横浜市都筑区耳鼻咽喉科

南山田(センター北と北山田の間)の耳鼻咽喉科院長のブログ。

耳管開放症

2012-09-14 05:23:18 | 院長ブログ

先日テレビをつけたら、たまたま”ためしてガッテン”で、この病気のことをやっていました。中耳は鼻の奥と耳管と呼ばれる管でつながっていて、通常閉じているこの管が、つばを飲み込んだり、あくびをしたときに開き、それによって中耳の気圧が外気と同じに保たれます。これが何らかの理由で開きにくくなると、気圧の調節ができなくなり、中耳の気圧は下がってしまいます。この状態は、広義の耳管狭窄症と言えます。

ところが、この耳管は逆に開きっぱなしでも、耳閉感(耳がつまる感じ)、自声強聴(自分の声が強く響いて聴こえる)など、いろいろな症状が出ます。これが、耳管開放症です。先日テレビに出演されていた、東北大学の小林俊光教授は、この病気の第一人者です。小林教授によれば、耳管の周囲の脂肪組織が減ったり硬くなったりしたときに、この病気は発症します。けして珍しい病気ではありません。当院にもときどきこの患者さんはいらっしゃいますが、軽症で病院を受診されていない方は、かなり多いのではないかと推測されます。

原因として多いのは、第一に体重減少。体重が減れば、耳管の周囲の脂肪も減ります。無理なダイエットは禁物です。そして女性の方は、ホルモンもバランスで、起きることも多いようで、妊娠やピルも、きっかけになるようです。その他にも、点鼻薬、自律神経異常、楽器吹奏なども、原因になるそうですが、はっきりした原因が分からないことが多いです。

鼓膜を見てもたいていは正常です(重症あるいは鼓膜の薄い方では、呼吸に伴って鼓膜が動くのが観察されます)。聴力検査にも異常がなく、耳管狭窄症のようにティンパノメトリーで異常が出るわけでもない。この病気は、まず症状から診断しなければなりません。

耳閉感や自声強聴といった症状が、頭を下げると改善するということは、多くの患者さんに共通しています。あるいは横になっているときは良いが、起きて動き出してしばらくすると悪化してくることもよくあります。起きた姿勢では、重力によって頭の方にいく血液が少なくなり、耳管周囲の血流も減って、その分耳管周囲の組織のボリュームが減り、耳管が広くなるのです。(鼻づまりが、横になると強くなり、起き上がると楽になるのと、同じ理由です。)

耳管機能検査はこの病気の診断のために有用で、当院でも行いますが、軽症の場合はこれでも異常が出ないことが多いです。私が診断の決め手にしているのは、局所麻酔をつけた綿棒を鼻から入れ、奥の耳管の入り口をそれで閉鎖し、症状が改善するかどうかを確かめることです。軽症の場合は、一日中開放しているわけではないので、たまたま症状のない時に受診された場合はだめですが、症状のあるときであれば、高率に診断がつきます。私の大学の先輩の山口展正先生が、考案された方法です。

治療は特効薬があるわけではありません。ただ、軽症の方では、診断をつけて、この病気についてご説明するだけで、ある程度納得され、安心されて、症状が気にならなくなる方が多いようです。漢方薬(加味帰脾湯)が有効であるとの報告があり、私も薬物としては、これを第一選択にしています。漢方薬の効果だけでなく、他の要因もあるかもしれませんが、数ヶ月の投与で改善することが多いです。ある程度重症になると、この症状はかなり苦痛になるので、そのために神経質になり、自律神経異常も起こして、悪循環になってしまうことも多いようです。このようなときには、軽い安定剤を処方することもあります。

東北大学では、重症の方には耳管にピンを挿入する手術を行われていますが、手術は今のところ一般的に確立された治療法ではありません。

 

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