青い空を白い雲がかけてゆく。──秋到来。
あたしは軽くエナメルの靴を鳴らす。そしてあわてる。誰もみてなかったよね。
そう、ものほしげな心はさよなら。あたしはあるがままのあたしでいい。揺れるコスモスは美しく、秋風はすずやかにあたしに優しい。感謝。
──世界って、こんなに美しかったんだ。生まれ変わったあたし、どうぞよろしく。心の中でお辞儀。さぁ、家に帰ろう。ささやかだけど、しあわせな食卓。
「ちょちょちょちょちょ、恵子!」
「…なに、おかあさん。ただいま。」
「たからくじ三等当たったのよぅ!百万円よ百万円!最新の携帯かったげるわよう、欲しかったんでしょ!?」
──
「おにいちゃんおかえり。──どしたの、笑い顔がちょっと不自然よ。」
「おい…恵子俺どうしよう、あまり有名ってほどじゃないんだけどさ、すんごい美人のグラビアアイドルとつきあうことになっちゃったんだ!うは~ぁクテクテ~」
──
「ただいま。どうしたんだ不機嫌な顔して。おい父さんな、今日10億の商談まとめてきたんだよ!かあさんにはまだナイショだぞ、夕飯にびっくりさせちゃおな!」
──
あたしは、あたしだ。マイペース、マイペース。一歩、そして一歩。その歩みが道となる。ちいさな虫にもいのち。 コトン
何かが下駄箱から落ちた。ラブレター!
──
読んでは、みよう。
”ひとめあった其の日から 心惹かれております。どうか、男としてのわたくしと お付き合い願えないでしょうか
悠仁”
気づくと、あたしはベッドの上だった。
なあんだ。そうよね。そして傍らに心配そうにあたしをのぞきこむ男の子の顔を見てまた気絶した。