我が家の庭、母のすきな薄紫の菖蒲の花がきれいです
朝から雨だが、今日もまた母のところへ行ってみようか。
毎年、5月半端をすぎると 母の口癖は 「衣がえ、せんなら・・・」
しかし、今年はその口癖がまだ聞かれない。
あたらしいブラウスを買ってびっくりさせてやろうと、長袖のふんわりした生地の
服をさがしてもっていった。
ちょうどおやつの時間で、ロビーでみなさんと一緒にイスに腰掛けていて
私を見ると、母は小さく手を振ってくれた。
ならんでいすに腰をおろした。
小さなお皿にはプリンとビスケットが2枚、美味しそうだったが、
母はあまり食べたくないからと、お皿を右手でテーブルの中程にもどした。
介護師さんが、「S子さんは甘いものがすきだったでしょ?」
「えぇ、すきでしたよ、なかでもシユークリームが特別にですね」と私。
車椅子で自室にもどると、男性の介護師さんが軽々と母をだきあげて
すぐにベットに横にしてもらった。
「あのねぇ・・・今日はネェ・・・」
話しかけようとしたら、母はもう目を閉じて眠ってしまったようだ。
3月から約2ヶ月の入院が余程こたえたのだろう
退院後は入院前とはガラリと変ってしまったように見える。
話しかけてもとろとろと眠ってしまうし、楽しみに見ていたテレビも見ようとはしなくなった。
いつも我がままをいって困らせていた母は、どこへいったのだろう。
じや~、帰るからねと小さくいって、そっと部屋をあとにした
外はまだ冷たい雨が降っていた。
なんだか拍子ぬけの帰り道は切なくて いつもよりアクセルに力がはいらなかった・・・