぶ。平均すると年間5.2回となり、これはかなりの頻度での開催である。当館と同様に大阪にある代表的な歴史系博物館である大阪市立大阪歴史博物館における2001年から今年3月までの17年間での特別展の開催が合計74回、年間平均4.4回であることと比較すると、当館の開催頻度の高さが理解できよう。規模や内容、あるいは開催期間が違うので単純に比較することはできないが、それでも大阪歴史博物館における職員数27人(うち学芸員は19人)、運営経費約7億円、収蔵品約12万点というリソースの多寡も考慮に入れると、当館の奮闘ぶりがよくわかる。展示を通じた教育に熱心に取り組んでいる証といえよう。

(3)展示以外の教育活動
 展示以外の教育活動と考えられる各種イベントについて当館のホームページに記載された平成30年度の実施予定をもとに整理してみる。
 ①子供向けイベント
 主に小学生向けのイベントとして「こどもファーストデイ」と称する体験教室(年6回)、「風土記の丘古墳時代まつり」と称する風土記の丘ウォークラリーや勾玉作りなどの体験教室(年1回)、こども一日館長(年1回)、夏休みこども工作室(年1回)の計9回の開催が計画されている。「こどもファーストデイ」や「夏休みこども工作室」は必ずしも歴史と関係する内容ばかりではないが、親子で当館を訪れる機会を作って子ども同伴の場合は大人の入館料が無料になるなど、間接的に博物館での学習機会を提供していると言える。
 ②大人向けイベント
 常設展示の理解を深めるための入門講座(年6回)と最新の発掘調査や研究成果を発信する場としての土曜講座(年6回)があり、前者は開館以来すでに119回、後者は109回の開催を数える講座となっている。4月に開催された「古墳時代の終わりと火葬の始まり」という入門講座に参加してみたところ、単なる展示解説ではなく、展示されている古墳の石室模型の話から始まって、古墳時代終末期の石室の形態の変化とその理由、古墳が造営されなくなった理由、火葬が始まった理由など、学校では習わなかった興味深い、そして専門的な話を聴くことができた。このときの参加者は50人ほどであったが、ほぼ全ての人がシニア層で皆が熱心にメモを取っていた。
 これらの講座のほかに、他の地域の遺跡や古墳を見学する「れきしウォーク」(年2回)、「体験プログラム」として古代衣装着用体験(年3回)、古墳探検ツアー(年1回)、バックヤードツアー(年6回)などが計画されている。

(4)学校との連携
 ①校外学習プログラムの提供
 博物館や風土記の丘を歴史学習の生きた教材ととらえ、前述の子供向けのイベントや体験プログラムをアレンジした体験学習プログラムをワークショップ形式で提供している。また、遠足サポートとして、ワークシートを利用した展示室見学、ウォークラリーによる古墳見学、展示品のレプリカ作成などのワークショップを組み合わせたモデルプランを提供する。これらの実施にあたっては、より学習効果を高めるために事前に学校の先生と綿密な打合せを行うようにしている。
 ②アウトリーチ活動
 「近つ飛鳥工房お出かけメニュー」と称して基本的なプログラムをいくつか用意している。たとえば「古代人になりきろうシリーズ」では、古代の出来事を想像して4コマ漫画でストーリーを考え、剣などの小道具を制作するとともに古代衣装を着用し、皆で配役を決めて芝居をするという内容になっている。単に古代のことを学ぶだけでなく、コミュニケーション、チームワーク、リーダーシップやフォロワーシップといったことを養う機会としても考慮されている。

4.活動実績と外部の評価
 指定管理者として当館の運営を受託している公益財団法人大阪府文化財センターの「平成26年度年報」から平成26年度の当館における教育活動の実績を確認してみる。少し古いデータであるが、公開されている年報としてはこれが最新のものであった。
 4回開催された特別展および企画展の利用者数は合わせて28,525人で、これらの開催に合わせて実施された講演会やセミナーは計20回で参加人数は4,504人にのぼる。また、特別展、企画展とは別に小規模に開催されるスポット展は3回で9,620人を集客した。
 子供向けイベントとして開催された古墳時代まつりの参加者は460人、こどもファーストデイは12回で527人、夏休みこども工作室は1回で157人、勾玉作り工房は3回で107人、一日館長には小学生2人が就任、という状況である。
 大人向けイベントでは、入門講座は10回で114人、土曜講座が10回で441人、バックヤードツアーが5回で110人、れきしウォークが8回で257人、古代衣装着用体験が8回で389人、とまんべんなく参加者が集まっている。
 次に学校との連携による活動を見ると、アウトリーチ活動の実績として小・中学校に対しては58件、2,507人の参加となっており、高校・大学に対しては19件で453人の参加という状況である。いずれも大阪府下の学校が多く、学校数としては38校になる。また、校外学習の受け入れは28校で2,008人の実績となっている。
  
 これらの活動に対して外部からどのような評価を受けているかを確認できる資料を探してみたところ、文部科学省の文化審議会文化政策部会による「地域文化で日本を元気にしよう!」という報告書において当館の事例が取り上げられていた。地域文化の振興にあたって子供たちの文化芸術活動への支援をどのように進めるか、という課題に対して「学校と博物館との連携により、子どもたちの文化芸術活動を推進している事例」として当館の具体的な取り組み内容を紹介するとともに「近隣の小学校等と連携・協力して、ともに活動を行うことで信頼関係を深め、地域の文化拠点としての重要な役割を果たしてきており、地域文化の振興に貢献している」(注4)というコメントを記している。国の文化政策の参考事例として大きな評価を得ていることがわかる。
 また、当館の地元である大阪府河南町教育委員会の「教育に関する事務の点検及び評価報告書」においても「近つ飛鳥博物館を積極的に活用し、また遺跡や自然歴史ルートの整備など文化財や自然環境を生かした活動を展開・助成・発展させている」(注5)と記して当館の活動を評価している。

5.教育活動における当館の課題
 ここまで見てきたように当館は展示およびイベント活動、あるいは学校との連携による積極的な教育活動を展開し、大きな成果を残している。しかしながら、イベント活動においては小学生を中心とした子ども向け、あるいはシニア層を中心とした大人向けが主たる活動メニューとなっている。大阪府文化財センターの報告によると、子ども向けの延長で中高生に対する活動実績も見られるが、用意されたプログラムの内容から考えると中高生には少し物足りない、誤解を恐れずに言えば少し子供じみた内容になっている。これは中高生をターゲットとした学習プログラムが存在しないことを表している。このことから、当館の活動に中高生向けの学習プログラムを加えれば地域の教育機関としての当館の価値をさらに高めることができると考える。もちろん、そのプログラムは学校で学ぶ歴史教育との連携が重要なポイントとなるが、先に見たようにこの地域は歴史の舞台として教科書に登場する場所であることから、その連携は比較的容易である。
 中学校においては社会の歴史的分野、高校においては日本史、という具合にそれぞれ独立した教科として学習するので、博物館における中高生向けの学習プログラムは必要ないという意見もあるだろう。しかし当館にはその中学校や高校の教科書で扱われるような資料の実物が所蔵され、さらには日本最古の官道や推古天皇などの陵墓もすぐ近くにある。これらを利用して効果的なプログラムを開発すれば、すでに当館が用意する子供向けの学習メニューによって芽生えた地域の歴史や文化に対する興味や関心を中高生になっても持続させる、あるいは復活させることが可能となる。加えて私自身が当館で経験したように、学校で教えてもらえない知識を得ることができ、さらには第一回課題で取り上げた奈良県の唐古・鍵考古学ミュージアムでの経験のように、博物館での学びを通じて新たな気づきや発見を得ることができるのだ。私は中高生向けの学習プログラムの開発が当館の教育活動における課題であると考える。稚拙ながら以下に例を示したい。

6.中高生向け学習プログラムの模索
 小学生向けのプログラムである勾玉作りなどの体験学習は、自分たちの祖先にあたる古代の人々の生活や文化、さらには古代の歴史に興味をもってもらうことが第一の目的である。つまり、地域の歴史や文化を学ぶきっかけ作りを支援することに主眼が置かれている。一方で、すでに学校において教科としての歴史を学んでいる中学生や高校生に対して博物館が行う学習支援はどこに主眼に置くのがよいだろうか。歴史や文化に「興味をもつ」とか、それを学ぶことを「楽しいと感じる」ことが小学生であるなら、中高生はそこから一歩進めて、地域の歴史や文化を「自らが考える」ということに主眼を置くのが良いのではないだろうか。この「考える」ということは子供たちが将来を生きていく上において最も必要かつ重要なことである。
 自らが考えることを通じて地域の歴史や文化を学ぶプログラムとして、例えば「近隣の古墳群や竹内街道を題材にしてこの地域の歴史的重要性を考えるグループワーク」というのはどうだろうか。参加する生徒が数人単位のグループを構成し、グループ単位で学習に取り組む。当館に所蔵される資料のみならず、図書館などからも情報を収集し、なぜここに最古の官道が設けられたのか、この官道はどんな役割を果たしたのか、そしてこの官道沿線に古墳群を築いた一族はどういう集団だったのか、なぜこの地域に天皇陵が設けられたのか、など、自分たちの地域が歴史に果たした役割やその重要性を考える。当館からは考古学や歴史学において明らかにされている事実およびそれに関連する収蔵資料や資料に関する情報をレクチャーするとともに、課題を考えるにあたってのヒントを提示する。また、必要に応じてグループワークのファシリテートも行う。このテーマは正解があるわけではないので、生徒ひとりひとりが自由な発想で考え、意見を出し合い、グループとしての考えをまとめていくという作業を行う。そしてプログラムの最後は各グループがまとめた内容を発表して締め括りとする。優秀なグループに対しては当館の入門講座などで発表する機会を提供するというのもいいだろう。
 ほかにも「百舌鳥古墳群や古市古墳群を題材にして古代権力の成り立ちを考えるグループワーク」や「簡易設備を用いた青銅器や鉄器の製作体験を通じて古代の技術を検証し、科学技術の発展を考えるグループワーク」なども面白いのではないか。

7.おわりに
 以上のとおり、近つ飛鳥博物館における教育活動の実態と、私が考える課題およびその対策案を示してみた。最後に、本レポートを執筆するにあたり、現地を訪ねて観て聴いて感じて、そしてインターネットで当館のことをつぶさに調べて解ったこと、最も強く感じたことを述べたい。それは、当館は学芸員の大きな努力と熱意によって支えられているということだ。わずか5人(うち1人は副館長としてマネジメントの役割も担っている)でこれだけのことができるものなのか、というのが正直な感想だ。さらに中高生向けの学習プログラムを開発して実践することは大きな負担になるだろうが、是非ともチャレンジしてもらいたい。私自身も地元の博物館である当館の価値を高めるための学習支援活動を引き続き考えていきたい。

(出典等は省略)


<レポートの評価>
 客観性 SA
 論理性 A+
 オリジナリティ SA

 ※ABCの意味
  A よりよい文章にするために、科目修得試験までにもう一度読み直してみましょう
  B 下記のⅢを読んで、改善するところはないか考えながら推敲してみましょう
  C このままでは減点対象になります。必ずⅢを踏まえて最低1~2回推敲しましょう
   (ABCの後ろの「+」「-」にも注意願います。また「SA」となっているものは、少し手を入れれば卒業研究の一部として使えたり、リライトして条件を満たせれば関係機関の紀要や機関紙・誌への投稿も可能かもしれないような水準と認められという意味です。)

 (後略)
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