緑 島 小 夜 曲

春を愛する人は、心優しい人。

九色鹿

2007年05月28日 17時32分36秒 | 露天映画


上海美術映画製作所 1981年制作
監督:銭家駿 戴鉄郎
脚本:潘潔茲

人物設計:胡永凱
背景設計:馮健男
美術設計: 杜春甫、範馬迪、楊素英、徐玄徳、殷其米、陸成法、童雪芝
背景:尤先瑞、汪伊霓
撮影:王世栄
作曲: 蔡路、呉応炬
 




 中国美術映画を一本紹介させていただく。

 一軒の家もない荒れ果てるゴビ砂漠の中に、ペルシア使者のキャラバンは砂嵐のため、道に迷ってしまった。その時、九色の神鹿が現れ、使者らに道を付けてあげた。
 ある日、九色鹿は林の中を散歩していた時、うっかりと深い淵に落ちた蛇を捕まえる男の呼び声を耳にした。急いでその男を深い淵から救った九色鹿は「私のことを漏らさないでください」とその男に頼んだ。相手のご高恩を返すため、男はそれを承諾した。
 九色神鹿のおかげで、ペルシア使者一行は古い国の宮殿に着いた。宴会で一人の使者が王様に九色鹿との奇遇を思い出した。王妃様はそれを聞くと、強いて神鹿の毛を服にしようと思った。
 しようがなくて、愚かな王様は「九色の神鹿を捕まえる」という布告を出した。蛇を捕まえる男は王様の布告を読んで利欲に目がくらんだばかりで、心の正義や自分の承諾をすっかり忘れてしまった。王様に密告するだけでなく、九色鹿を捕まえるワナまで薦めた。
 わざっと再び淵に落ちたその男の呼び声を聞くと、九色鹿は急いで彼を救ってきた。頃合を見ながら、王様の兵士らが神鹿に千万の矢を放ち出した。不思議なことには、九色鹿の毛が四方八面にぴかぴかと九色の光を放ち、矢をすべて灰燼になってしまった。
 九色鹿はその男の不信を王様と兵士らに話して、みんなの理解を頂いた。自分の醜い行為が漏れてしまうのを覚えるその男は慌しく逃げようと走り出すと、うっかりして、結局また深い淵に落ちて溺死してしまった。



 敦煌·莫高窟第257窟の壁画《鹿王本生》(本生,梵語でJata Kaという)のストーリによって改作された仏教絵画の風格をもつ美術映画である。チャンスがあれば、自分の目で本物の壁画を見たい。勿論、今からみれば、仏教の因果報応論などの封建的思想は見られるが、芸術面からみれば、とても素晴らしい映画だと思う。