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「いのちをいただく」 パート2。やっぱり涙が出ました!

2010年10月29日 | 本っていいな!

 いつもありがとうございます。toshiです。
 今夜は、ニューモラル講演会に行ってきました。
 講師の体験談でしたが、とっても分かりやすくて、良かったです。
 へぇ~! なるほど・・・・。
 というお話もありましたので、このブログでもいつかご紹介させていただきたいと思います。

 「いのちをいただく」
 昨日の続きです。


 いのちをいただく  (つづき)
 

 ある日、1日の仕事を終えた坂本さんが、
 事務所で休んでいると、
 1台のトラックが
 食肉加工センターの門をくぐってきました。
 荷台には、
 明日、殺される予定の牛がつまれていました。

 坂本さんが
 「明日の牛ばいねぇ~」 と思って見ていると、
 助手席から10歳くらいの女の子が飛び降りてきました。
 そして、そのままトラックの荷台に上がっていきました。

 坂本さんは、
 「危なかねぇ」 と思って見ていましたが、
 しばらくたっても降りてこないので、
 心配になってトラックに近づいてみました。

 すると、女の子が、
 牛に話しかけている声が聞こえてきました。

 みいちゃん、ごめんねぇ。

 みいちゃん、ごめんねぇ。

 「みいちゃんが肉にならんとお正月がこんて、
 じいちゃんの言わすけん。
 みいちゃんば売らんとみんなが暮らせんけん。
 ごめんねぇ。みいちゃん、ごめんねぇ」
 そういいながら、
 一生懸命に牛の腹をさすっていました。
 坂本さんは 「見なきゃよかった」 と思いました。

 トラックの運転席から
 女の子のおじいちゃんが降りてきて、
 坂本さんに頭を下げました。
 「坂本さん、みいちゃんは、
 この子と一緒に育ちました。
 だけん、ずっと、
 うちに置いとくつもりでした。
 ばってん、みいちゃんば売らんと、
 この子にお年玉も、
 クリスマスプレゼントも買ってやれんとです。
 明日は、どうぞ、よろしくお願いします」

 坂本さんはまた、
 「この仕事はやめよう。もうできん」 と思いました。
 そして思いついたのが、明日の仕事を休むことでした。

 坂本さんは、家に帰り、
 みいちゃんと女の子のことをしのぶ君に話しました。
 「お父さんは、みいちゃんを殺すことはできんけん、
 明日の仕事を休もうと思っとる」
 そういうと、しのぶ君は 「ふ~ん」 と言って
 しばらく黙った後、テレビに目を移しました。

 その夜、いつものように坂本さんは、
 しのぶ君と一緒にお風呂に入りました。
 しのぶ君は坂本さんの背中を流しながら言いました。
 「お父さん、やっぱりお父さんがしてやったほうがよかよ。
 心の無か人がしたら、牛が苦しむけん。
 お父さんがしてやんなっせ」
 坂本さんは黙って聞いていましたが、
 それでも決心は変わりませんでした。

 朝、坂本さんは、
 しのぶ君が小学校に出かけるのを待っていました。
 「行ってくるけん!」
 元気な声と扉を開ける音がしました。
 その直後、玄関がまた開いて、
 「お父さん、今日は行かなんよ! 」 「わかった?」 と、
 しのぶ君が叫んでいます。

 坂本さんは思わず、
 「おう、わかった」 と答えてしまいました。
 その声を聞くと、
 しのぶ君は 「行ってきまーす」 と走って学校に向かいました。
 「あ~あ、子どもと約束したけん、行かなねぇ」 と、お母さん。
 坂本さんは、渋い顔をしながら、仕事へと出かけました。

 会社に着いても気が重くて仕方ありませんでした。
 少し早く着いたので、みいちゃんをそっと見に行きました。
 牛舎に入ると、みいちゃんは、
 他の牛がするように角を下げて、
 坂本さんを威嚇するようなポーズをとりました。

 坂本さんは迷いましたが、
 そっと手を出すと、
 最初は威嚇していたみいちゃんも、
 次第に坂本さんの手をくんくんと嗅ぐようになりました。

 坂本さんが 「みいちゃん、ごめんよう。
 みいちゃんが肉にならんと、みんなが困るけん。ごめんよう」 と
 言うと、みいちゃんは坂本さんに首をこすり付けてきました。
 それから、坂本さんは、
 女の子がしていたように腹をさすりながら
 「みいちゃん、じっとしとけよ。
 動いたら急所をはずすけん、そしたら余計苦しかけん、
 じっとしとけよ。じっとしとけよ」 と言い聞かせました。

 牛を殺し解体する、その時が来ました。
 坂本さんが 「じっとしとけよ、みいちゃん
 じっとしとけよ」 と言うと、
 みいちゃんは、ちょっとも
 動きませんでした。

 その時、みいちゃんの大きな目から涙が
 こぼれ落ちてきました。
 坂本さんは、牛が泣くのを初めて見ました。

 そして、坂本さんが、
 ピストルのような道具を頭に当てると、
 みいちゃんは崩れるように倒れ、少しも動くことはありませんでした。
 普通は、牛が何かを察して頭を振るので、
 急所から少しずれることがよくあり、倒れた後に大暴れするそうです。

 後日、
 おじいちゃんが食肉センターにやって来て、
 しみじみと言いました。
 「坂本さんありがとうございました。
 きのう、あの肉ば少しもらって帰って、
 みんなで食べました。

 孫は泣いて食べませんでしたが
 『みいちゃんのおかげで
 みんなが暮らせるとぞ。
 食べてやれ。

 みいちゃんに
 ありがとうと言うて
 食べてやらな、
 みいちゃんがかわいそかろ?
 食べてやんなっせ』
 って言うたら、

 孫は泣きながら
 『みいちゃん、いただきます。
 おいしかぁ、おいしかぁ』 て
 言うて、食べました。
 ありがとうございました」

 坂本さんは、もう少し、
 この仕事を続けようと思いました。

 
            「いのちをいただく」
                              文 内田美智子
                              絵   諸江和美
                              監修 佐藤剛史   より


 
 写真は、この本の挿絵です。
 みいちゃんの涙です・・・。
  このブログ、時々涙を流しながら打っていますが、今日の打ち込みは、今迄で一番、涙が流れました。
 両方の目から、ボロボロと流れてきました・・・。
 これから食べ物をいただく時は、今迄以上に感謝していただきたいと思います。
 今日も長い文章をお読みいただき、ありがとうございます。(toshi)

 

追伸 You Tubeで公開しています。

このブログを始めるきっかけとなった、認知症の母とのハッピーな生活を綴ったムービー、「サンキューベリマッチ・トミスケ 母のお仕事」(2010年制作)を、You Tubeで公開しています。

https://www.youtube.com/watch?v=h4cTKFa7a_I

ご覧いただければ嬉しいです。認知症のご家族を介護されておられる方などにもご紹介いただけましたら幸いです。(2018年4月15日記載)

 

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