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外伝 「迷える年頃なエリスさん。」

2016年03月19日 18時41分56秒 | ためぞうの冒険・外伝(仮+試しなど。)
 深いエメラルドの美しい髪を持つ、

 ナイスバディな、美人OL、

 エリスおねーさん。


 独身、23才

 そのまま、いない歴。


 まだまだ鮮度は、ピチピチです。

 
 仲間たちからは、いつも姐御扱いされてますが、

 なかなかどうして、

 セーラー服とかコスプレしても、

 まったく違和感なしの若々しさです。


 ・・・きっと若さは永遠とでも、勘違いをなさっているのでしょう。


 お肌の曲がり角は、

 ヘアピンカーブを描くようにやって来るというのに・・・。


エリスねーさん「そんな勘違い、してねーよッ!

        ・・・甘い恋とか、
        ちゃんと妄想してるって。

        んんっ、言ってて恥ずかしいな。」


 ある春先の寒い夜。


 今宵も、エリスねーさんは、

 愛するマイこたつの中に、

 まるで首を出した亀のように、深くもぐり込んでいます。


 せっかく天から授かった、その美貌もむなしく、

 浮いた話の一つもなく、

 今の今まで、

 だらだらとコタツで、長い時を無駄にしてきました。


エリスねーさん「べ、別にいいだろうょ。

        寒い夜なんだから、ゆっくりさせてくれよぅ。」


  - おおっと!! 危険なワナが発動した。 -



 エリスねーさんは、

 我が家のほかほかマイこたつの中から、

 見知らぬ地へと、ワープしたのでした。


エリスねーさん「うぉぅ!?」


 波乱に満ちた世紀末をなんとか乗り越え、

 時ははや、新世紀21。

 情報世界の先駆けとして、

 スマートフォンが世を席巻する、通信会社の三国時代。


 危険な誘惑や、ワナがあちらこちらと、

 ちらほら顔を出す、まさにサバイバルな近年。


 21世紀生まれさんも、もう立派なJKさんですね。

 いつの時代も、お父さんは娘が心配なものです。


エリスねーさん「女子高生じゃなくて、悪かったねっ!」


 いえいえ、OLさんの需要もなかなかなものですよっ。

 スキルのある女性は、素晴しいものです。


 エリスさんは、免疫少なそうなんで、

 ワナ避けスキルはお持ちではなかったようですね。

 残念です・・・。


エリスねーさん「ば、バカにすんなー!


 ・・・確かにその通りなんだが、

 そこら辺のチャンスは、もうちょっとくれよぅ。」

 
 ワナ避けとして、有り難い効果を持つ、

 弟分のためぞう君の姿を、

 最近は、あまり見かけないようになりました。


 そのせいか、

 コロッとワナに落ちていく、

 エリスねーさんでした。


エリスねーさん「た、ためぞ~~ぅ!

        早くお使いから帰ってきて~ぇ!!」


 そんなソウルな叫びも届く事はなく、

 
   ブォォォォォーーンッ!


 というワープ音の中に、

 消えていくエリスねーさんでした。


 こたつのテーブルの上に、無造作にポイッと置かれている、

 ためぞう君のトランシーバーとか、

 とっさに握っとけば、よかったですネッ!


エリスねーさん「アドバイス、遅っせえよッ!!」



 ・・・それは、古の時代。


    タタタ、ターランッ♪ ターランラン♪


エリスねーさん「な、なんだ!?」


 鉄という技術を手にした人類は、

 その塊をつるぎや、槍へと作り変え、

 群れを成し襲い来るモンスターや、

 人間同士のささやかな領地争いに、

 明け暮れる日々を送っていました。


 妖異(ギーガ)と呼ばれる外敵に、

 生存圏をじりじりと削られながらも、

 共に手を取り合い、それに抗う事もせず、

 我が身可愛さに、同胞を盾とし、

 その種を繋いでいたのでした。


エリスねーさん「オ、オープニングでも始まったのか!?


 てか、どんな時代に飛ばしてんだよ、コラッ!」


 エリスねーさんは、ワープしたばかりで、

 よろよろしてます。


 一度、戦闘不能になって、回復したばかりの状態のようですね。


エリスねーさん「や、やべーよぉ!

        た、ためぞう、助けてくれよォ!!」


 純白な絹地のウエディングドレスをその身に纏い、

 強烈な二日酔いから復活したような、

 青ざめた表情のエリスねーさんは、

 芝の上に敷かれた、白のクロスの上に、

 美しい姿で寝かされています。


 おとぎ話ですか?


エリスねーさん「わたしに聞くなよッ、

 あたたっ、身体が動かねー・・・。」


 実は、春のブライダル特集にモデルとして登場する予定を、

 明日に控えたエリスねーさんでした。


 独り身に染みる冬のような寒さに、

 ふらふらと、こたつの温もりに誘われ、

 いつもの赤いジャージに着替えるのを忘れていたようですねっ。


エリスねーさん「ありえねーだろ!!


        貸衣装着たまま、こたつに潜り込むほどの、

        うっかりさん設定なのか、わたしは!?」


 とっても高額なこの衣装に、シミでも付けては、

 エリスさんのこよなく愛する、ナナハンのカスタムバイクは、

 その弁償として、消え去ることになるかもしれません。


エリスねーさん「お、恐ろしい事をさらっと言うなーッ!」


 動かなければ、汚れることもありませんので、

 安心してくださいね。


 周囲では、守る城塞都市側の兵士と、

 侵攻する軍勢の激しい攻防戦が繰り広げられていますが、

 運よく、かやの外といった感じなので。


エリスねーさん「何だよ、そんなデンジャラスゾーンで、

        戦闘不能っぽいってよッ!


        すんげー、あぶねーじゃんよ。」


 おやまあ、美人度アピールでござるか~?


 そりゃ、そんなドレス着て寝っ転がってるからって、

 真っ先に、狙われそうって意味でしょうか。

 実際、端から見たら眠れる美女感バリバリですが。


エリスねーさん「そこまで自意識過剰じゃないってw

        てか、ナレーションぽく語ってるヤツ誰だよ!?


        出て来いよッ、こらっ!!」


 ・・・出ちゃっても、いいですか?



 ◇ エリスねーさんに選択肢でぇす!


  → ・ ホイホイ付いてきたっぽい、謎なヤツを引っ張り出す。


    ・ うかつに出すと余計にややこしくなりそうだから、放置。


    ・ もう少し様子を見て、ヒロイン気分に浸っておく。



エリスねーさん「放置だよ、


        ・・・きっとロクなことにはならないから。」


 おお、放置プレイですね。

 では、先に話を進めちゃいますー。


エリスねーさん「ちゃっちゃと、頼むョ・・・。」


 ぶっちゃけた話、

 ガチでエリスさん、狙われてますよっ。


 良かったですね、ホントに今回はヒロインでした。


 どちら側の兵士さんたちも、

 煌く羽を舞い散らしながら降りてきた、

 エリスさんの姿を見て、


 城塞攻防戦から、エリスさん争奪戦へと、

 目的が変わっちゃってます。


 戦利品には手を出すな、の暗黙のルールで無事なだけなので、

 劣勢になった方が、無理やり来ちゃうかもしれません。

 決着、着いちゃった時も、

 それはそれで、めんどくさい事になりそうです。


 舞い散る羽の演出は、こちらでやっておきましたので、

 経費などはお気になさらないで下さいネ。


エリスねーさん「ま、マジなのか・・・。


        いや、ちょっとまて、

        そりゃ独り身が寂しいからって、

        いくらなんでも、それかよッ!


        選ぶチャンスくらいは、下さい・・・。」


 あらあら、もしかして、

 久々のヒロイン抜擢に、照れちゃってますか?


 そうですね、

 そこにある、手鏡でも見てはいかがでしょう。

 せっかく、準備してるんだから、使ってくださいよ。


エリスねーさん「あ、ホントにある。」


 エリスねーさんは、その理不尽な脱力に抗いながら、

 何とか鏡を手にします。


エリスねーさん「んっ・・・、


        なっ!

        ちょっとまて、なんじゃこりゃ!?」


 手鏡の向こう側にいるねーさんは、

 とても若々しく、

 まさに純真無垢な、可憐な乙女さんになってます。


 年頃は、15~6才のピチピチな感じで、

 まさにマジカルな感じで、変貌を遂げておりました。


エリスねーさん「おお・・・、

        近頃のアンチエイジングって、

        マジ、ハンパねえのな。」


 そんなレベルを遥かに超ちゃって、

  『あの日の君』 にまで戻っています。


 まさに奇跡です。

 いい仕事をしたと自負しております。



  ◇ エリスねーさんが、おねーさんではなくなった!


      キララ、キラ、キラ、キラァァーーン♪


  エリスさん「・・・。

        それでいいのか、


        浮かれてる場合か、私。」


 第三次・ルクミラン城塞都市戦、

 と後に呼ばれるこの戦い。


 なだらかな平原に築かれた、

 堅牢な石造りの城壁を覆い尽くさんと、

 南方の都市国家連合の軍3万5千が、

 守備軍8千に対して、

 完全包囲を敷いています。


 この時代では、かなり大規模な戦いです。

 衝突する歩兵隊同士は、激しく火花を散らし、

 打ち鳴らす高い金属音が、周囲を緊張させます。


 攻めあぐむ歩兵たちに、

 前列へと移動する、千騎を超える騎馬隊。

 その蹄は、大地を揺らし、

 城塞の手前、敵側の弓隊の射程前で、隊列の槍先を揃えます。

 一方の守備側の兵士は、一斉に槍衾(やりぶすま)で迎え討つ構えです。

 
 こうして、僅かな沈黙が流れます。


 騎馬隊の突撃告げる角笛が、総攻撃の合図となるのです。


 エリスさんは、

 この空気感に覚えがありました。


 そう、そこは間違いなく、

 彼女が生まれ育った蒼の星、

 エグラートの大地でした。


 始まりの大地、エグラート大陸。

 かつては、遥か南方までをその領土とし、

 数々の英雄や、戦士たちを輩出してきた、

 この星、最大の大陸です。


エリスさん「ファールスの月が無い!?


      どういうことだ、

      ・・・フォーリナの存在すら感じないぞ。」


 エリスさんは、困惑しているようです。


 それも、そのハズ、

 本来なら、この強い日差しの照りつける日中にあっても、

 この星の月であるフォーリナは、

 青白く見えているはずなのです。


 エリスさんは、その理由を悟ると、

 背筋に寒気が走ります。


エリスさん「六極神の戦いがまだ続いている世界なのかッ!


      まずいぞ、このまま争いなんてむやみ続けてたら、

      ヤツらに付け入る隙を与える!!」


 愛すべきこの大地はまだ、

 フォーリナの三神の加護を受けていない、

 無防備な世界だと、

 その三神に『ジラ』という神の名で連なるエリスさんは、

 置かれた場所が、いかに危険であるかということを、

 思い知るに至るのです。


エリスさん「南方、ルクミランといえば、

      過去に、無益な争いで、

      おろかな厄災を招いた都市の名だ。


      これがその・・・、

      私がエグラートの大地に抱かれる前に起きた、

      星の半分を失うキッカケとなった戦いなのか。」



 それは、エリスさんがこの地に生を受ける、遥か以前のお話です。
 

 現在のエグラート大陸を中心とする数多の国家や勢力は、


 雷帝セバリオスを筆頭とする、

 フォーリナの神々と、

 魔王ディナスの支配するファールスの月による、

 強力な二重構造のシールドで、星の表面が覆われ、

 妖異に対する一定の加護を得ています。


 ですが、その加護を受けていないとなれば、

 とてつもない脅威に、常にさらされ続けている、

 滅びと、淘汰を繰り返す、

 混沌の時代という事です。


 何故なら、妖異とされるギーガに対抗する事の出来得る、

 『戦士』が、ほんの僅かしか存在していないのです。


 エリスさんの予感通りに、

 都市国家連合の本隊の方から、

 悲鳴が残響となって響き渡ります。

 最悪の展開に、突入したようです。


エリスさん「・・・ギーガの進入を許したか。


      戦力の問題じゃない、問題なのは質の方だ。

      このままだと、瞬く間に都市ごと闇に呑まれるだろう。」


 そう言うエリスさんは、

 自由の利かない身体で、その身を起こし、

 落ちていた鉄のつるぎを握りしめます。


エリスさん「!? 私の戦士能力が遥かに落ち込んでいる。


      まさか、戦闘経験までもが巻き戻されているのかっ!!」


 つるぎを杖に、膝を折るエリスさん。

 星の引力がその身体にはまだ、ずしりと重い様子です。


エリスさん「甘えてるんじゃねーぞ!!

      ここには、

      私しか、戦士がいないんだ。


      私が、戦うしかない。」


 そんなエリスさんの前に、

 一人の少年剣士が現れます。


 光線の輝き次第で、その色彩を無限に変化させるような、

 美しく無垢な、銀髪を持つ少年。

 その背丈は、エリスさんにはやや及ばないが、

 端正な顔立ちに、白磁のように澄んだ肌。


 軽装の鎧をその身に着け、立ち上がるのを制止するように、

 少年は、凛々しい姿で、エリスさんにこう告げるのです。


銀髪の少年「天使様は、この僕がお守りします。

      だから、まだゆっくりとその羽を休めていて下さい。」


 強い意思に溢れる少年の、その美しい紫の宝石の様な眼差しは、

 エリスさんを静止するには、十分でした。


エリスさん(・・・。


      こほん。

      べ、別に、いいなぁとか思ってないからね。


      というか、大丈夫なのかこの展開は!)


 エリスさんは、英雄誕生の目撃者になったような気持ちになります。


エリスさん(これ、やべーよッ!


      英雄っていゆうか、まんま勇者誕生じゃないか。

      ためぞうのエンディングが、

      この私をキッカケに始まってしまっちゃうよぉ~~!


      やばいよー、マジやばいって!!)


 でも、天使様とか慕われちゃってるのに、

 謎の少年君の足引っ張って、

 活躍の邪魔しちゃうのは、いかがなものなんでしょうね?


エリスさん「なんて試練もって来るんだよ、もうっ!」


 ちょっとすねた様な顔も、可愛らしいエリスさんでした。


エリスさん「だから、やめろって!」


                その2に続きます。

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