夏の日の午後。
家を囲む森からは、蝉たちの声が絶え間なく聴こえます。
時おり、窓から風が入ってきても、びくともしない暑さ。
息子は、机に向かい、工作に精を出していました。
朝からずっと続けています。
鼻歌を歌ったり、無心になっていたり。
時間のないような時間にいる、そんな時は、声をかけてはいけないような尊さを感じます。
その横顔を、夏の光がなぞっていきます。
まだ幼さの残る、まるい頬を。
数え切れない涙に濡れた、その頬を。
見いられるような瞬間、いつも、思うことがあります。
“生きているということは、奇跡的なこと。”
わたしも、誰も。
息子が今、ここにいて、何かに夢中になっている。
わたしが今、ここにいて、それを眺めている。
それができるということに、この静かな場面の全てに、手をあわせたいような気持ちになりました。
まあるい頬と、夏の光。
今、目の前にあっても、
とどめておけないものだから、
とらえられないものだから、
こいしくて、
かなしくて、
いとしくて。