チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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「希望の樹」第4章 ここにいて、いい人 その18

2012-08-03 19:33:38 | 福祉の現場から「希望の樹」
 ただいま!
「あ、ごみの出し忘れ!」
「すみません、忘れてました。」
「いいっすよ。このぐらい誰でもありますから。僕がやっときます。」
腰軽く動く、アライさん。この人も凄いよな。良く気がつくし、難しい人の介助も上手だし。
 ホワイトボードに明日の予定をかくヨシナガさん。
「まあまあ、皆さんコーヒーでも飲んでくださいよ。ジュースも冷蔵庫にありますよ。」
椅子にかけて、何やら難しい顔をしてるサカキさん。
「えーと、皆さんもこの資料に一通り目を通しておいてください。」
真っ先に飛びついたのは私。
『自閉症とは』

お疲れさまでした、失礼しまーす!

 雨、ちっともおさまらない!そんな中、サガワさんと二人で傘をさして駅を目指す。
「わー、足がびしょびしょ!凄いですね!」
「本当ね!私も家帰ったら、足を洗わなくちゃ。」
到着した電車に乗り込む。
「早ーい!ラッキーですね!」
「そうね!」
空いてるし、二人で並んでシートにかけた。
「今日も疲れたわねー。歳行くと辛いわ、この仕事。」
うちのお母さんと年齢変わらない人だもん。それでこの仕事はかなり辛いと思う。
「でも、体だけで、精神的にはわりと楽しいのよね。」
「それなら、いいですよね。・・・職場で精神的な疲れって、正直凄く堪えますよ。」
これも、経験があるから言える事。
「所長さんが立派な方だから、きっとうまく回ってるのね。」
「そうですよね。」
 だけどさ、
「ねえ、サガワさん。皆、どうしてアカリちゃんの支援で揉めてるんですか?」
「うーん。何ででしょうね?」
「何か、不具合あるんでしょうか?」
「いや、そんな事ないと思うわよ。」
 ガタン!ゴトン!
「言いだしたのは、誰なんですか?」
「サカキさんよ。」
所長さんじゃないんだ。
「サカキさんが、独断ですか?」
「そう。ツリーハウスのやり方が気に入らないみたい。」
「そんな・・・所長さんのお考えでしょ?」
サガワさんはゆっくりうなづいて答えてくれた。
「あの人はほら、障害者の施設に長い事いたから。ツリーハウスもまだ、たち上げて四年ぐらいだし。所長さんもヨウちゃんがいるけれど、あまり障害について詳しくないのよ。」
 つまり、詳しい人の意見を取り入れようという事か。それはそれで、一つの考え方のような気もするんだけど。・・・ガタン、ゴトン!
「あ、私、次です。」
「そうね、今日もお疲れ様。」
「お疲れさまでした!」
流れる車窓越し、笑顔で手を振ってくれるサガワさんが見えた。