ちいさなちいさな いのりのことば

 * にしだひろみ *

詩人の文章*日々のつれづれ*

2017年07月25日 | Weblog

わたしは、言葉を綴ることが好きです。

想いを、詩というかたちに絞りこむことも好きですが、

より自由な、そのまんまの姿をあらわす文章も、好きです。



本はたくさん読んでいる方だと思いますが、その中でも、詩人の書く文章って、素敵だなあ、と思います。

どこか、とても自由なのです。

独特な方向に想いを広げていて。


最近は、そんな本を、読んでいます。


先日、上田市「NABO」で求めた本も、詩人の書いた文章でした。



『プラテーロとわたし』(理論社)
J.R ヒメネス 著
伊藤武好 ・伊藤百合子 訳
長新太 絵


プラテーロというのは、愛するロバのこと。

ヒメネスは、愛するプラテーロに語りかけるように、日々を生きました。

そのひとつひとつを文章にし、まとめたのが、この本です。


感じやすく繊細な詩人には、生きることは大変なものです。

まわりの人にはわからないような、精神的な大きな困難に満ちているから。

だからこそ、描き出すことばが、希少で、輝きを放つのでしょう。



例えば、ヒメネスは、教会の鐘の音が響いてきた時のことを、こんな風に語るのです。


“ ごらん、プラテーロ。

ほら、こんなにバラの花びらが降っているよ。

青いバラ、白いバラ、何色ともいえないバラ・・・

まるで、空がくだけて、バラになってしまったようだ。

(中略)

おまえには、このやさしい花が、どこからくるのかわかっているんだろうね。

私には、わからないんだよ。

(中略)

プラテーロよ、お告げの鐘が鳴り響いている間に、私たちの生活は、日々その力を失っていくように見えるが、

他方では、もっと崇高な、もっと不変な、もっと純粋な、内からわきでる力が、

めぐみの噴水のようにすべてのものを、バラの間できらめきはじめた星のもとへ、とどかせてくれるように思われる。

もっとバラを・・・

おまえには、自分のその目が見えないのだろうがね、プラテーロ。

おだやかに空を仰いでいるおまえの目も、まるで二つの美しいバラの花だよ。”



美しい、ほんとうに美しい文章です。


ヒメネスの、この本に、1956年、ノーベル文学賞が贈られました。

およそ100年前、スペインの詩人、ヒメネスの、この本に。












最新の画像もっと見る