チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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「風を追う物語」第4章 夢の舟 その14

2011-05-25 22:52:40 | 十三歳、少女の哲学「風を追う物語」
結局、そこに結びつけてしまうのか。

だけどそれを、
単に服装の嗜好にだけ
根拠として決めつけているのではないというのは、

ユイさんに直接関わってる
人間だからこそ、わかる事。

「確かに、性格も男の子みたいなところ
ありますよね・・・でも、ぬいぐるみが好きだったり、
女の子らしい面もあると思いますけど。」

しかし、母親は首を横に振った。
「いえ、あの子、物心がついた時から
女の子の遊びを好まないんです。
幼稚園でもそうでした。

他の子がお人形ごっことか、
おままごとで遊んでいるのに、
ユイは男の子のおもちゃを取り合って。」

「あのぬいぐるみだって、
あまり女の子は好まれないキャラクターでしょ?」

そうなのかな?
「ユイの通っていた小学校でも、
あれが好きな女の子はユイと、
ユイの友達ぐらいでした。」

たぶん、そんな事はないと思うけど。
だって、この女子校でも、
他の学年で、信じられないほどハマってる子が
いるって聞いてるもの。

だけど、これを伝えたところで、
このお母さんの神経を逆なでするだけだろうか?
とにかく、静かに聞こう。

「ユイさんが普通の女の子ではない、
というのも、親御さんとしたら
不安だったんですか?」

「そうだったのかもしれませんね・・・
家で見ていたら、あまりそう思わないんですけど、
幼稚園でも、小学校でも・・・」

だんだん涙声になってきた。

「私も主人も、ユイには厳しく接してきました。
普通の親御さんなら、普通に許してしまうような事でも、
ユイにはきつく叱りつけてきました。」

そうか、それで校則が厳しくて有名な
この学校に?
「自由にしてしまうと、
あの子、とんでもない方向に行くような気がして。
親としても、失敗しないように線路をひいてやりたかった
ですし。」

さらに酷くなる涙声。
「それなのに、それなのに・・
あの子・・・違う方にばかり行ってしまう・・・
私達が子供の頃と、まるで違うんです。」

そして、不登校にまでなってしまった。
母親はここで完全に泣き崩れてしまった。









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