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外伝 IV 「心は乙女! エリスさん。」

2016年04月09日 18時51分51秒 | ためぞうの冒険・外伝(仮+試しなど。)
 外伝 IV

    『善と悪。』



      - あらすじ。-


 こたつからシュート(落下)したエリスさんは、

 むかしむかしの、ファンタジックな世界に舞い降りました。


 いい感じで、マジカル乙女15才になって、

 ウハウハな感じでのエリスさんです。


エリスさん「ハアハアの間違いだろッ!!


      残業明けで疲れた身体にムチ打って、

      こっちは、必死に頑張ってんだよッ。」


 おや、言葉が元の姉御口調に戻っていますねっ♪

 謎の声の主が消えたせいでしょうか。

 
 とにかく、よかったですね。



     ◇ そんなエリスさんに選択肢です。

  
         → ・ そのまま、姉御口調で楽に乗り過ごす。

  
           ・ しんどいの無理して、気迫の乙女口調。

              (もうオートで、その口調には変換されないです。)




エリスさん「あらすじにも試練出すのかよッ!」


      ためぞうは、沢山の苦労を、

      乗り越えて来てたんだねぇ。

      おろおろおろ・・・。


      エライよ、ためぞう。

      世界の誰も、ためぞうをヒーローと認めないとしても、

      あたしの中で、アンタはあたしの一番星。

      ちゃんと煌いてるよ。」


 どーしますかー。


 スルーですかー?


エリスさん「いきなり変わったら、

      味方のテンション、

      ダダ下がりだろうがッ!


      無理でも何でもしてやっよッ、

      ・・・まったく。」


 では、がんばってくださいね~♪


エリスさん「おほほ・・・、

      もちろん、

      完璧に演じて見せますですよ。」


 クススッ、すでに結果は見えてますね。


 ではー。



エリスさん「ごきげんよう、解説さん。

      ありがとうですわっ。


      ・・・いけるのか、あたし。」


 話は、暗黒の戦士と、

 銀髪の少年剣士との、死闘へと続きます。


 平原の空と大地は、

 すでに西方から茜色に染まって来ています。


 エリスさんの絶対防御の残り時間も、

 もうほんの僅かしか残されていない、

 そんな夕暮れ前。


 異世界との繋がれた空間の歪みが、

 序々に小さくなっていきます。


 戦士としての能力に目覚めた、

 麗しい、細身の銀髪の少年剣士の、

 活躍によるものです。


 ついにその力が、

 暗黒の戦士と同等に、並びます。


 共に戦う兵たちの士気は、

 その光景を目の当たりにして、劇的に上がります。


青の戦旗の歩兵「『戦士』の誕生を、

        目撃する事になるとは・・・。


        なんという、圧倒的な存在感ッ!

        オレは、戦士と共に戦えるのかッ!!」


赤の戦旗の騎兵「・・・勝ったぞッ!!」


 戦士という言葉に、勢いを増す4万を超える軍勢は、

 次々と、弱体した妖異の群れを駆逐し始めます!


 それは、誰もが勝利を確信した瞬間でした。


 彼らにとって、『戦士』との邂逅は、

 それほど特別な物です。


 人の生涯で、一度会えるかどうかの存在。


 戦士の覚醒率を彼らは知りませんが、

 その確立は、この時代の世界では、

 1億分の1と云われます。


 まさしく、奇跡の確立です。


 戦乙女の降臨に次ぐ、

 光の戦士の誕生。


 相次ぐ奇跡の連続に、

 もはや、彼らの心には、

 『勝利』以外の文字は浮かびませんでした。


 それほどまでに、

 伝説的な存在へと到達した、

 銀髪の少年剣士です。


  キンッ、キンッ、キンッ! カァーーーンッ!!


 暗黒の戦士と、力に目覚めた少年剣士は、

 目にも留まらぬスピードで、

 火花を撒き散らして、戦っています。


 割り入る隙間のないほど、

 過密しつつある戦場の中にあって、


 この二人の戦士たちの間には、

 数メートルのサークルを描くように、

 空間が開けられています。


 その円の中には、激しい重力が発生しており、

 人の身体では、容易に近付けないのです。

 妖異達ですら、立ち入る者は、

 容赦なく大地へと叩き付けられます。


 追い込まれつつある暗黒の戦士が、

 無理に大地から吸い上げるエネルギーによって、

 円の中には、10Gを越える圧力が掛かっています。


 それは、光の戦士である、

 銀髪の少年の力に対抗する為ですが、

 信じられないほどの成長を見せる、

 そのあまりの光輝に、


 暗黒の騎士の肉体が、

 ついには限界へと達しようとしています。


暗黒の戦士「グオォォォォォォッ!!!」


 至高の紫の宝玉となろうとする、

 銀髪の少年を前に、

 自己崩壊を起こしかけている、暗黒の戦士。


 その闇の肉体は、

 まるで砂で作られた像のように、

 黒い粉を散らしながら、

 壊れ去ってゆくのが、誰の目にも明らかでした。


 刹那、強力な闇の圧力が、

 戦場全体に圧し掛かります。


銀髪の少年「させるかぁ!!」


 少年のその紫の眼光は、

 暗黒の戦士の意図を即座に見抜きます。


 それは、戦場にいる全ての者を巻き添えにして、

 銀髪の少年と共に闇へと還る、

 まさに相打ちを狙ったものでした!!

 
エリスさん「間に合わないッ!」


 もうエリスさんの背中の翼には、

 暗黒の戦士の最期の力を耐え凌ぐだけの、

 力は残されてはいません。


 果敢に、暗黒の戦士に挑む銀髪の少年ですが、

 その暗黒の戦士から、

 背筋が凍るほどの笑みを見せられます。


 ・・・闇の力の『暴走』が始まりました。


 暗黒の戦士は、人としてのカタチを失い、

 極めて小さな、黒い点へと変化します。


 僅かな間、時が止まります。


 音も、光も、捻じ曲げる、

 暗黒物質の爆縮。


 それは、最悪の展開でした。


 黒点となった暗黒の戦士の、

 その闇の力は、

 視界に入る全てを消し去る、

 この世界にあってはならない、

 暗黒のエネルギーを放ち始めます。


 銀髪の少年剣士は、

 その闇の中心で、

 とてつもない重さに拘束されて、

 身動きが取れないでいます。


銀髪の少年「させるものかァ!!!」


 抗う銀髪の少年ですが、

 脆くも、その鉄のつるぎは、

 粉々に砕け散ります。


エリスさん「やらせてたまるかァァァア!!!」


 守りの壁の能力を強制解除したエリスさんが、

 長槍を手に、稲妻のようなスピードで、

 少年のいる闇の中心へと飛び込みますッ!!


  パリーーーンンンッ!!!


 ガラスが砕けるような高音を放ち、

 エリスさんの手にした、

 光輝を纏う長槍は崩れ去ります。


 エリスさんは、銀髪の少年を、

 闇のサークルの外へと突き飛ばすと、

 その闇の中心の黒点を、

 全身を以って抱え込みます。


銀髪の少年「天使さまぁぁぁあッ!!」


エリスさん(よく頑張ったね・・・。


      ・・・ここから先は、私の番。)


 エリスさんの心の声が、

 銀髪の少年の胸に刺さります。


銀髪の少年「イヤだッ!!


      こんな所で、終わるわけにいくものかーーぁッ!!!」


 エリスさんは、この凶悪な闇の力を、

 自らの力に変える事が出来ます。


 闇の力、『ダークフォース』によって、

 放たれるその闇を利用して、

 物理障壁を構成し、

 破滅の危機を回避する手段を、

 彼女は選びました。


 異世界への歪みは完全に閉じられ、

 溢れる妖異の群れは、

 塵のように、無へと還ります。


 これがエリスさんの起こす事の出来る、

 最期の奇跡です。


 破滅は、エリスさんという代償を得て、

 回避されるでしょう。


 その中心点を包み込む、

 ダークフォースの障壁によって、

 外からは、数メートルの闇の球体が、

 浮かんでいるようにも見えます。


 銀髪の少年は、

 その紫の瞳に強い意志を宿して、

 大地に落ちた長剣を拾い上げ、

 闇の壁に激しく斬り付けます!!


   カァァァァーーーンッ!!!


 根元からバキッっと折れた長剣の剣先が、宙を舞いながら、

 茜色に染まった大地を突きます。


 平原に取り残された兵士たちは、

 皆、一様に緊迫した様子で、

 暗黒の球体を、ただ見つめています。


 もう次の奇跡は起こせない・・・、


 そう、誰もが諦めようとした、

 その時ですッ!!


 天から、一筋の光が射し込み、

 閃光が、闇の球体を貫きます。


 一瞬で、闇の脅威は消え去ると、

 そこには、今にも膝を折るように崩れようとしている、

 緑の髪の戦乙女の姿と、


 見たこともないような、

 美しい刀身を持つ一本のつるぎが、

 大地に深く、突き立っていました。


 倒れ行くエリスさんの身体を支える、

 銀髪の少年剣士。


 それと同時に、

 天より声が聞こえます。


 その美声は、夕陽に染まった平原の兵士たちにも、

 しっかりと聞き取ることが出来ました。


天からの声「確かに、そなた等の勇気は見せてもらった。


      故に、我はその奇跡を望む声、内なる声に答えたのだ。」


 すると不意に、

 一人の長身の、金髪の剣士が姿を現し、

 こう、彼らに告げたのです。


長身の剣士「我が名は、『アレスティル。』

      天の六極の、その一角を守護する者なり。


      少年よ、

      聖剣をそなたに授けよう。


      さあ、その手にするがよい。」


 エリスさんは、朦朧とした意識の中、

 銀髪の少年に、か細い声でこう伝えます。


エリスさん「・・・その剣に、手を・・、

      触れては・・・だめ。」


 エリスさんはそのまま、

 アレスティルと名乗った長身の剣士を見上げ、

 こう続けました。


エリスさん「剣聖、・・アレスティルに、

      この、身を捧げ・・・よう。


      だから、この子を・・連れ行くのは、

      どうか止めて・・欲し、い。」


剣聖アレスティル「我は、他の六極の者らと、

         意を同じくしてはおらぬ。


         故に、対価として、

         そこの若き戦士を求めはしない。


         そこにある聖剣、オメガ・レプカは、

         若き戦士への手向けである。


         抜けるというのであらば、

         聖剣は、その者のつるぎとなろう。


         ・・・仮初めの戦乙女とはいえ、

         その栄誉を賜えるのであらば、

         我、自ら、そなたに頭を垂れてもよい。


         だが、そう急くではない。

         我は、この争いの顛末(てんまつ)に、

         ただ純粋に、

         敬意と感動を覚えただけなのだから。」


 剣聖アレスティル。


 彼は、六極の神々の中にあって、

 その上位の存在として、君臨する者の一人。


 地上の人々は、

 彼の事を、古いおとぎ話の本の中でしか知りません。


 六極の頂点に、最も近い者である、

 彼のその素性は、

 他の六極神ですら、知らぬ事も多い、

 孤高の存在です。


 この大地に現れるであろうと予測された、

 六極の神々の中で、

 それが彼だった事は、

 非常に、幸運だったかも知れません。


 他の者が現れていたとしたら、

 有無を言わさず、

 その目的を果たしていたのだから。


 エリスさんの表情が、

 少しだけ和らいだように見えたその時でした!


 剣聖アレスティルが突然、

 腰に帯びた伝説のつるぎ、

 聖剣・エルザードを抜きます!


剣聖アレスティル「・・・来る。」


 瞬きする隙すら与えず、

 この地に、二つの人影が姿を現しました。


 現れたのは、共に美しい容姿を持つ、

 金髪と銀髪の女性です。


少女のように若い金髪の女性「我が名は、邪王にして、

              この大地より生まれし息吹を欲する者、アリス。」


剣聖アレスティル「・・・アトロポジカの双子か。」


エリスさん「邪・・王・・・、」


 そう発したエリスさんの顔色は一変し、

 苦虫を噛んだ様な苦しい表情になります。


 金髪の姉、アリスのその背後にいるのは、

 銀髪の妹、フェノ。


 二人で一つの名を持つ、姉妹の六極神です。


 邪王は、六極の神々の中で、

 最も邪悪な存在です。


 『邪王アトロポジカ』の名で、

 他の六極の神々から畏怖されています。


 剣聖アレスティルは、

 エリスさんと銀髪の少年を守るようにして、

 双子の姉妹の前に立ちはだかります。


剣聖アレスティル「・・・ここは、分が悪いか。」


 単純に数の差で、剣聖アレスティルは劣勢です。

 アリスとフェノの双子の姉妹は、

 共に、アレスティルに並ぶ実力を備えているのです。


邪王アリス「これは、高潔なる剣聖さまではありませんか。


      久しく挨拶もせず、ただ争いに興じていた、

      この無礼な私どもの非礼を、お許し頂ければ、

      嬉しく存じますワ。」


 金髪の姉アリスは、

 とてつもなく底の深い悪意を、周囲に漂わせています。


 周りの者たち全ては、

 この圧倒的なまでの邪神なる存在に、

 身動き一つ取れないでいます。


 声の一つでも上げれば、

 瞬時にその者を跡形なく消し去る、

 邪悪なオーラが、

 耳鳴りがしそうなほどに、

 この夕焼け色に染まる平原を、静寂にさせるのです。


 銀髪の少年の腕の中で、

 ついには意識を失うエリスさん。


 戦天使能力のこれ以上の行使は、

 エリスさんの命にまで危険が及びます。


 彼女のその意識を奪ったのは、

 剣聖アレスティルです。


 少年はその澄んだ紫の美しい両眼に、

 再び、強い決意を宿すと、


 緑の髪の天使さまの、

 意思を裏切ると知りながら、

 他の兵士に彼女の身を任せ、


 剣聖アレスティルを脇に、

 悠然と刀身に紅を宿し、この大地に突き立つ、

 聖剣オメガ・レプカを抜きます。


邪王アリス「ウフフッ・・・、


      そのオメガ・レプカを抜けるという事は、

      紛れもなく、

      エクサーに選ばれし戦士の証。


      ・・・わざわざ、

      こんな辺境の地まで出向いたのも、

      無駄にならなくって、嬉しくってよ。」


 邪王アリスは、

 そのか細い銀髪の少年の身体を、

 舐める様な視線で見ると、

 恍惚とした表情でこう続けます。


邪王アリス「貴方のその白き肢体を愛でる事を想像すると、

      やはりどうしても、

      アレスティル様には、引いて頂きたく思います。


      どうでしょう、

      ワタクシの抱える魔神級の戦士を、

      数名ほど献上いたしますので、

      ここは、アレスティル様の好意に甘えたく思いますの。」


 それは六極の神にとって、

 願ってもない、破格の条件でした。


 魔神と言えば、六極の神々の側近で、

 その地位に、最も近い戦士たちです。


 剣聖アレスティルは、

 その誘惑に、眉一つ動かす、

 その剣先をただ、姉のアリスに向けています。


 アレスティルは、

 邪王アリスの漂わせるやたら甘く、

 毒々しい負のオーラを、

 その聖なる剣威で中和しています。


 もし、この剣聖アレスティルがいなければ、

 邪王の発するオーラに飲まれ、

 城塞都市の市民ごと、その生命力の全てを、

 甘美な感覚と共に、枯らされ朽ちていた事でしょう。


 六極の神々の地位では、

 邪王の上位にある、剣聖アレスティルとはいえ、

 アレスティルが止められる邪王は、

 せいぜい双子のどちらかです。


 単身乗り込んできたアレスティルにとって、

 それは致命的なミスと言えたのです。


 今は静かに沈黙している、

 もう一人の双子の邪王が動けば、

 剣聖アレスティルは、数の上で単純に不利です。


 アレスティルは、一対一ならば、

 戦いを有利に進めるだけの力を備えていますが、


 その片方を退ける間に、

 もう一方の邪王によって、

 城塞都市ごと根こそぎ、周囲の大地の全ては、

 命の存在しない土地へと、

 平らげられてしまうでしょう。


 故に、銀髪の少年剣士は、

 二対二の状況を生み出す為に、

 その手に聖剣を握ったのです。


邪王アリス「あらあら、勇敢な事ですこと。


      ウフフッ・・・、

      その無知で無垢なところも、

      遊び甲斐があって嬉しく思いますワ。


      アレスティル様が、

      ワタクシの提案をお嫌だとおっしゃるならば、

      少し、強引な手段をとらなくては、

      なりませんが。


      ワタクシ、『強引』や『奪う』という言葉に、

      少し敏感なのかしら。


      フフッ、

      もう、お返事など待たずとも、

      良いような気が致してなりませんワ。」


剣聖アレスティル「・・・。」


 姉のアリスの意に従うように、

 もう一人双子の方が、

 その腰に帯びた細身の剣に、手をかけました。


邪王アリス「では、参りましょうか、フェノさん。


      ワタクシ、このゾクゾクとした気持ちを、

      もう、抑える自信がございませんの。」


 もう一人の邪王、

 銀髪の乙女フェノが、

 アレスティルと姉のアリスの間に、

 割って入ります。


邪王アリス「では、フェノさん、

      アレスティル様は、お任せしましてよ。
      

      おいでなさい、

      勇敢で無知で、可憐なる勇者さん。

     
      この身の全てをかけて、

      優しく愛でて差し上げますワ、
      

      ウフフフフッ・・・。」


 こうして、

 地上では初となる、

 六極の神々の戦いが、

 今、始まろうとしていました。



            そのVに続きます。

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