a journal of sociology

社会理論・現代思想を主に研究する今野晃のblog。業績については、右下にあるカテゴリーの「論文・業績」から

今週末の過ごし方:ロッセリーニを観る

2012年07月02日 | 研究生活
この週末は気分が乗らず、研究が進まず。何の気なしに、少し前に購入していたDVDを見る。

 ロベルト・ロッセリーニの『ブレーズ・パスカル』である。(こちらCoffret Roberto Rossellini : blaise pascal ; l'age de cosme de medicis ; augustin d'hippone ; descartes

 ロッセリーニがテレビ映画用に制作した歴史百科映画で、デカルトもある(ロッセリーニについてはこちら)。

 このシリーズは仏語の吹き替え版のみ収録されている。amazon.frの説明では字幕版とあったのだが、仏語吹き替えで安心。そうでなければイタリア語の台詞を仏語字幕で見るハメになっていた(苦笑)。ちなみにyou tube上にイタリア語版がアップされていたのだが、私の仏語力では、仏語から類推して伊語を理解するなどということはできずに、結局DVDを購入することに。

 ロッセリーニの助手をつとめていたトリュフォーは、ロッセリーニが資料調べや考証に余念がなく、歴史や社会学の本、科学書などを読みふけっていたと述べているらしいが、1970年代に制作されたこのテレビ用映画はその成果とも言えるようである。DVDに収録されていた解説によると、ロッセリーニは、パスカルが発明した計算機(こちら)を実際に作ってみたらしい。実際にその機械はうまく動くことはなかったのだが、映画の小道具にそれだけの労力を注ぐのは、並大抵のことではない。また、この計算機制作という「実験」から、当時の技術の難しさを彼は知ることになり、それが映画の考証にも活かされているという。

 ちなみに、なぜこの映画『ブレーズ・パスカル』を私が観たかというと、現在ブルデューの『パスカル的省察』に関して、論稿を準備中だからである。


パスカル的省察 (ブルデュー・ライブラリー)
クリエーター情報なし
藤原書店


 ロッセリーニが描き出すパスカル像は、当時の教会を支配し、またデカルトも支持していたスコラ自然学に抵抗する姿である。ブルデューの『パスカル的省察』では、「スコラ的理性」の批判から始められているが、こうしたところにもパスカルの影響を見ることもできるかもしれない。

 ただし、ロッセリーニはあくまで映画監督であり、「厳密なパスカル」を描いているわけではない(解説者は、パスカルは知られていないことが多く、そこに創作が活かされていると述べている)。ので、この映画の描かれるパスカル像に基づいてブルデューの論稿を読むのは、少々難しい。ちなみに計算機や真空実験については、『パスカル的省察』では言及されていない。また、アンチ・スコラというのはパスカルの思索の一つの面に過ぎない。そして、ブルデューのそれも、しかりである。


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