A.himeのフォト日記

日常の思ったこと、感じたことを自由に気ままに・・・
写真・旅・ワンちゃん・園芸・お花・趣味・日常…etc

宮尾登美子『伽羅の香』

2011-08-12 | その他
宮尾登美子の『伽羅の香』を読みました。

宮尾作品との出会いは1995年、
『蔵』のドラマ化が話題になった時に、まず原作をと読んだのが始まりでした。
失明のハンディを負いながら、造り酒屋の蔵元に成長していく1人の女性の半生を描いた物語で、過酷な運命を背負いながらも信念を貫き強く生きていく主人公と、その家族の愛に深く感銘を受けたのを覚えています。

その後『一弦の琴』『序の舞』『松風の家』など、宮尾文学に嵌りましたが、まだまだ読破しきれていません。NHKの大河ドラマになった『義経』や『篤姫』も宮尾登美子氏原作で、興味深い作品が多いです。

宮尾作品には、封建的な時代に一人の女性が一つの芸を極める物語がいくつかありますが、この『伽羅の香』もその一つで、「香道」という滅びかけた世界を復活させた女性の物語です。



三重の山林王の一人娘として何不自由なく育った主人公・葵は、ひそかに想いを寄せていた従兄と結ばれ、故郷を離れ東京で暮らすことに。二児にも恵まれて幸せな生活を送っていましたが、その幸福な結婚生活も束の間、夫の急逝、両親の相つぐ死、二児の死と次々に不幸に襲われます。失意の底にあった葵が見出したものは、日本の香道の復興という大事業への献身でした。度重なる不幸から立ち直り香道の復興に一身を献げた葵でしたが、自身も病に倒れ、信頼していた人々にも裏切られ…それでも責める事も反論することもせず、静かに身を引き故郷へ帰っていくのでした…

山人の出自を嫌って、故郷から連れてきた素朴で献身的な使用人を切り捨てて得た東京での華やかな生活。湯水のように金を使い、財力によって得た地位…
そんな主人公・葵を私は好きになれませんでした…
結局、その財力を利用されただけで、東京での仲間は葵のもとを去っていき…残ったのは切り捨てたはずの故郷の人々と変わらぬ山々…最後に故郷のありがたさに気づく葵に何故かホットしします。読んだ後に温かい余韻が残る終わり方がいいですね。
宮尾文学に共通する女性のひたむきな生き方が伝わってくるいい作品でした。

「香道」という世界はよく知りませんでしたが、言われてみると、「茶道」「華道」と同様、時代劇ドラマなどで、姫様たちが香をたしなむシーンがよくあります。香をかぐ(聞くと言うそうです)のにもいろいろお作法があるのですね。

今は『錦』を読んでいます。


訪問ありがとうございます。

にほんブログ村ランキングに参加しています。
   にほんブログ村 写真ブログ デジタル写真へ←クリックよろしくね
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする