チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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「風を追う物語」第5章 幸せを願い その43

2011-10-18 14:40:21 | 十三歳、少女の哲学「風を追う物語」
 大好きだったはずなのに・・・見るほどに憂鬱になるこの気持ち。
『あしたもおたのしみに!』
如何にも子供向けな字幕を見送って、ユイはテレビを消した。・・・友達なんて、そんな言葉、大嫌いだ!
小学生の時は、
『この友情は永遠!』
『絶対に途絶えないからね!』
なんてこと言って。友達って、友情って、かけがえのない大切な言葉だったのに。中学生になって、価値観まですっかり変わってしまった。十二歳のベールを越え、何もかもが悪いものに変わって行く。
 いい友達なら、何人でもいたらいいけど、悪い友達なら一層の事、いない方がいい。友達が何もかも、善良なものをもたらすとは限らないし、助けてくれるとも限らない。むしろ、裏切られたり、傷つけられたり・・・
 ユイはブルブルっと首を横に振った。そんな事ない!私はたまたま、悪い子に引っかかっただけ!裏切らない友達は、中学にもきっといる。助けてくれる友達も・・・
 ガラガラガラ・・・カートの音を聞きつけて、ユイはベッドから飛び降りた。お昼ご飯が来た!そこそこ大きい子供のトレーは、器も大きめで、おかずやご飯の量も多くなっている。私の物も結構な量。 
 今日は魚がメインだけど、病院の食事を食べていると、物足りないと思う半面、逆に、こんなにたくさん食べていいんだなって思う事もある。空腹も手伝って、ロクにかまずに飲み込んでしまい、あっという間に完食。
「あら、ユイちゃん。早いわね!」
カート脇、トレーを返却しながらごく聞きなれた会話を交わしていたその時、司会の隅っこに、見慣れた男性の人影が。
「・・・ユイ。」
お父さんだ!


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