ちいさなちいさな いのりのことば

 * にしだひろみ *

『木を植えた男』*私の本棚*

2016年02月06日 | Weblog



『木を植えた男』

ジャン・ジオノ 作
フレデリック・バック 絵
寺岡襄 訳



時おり、開いてみたくなる本です。

自分を静かに見つめ直したい時に。


わたしにとって、この本は、讃美歌のようなものです。

崇高なものに触れられるのです。



荒れ果てた地に、たったひとりで木を植え続け、広大な森を作り出した男の話です。

いつも静かな感動に包まれるのですが、

先日読み返してみた時に、特に心に残ったところがありました。


それは、木を植え続けた男は、その結果や評価を、ほとんど知らなかったということです。

どれくらい広い森になったのか、お役人たちにより“自然”保護区に指定されたことも、ひとびとが驚嘆したことも、男にはわからなかった。


それは、毎日はるか遠方で黙々と木を植え続けていたから。

少しの時間も惜しんで、植えていたから。



自分がよいと信じることを続ける、この強さ。

その奥には、大きな悲しみがあったのですが。

たぶん、それがあってこその、ひたむきな行為だったのでしょう。


実らず、枯れる木も多く、男は希望を失うこともありましたが、

やめなかったのです。

おじいさんになるまで。



男は、幸せだったのでしょうね。

そこまで強く信じ、続けられることがあったのですから。




読み終えるといつも、

さあ、わたしはどう生きよう、

と考えます。


この本を読むと、どんなこともできそうに思えてきます。

結果も評価も、後世の人に委ね、(誰からも忘れられるとしても)、

自分が最善と信じることを、続けていきたい。

そんな風に、このいのちを使えたら、わたし冥利に尽きるだろうな、と思うのです。