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日本経済は「短期楽観・長期悲観」お札の信認を揺るがす(ダイヤモンド)

2011年05月02日 09時34分28秒 | 感想&独り言!!
【第10回】 2011年5月2日

日本経済は「短期楽観・長期悲観」お札の信認を揺るがす

日銀の国債引受は絶対に避けるべし
――みずほ証券チーフマーケットエコノミスト 上野泰也

http://diamond.jp/articles/-/12121

政府の復興構想会議が立ち上がったが、議論の焦点の一つは、復興のための財源をどうするかである。復興には巨額な資金が必要であるのは間違いない。その調達のやり方次第では、国債市場(長期金利)にも大きな影響を与えかねない。日本経済と国債市場に詳しい、みずほ証券金融市場調査部の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、復興財源の捻出ための日銀による国債の直接引き受けは、絶対に行うべきではないと主張する。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)

 

うえの・やすなり/1963生まれ(A型・水瓶座)。1985年3月上智大学文学部卒、85年4月同法学部に学士入学後国家公務員1種試験合格、86年4月会計検査院に入庁、88年4月富士銀行に入行、為替ディーラーとして勤務、90~94年為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任、94年11月富士証券設立に伴い、チーフマーケットエコノミストに就任、2000年10月みずほ証券設立に伴い、チーフマーケットエコノミストに就任、現在に至る。 「『依存症』の日本経済」(09年、講談社)、「日本経済 『常識』の非常識」(10年、PHP研究所)など著書多数、近著に「国家破局カウントダウン」(朝日新聞出版)11年5月発売予定

――最初に、これからの日本経済の見通しについて、聞かせてください。

 日本経済の行方については、「短期楽観・長期悲観」というのが私の見方です。短期的あるいは循環的には、秋以降、日本経済はまた上向きの流れに戻ると思います。

 要するに、世界経済の回復基調は変わらず、再び輸出は伸びる。為替も円安に徐々に傾斜しているという状況なので、大震災による供給制約さえ解消すれば、上向きの流れに戻る。供給制約で大きいのは、サプライチェーン(原材料、部品の供給の連鎖)分断と電力不足との二つです。

 サプライチェーン分断は今、半導体メーカーさんなどの生産再開時期の前倒しもあって、6月いっぱいで制約の山は超えそうだ。その後は夏になるので、7月、8月辺りは電力不足が効いてくる。電力不足に対応するために、各企業が輪番操業だとか、休日操業をやるとかで、生産が影響を受ける。ただ、そこを越えれば、電力の不足は解消し、この面からの供給制約もなくなるので、冬場はあまり問題ないとみているし、そうなると、需要に応じて生産=供給ができる状態になる。

国債消化の「猶予期間」が 震災によって短くなる懸念

 つまり、短期的には景気が一旦、下向きにはなるが、そのまま腰折れせずに、秋にはまた緩やかな上向きに戻る。そういう意味で、短期では楽観しています。

 一方、08年に執筆した『デフレは終らない』(東洋経済新報社)など拙著で指摘したように、私は、日本は主として人口面の構造変化から慢性デフレに陥っているという長期的な“悲観論者”です。だから、震災がなかったら、おそらくは緩やかな輸出主導の景気回復が続いていたはずだが、その場合でも長期的な人口動態の変化をベースとする慢性的なデフレ、あるいは名目GDPの伸び悩みという状況は、何も変わらなかったと思う。長期の悲観論自体は震災が起ころうが起こるまいが変わらず、むしろ震災が起きて悲観的要素がさらに上乗せされた。いまは、そういう「上乗せ危機」的な事態ではないでしょうか。

――例えば、上乗せされた悲観的要素とは、具体的にはどのようなことですか?

 一つは国債の消化問題です。今は国債消化の最後の「猶予期間」。言い換えると、国債の安定消化については、最後の「大丈夫期間」だと考えて下さい。なぜかというと、高齢化社会の到来に備えて家計が溜め込んだ預貯金や保険料といった金融資産が、1400兆円以上あり、これがまだ国債や地方債の残高をゆうに上回っている。国債を増発してさらに売ろうとしたときに、国内のお金で完結する状態なのです。要は日本という村社会の中で、国内で消化(販売)できる国内完結の状況になっている。

 ただし、今後もこのまま国債・地方債の残高が増えて行くと、いずれこれが逆転していく。おおよそ今から5年前後あるいは遅くとも10年後までには、逆転が起きると思うが、震災の影響で復興資金を国債でさらに調達するということになると、逆転する時期が早まってしまう。

では、逆転すると何が起きるか。家計のお金以外で国債消化に回るのは、企業のお金と外国人のお金です。いま企業はキャッシュフローが潤沢でカネ余りだが、要は設備投資を抑制しているから滞留しているだけで、海外で設備投資しようとか、M&Aをかけようということになると、そのおカネはたちまち減ってしまう。そうするともう外国のマネーに依存せざるを得なくなる。現在のアメリカやさらにはギリシャに似たような構図に向かって、われわれは一歩一歩踏み込んでいっているわけです。

 

悪い金利上昇が起こる状況が強まる

――現在、国債の外国人の保有比率は、5%程度ですね。それが高まるとどのようなことが起こると予想できますか?

 そこで起きるのが「悪い」金利上昇です。つまり村の中だけだったら、村の長(おさ)が発行している債務証書は一番信用できるし、信用しないということは社会的にあり得ない。外国の格付け機関が、格付けを上げようと下げようが「関係ありません」と、村の住人たちは借用証書を安定して買っていく。 

 ところが、外国人から見ると、この日本という国の借金は「名目GDPの200%もあるぞ。しかも、増税をする、消費税を上げるとて騒いでいるのに、全然、法律は通らないじゃないか」という評価が出てくる。そうなると、こんな財政バランスが悪い国の国債を、いまのように1.2%台というような低い金利で買って良いのか、ということになるので、国債の金利がもっと高くないと買ってくれなくなる。

 そう考える人たちの影響力が、毎年毎年じわじわと高まってくる時代が、間違いなく近付いている。ということは、景気が良くなくて物価が下がっているのに、長期金利だけがじわじわと上がっていくという事態が、先の方に見えているわけです。

 だから、いまやるべきことは、できるだけ国債発行を抑えるために、政策の優先順位を見直すこと。たとえば、いまあえて高速道路を1000円とか無料にする必要はない。そのお金があったら、とりあえず震災復旧に回すべきであって、予算の立て方や政策の優先順位を一から見直す。そういう意味では、菅総理の4月12日の会見に注目したが、具体性はほとんどありませんでした。

日銀券の信認が揺らげばキャピタルフライトが起きる

――復興財源については、国民の金融資産の問題も考えると、国債を発行して、それを日本銀行が直接引き受けろという意見も出ています。現在の財政法では、日銀が国債を直接引き受けることは禁じられていますね。

 いま絶対に避けなくてはいけないことがいくつかあると思うのですが、そのうちの一つは、お札が信認をなくしてしまうことです。お札=日本銀行券というのは、日本の中央銀行が、その信用を基礎に発行しておカネとして流通させている紙切れ。原価はたしか20円か30円くらい。このお札の信用・信認を維持しておかないと、キャピタルフライト=資本逃避と言われる、おカネが海外に大量に逃げていくという事態が起こる。

 個人が預貯金を引き出して外国の金融機関に外貨で預け替えるとか、あるいは香港とか海外のどこかに、体も財産も一緒に逃げてしまうとか。こういう動きがどんどんでてくると、たちまち国債は消化難に陥ってしまう。危機的な状態が予想より手前で、どんどん起きてしまう。そうするといろいろな政策を打とうとしても余裕がなくなるので、間違っても日銀のバランスシートへの疑念を抱かせてはいけないというのが、私の強い主張です。

 では、何が問題かというとうと二つある。一つは日銀がどんどん国債を買い続けることで、それはやめるべきです。また、日銀は震災直後にも、国債に加えて社債やCPなども含めた資産の買入れ――去年の10月に創設した「資産買い入れ等の基金」という別枠のおカネによる買い入れ枠を増やしましたが、私はこれにも反対です。

 そもそも日銀は、国債の買い入れについては「銀行券ルール」――日銀が市場から買入れた長期国債保有残高は、お札(日銀券)の発行残高を上回らないというルールを定めて、歯止めをかけている。日銀がどうもこのルールは、使い勝手が悪いと思ったのか、去年の10月に、「包括的な金融緩和政策」という新しい金融緩和パッケージを出した時に、銀行券ルールと別枠で、資産買い入れ等の基金という別勘定を設けました。

その基金で国債に加えて社債、CPそれからETF(指数連動型投資信託)、J-REIT(不動産投資信託)といった投資信託も、買い入れられるようにした。その金額を今回また増やした。地震など大災害への対応で、時限措置だったら良いという議論もあり、世の中、私以外のエコノミストは、大体賛成しているのだが、私は反対です。

 世の中のセンチメントとか、マーケットの雰囲気とか、人々の気持ちなどというものは、ちょっとしたきっかけでがらっと変わってしまう。だから、日銀が「そんな信用リスクのある資産を買い入れて大丈夫なの?」「銀行券ルールがあるのに、実質的には破っているんじゃないの?」というような疑念を招きかねない金融緩和の拡大は、避けたほうがよい。

 そう言うからには、国債の直接引き受けは論外です。これはこの国が先進国の座を降りるに等しいルール破りですから、どんなことをしても避けるべきだと思います。中央銀行による国債の直接引き受けなどということを、先進国でまともに議論するということは、10年前だったらまず考えられなかった。今のアメリカ、ヨーロッパでもまず考えられません。

――では、復興資金はどのように調達するべきでしょうか?

 これに関して明るい話と言えば義援金です。4月11日時点で、義援金は日本赤十字社と中央共同募金会の2団体だけで、1400億円近くに達している。このままいくと2000億円には達しそうだという声もあって、阪神淡路大震災の時の1800億円弱をゆうに超えそうです。

 これはやっぱり個人・企業の善意というか、連帯意識の表れで、日本人の非常に良い面が出ていると思う。私も募金活動をやったのですが、中高生ぐらいの――「なんだ、こいつは」と思うような格好をした子ども達が、募金箱にお札を入れていく――これはいい意味での驚きだった。

 さらに、共同通信の世論調査によれば、復興増税について「どちらかといえば賛成」を含めて、7割弱が賛成している。国債発行は出来るだけ抑制すべしと申し上げたが、まず既存の歳出をカットする、それで足りなければ、小規模であれば復興増税をかけてもよいと思う。義援金が1400億円からさらに増えて、最低でも2000億円はいくのであれば、その5倍位の増税をお願いしても、景気が腰折れするような規模ではないと思います。

 

原発問題を解決し“日本は安全・安心”神話を復活させ「滞在人口」を増やす3本柱を実行に移す

――では、日本経済の衰退を防ぐ長期的な対策を、どう考えますか?

 私はずっと、3本柱の人口対策を提案しています。その目的はいわゆる「滞在人口」を増加させること。滞在人口というのは、日本の国土に滞在している、日本の国籍を持たない人も含む人口です。

 一つ目は、税制やインフラの整備による少子化対策の抜本的な強化。例えば、税制ではフランス型の「N分N乗方式」を取り入れる。これはざっくり言うと、子どもが多い世帯ほど所得税の払いがどんどん累進的に減っていくという仕組みです。

 もう一つは託児施設の抜本的な拡充で、例えば、規制緩和して事業所内の託児施設などを、大量に整備をする。常に定員に余裕がある状態を作りたい。女性が働きながら同時に子どもも育てていく、とくに1人だけではなくて2人目も欲しいというとき、なぜ躓くかと言うと、定員の関係で同じ託児施設に入れられない、同じ託児所に入れる確率が非常に低いからです。そうすると職場のこっち側とあっち側の託児施設に預けないといけなくなって、仕事と育児が両立できない。だから、まず一つ目が日本人を増やそうという政策で、税制とインフラ整備が2本柱です。

 二つ目が観光客の誘致という観光政策。歴史的な遺産、自然、それからアニメとか映画とか、これだけ豊富なコンテンツがありながら、いまの日本を訪れる環境客は、世界1の観光大国であるフランスの10分の1以下というお寒い状況にある。観光客が5~6人集まれば、日本人の1人当たりの平均年間消費額くらいのおカネを落としてくれるので、観光は有力な経済政策です。

三番目が移民。移民といっても、単純労働者を引っ張ってくるということではなく、高度な技能を有する労働者を誘致するほか、例えば老後の住まいとして、海外のお金持ちを引っ張ってくる。あるいは、日本の「匠(たくみ)」と言われる伝統技能の継承のために、アジアの若い人を引っ張ってくる。そういう幅広い意味での移民も、有力な選択肢になると思う。

 ただ、2番目と3番目の柱が、大震災後の今回の原発事故によって、一気に危機に瀕してしまった。だから原発事故をなんとかクリアして、日本の「安全・安心神話」を復活させたうえで、今申し上げた3本柱をしっかりやっていく。

 国債の消化が転換点を迎える前にいろんなことに手を付けておかないと、外国人がこの国を見る目がもっと厳しくなる。そうなって金利が上がれば、国債の利払い費もかさみますから、財政の状態ももっと悪くなる。そういう状況が震災のよって近くに迫ってきたとい意味で、われわれは正念場に来た、分かれ道に来たという感じがします。



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