ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

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司法官、怒る・・・サルコジを許さないぞ! 公判もストップだ!

2011-02-10 21:21:38 | 社会
21世紀の今日でも組合が強く、ストだ、デモだと、その活動も活発なフランス。労働者天国とでも言えそうなこの国でも、司法当局の組合には、さすがにスト権はないそうですが、その法曹界で今、多くの検事・裁判官も参加した、公判の停止という抗議行動が行われています。抗議する相手は、騒ぎが起こればいつもその中心にいる、サルコジ大統領。司法官(検察官と裁判官)たちはどんな経緯で大統領に怒っているのでしょうか。7日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

2月7日、この日はフランス法曹界において歴史的な一日となった。数百人の司法官たちが集まり、サルコジ大統領への怒りを表明するとともに、15か所ほどの裁判所での公判を延期することを決めた。長年に及ぶ大統領と法曹界との緊張関係がピークに達したわけで、その抗議活動はかつてない広がりを見せている。

法曹界の反乱、その背景は・・・18歳の女性、レティシア(Laëtitia Perrais)が性犯罪者に殺された事件に関し、法曹界にもその責任の一端があるとサルコジ大統領が批判したことだ。(事件の現場は、ポルニック(Pornic)というナントに近い人口15,000人ほどの町。容疑者は、トニー・メイヨン(Tony Meilhon)という31歳の男性で、16歳でクルマの盗難で捕まって以来、強姦、傷害などで13回も有罪判決を受けている常習犯。昨年2月に出所したばかり。1年もしないうちに、強姦致死という犯罪を起こしたようです。)

大統領は、常習犯の出所後の足取りをきちんとフォローしていなかった警察と司法に重大な責任があると糾弾。その批判に対し、法曹界が怒りの声を上げた訳だが、フィヨン首相(François Fillon)が7日の午後、メルシエ法相(Michel Mercier)とオルトフー内相(Brice Hortefeux)を首相官邸(Matignon)に呼んで協議を行ったほどその影響は大きなものになっている。フィヨン首相は、司法官たちの対応を過剰反応だとし、責任ある行動を呼びかけた。

レティシア事件を管轄するナントの裁判所は、大統領の批判を聞くや否や、すべての公判をストップ。16か所の裁判所が同調して、その運動の輪に加わった。最大規模の司法官組合連合(l’Union syndicale des magistrats:USM)は、全国で抗議運動を行う10日までフランス中ですべての公判を中断するよう訴え、また左派の司法官組合(le Syndicat de la magistrature:SM)は10日以降、職を遂行することを中断するよう呼びかけている。

7日、今後の活動方針を決めるため40か所ほどの裁判所で職員集会が開かれたが、いくつかの裁判所では逆に活動が後退した。しかし、11日までに100ほどの裁判所で集会が行われることになっている。まさに前例のない事態になっている。

破棄院(la Cour de cassation:日本の最高裁)の著名な司法官までが、参加しようとしている。4日には、ふたつの組合が、ラマンダ破棄院長官(Vincent Lamanda)に緊急協議会を開催するよう依頼した。司法当局者によると、裁判官、検察官ともに、長官への手紙の中で、司法官や司法官僚への最近の攻撃に対して法曹界全体で立ち上がり、抗議活動に加わることを要請した。

メルシエ法相は、サルコジ大統領は司法官全体を批判しているのではないと述べ、抗議活動を鎮静化しようとしているが、司法官たちはもううんざりしている。国民の関心を呼ぶ社会的事件が起きると、対応に厳しさが足りないと司法官を非難することで責任を転嫁しようとするのが大統領の常だからだ。

司法官たちは、法曹界へ配分される予算が少なく、人員も削減されており、しかも司法の自治への侵害があることを非難している。実際、住民一人当たりの司法予算はヨーロッパ内で最も少ない国のひとつになっている。メイヨン容疑者に関しても、司法当局には落ち度がないと主張する。メイヨン容疑者は司法官が勝手に出所させた訳ではなく、刑期をしっかり終えて出所したのであり、出所後の追跡ができていなかったのは、人員不足が原因で、ナントの裁判所には刑の適用を監督する判事は3人しかおらず、3,300人の元受刑者のその後を17人の保護観察官で追跡しているのが現状だ。

7日、テロリスト担当の予審判事であり、予審判事協会(l’Association française des magistrats instructeurs:AFMI)の会長でもあるトレヴィディック氏(Marc Trévidic)は、サルコジ大統領を次のように非難した。司法制度に対する大統領の批判には政治的策略があり、そうした批判は憲法に定められた大統領の役割を逸脱しており、その司法政策は詭弁に満ちたものになっている、と。

トレヴィディック氏は、ラジオ局の取材に答えて、サルコジ大統領は司法に十分な予算を配分することなく、次々と新しい法律を制定している。そこには長期的視点に立った政策はなく、国民に向けた派手な自己顕示でしかない。今や彼に十分な刑罰を与えるタイミングだ、なにしろ常習犯には一層厳しく対処すべきなのだから、と皮肉を交えて批判を展開している。さらに、司法活動を立派に行うのに十分な予算が保障されないのは以前からであり、なにもサルコジ大統領が始めた訳ではない。しかし、以前との違いは、すべて司法の責任にすることだ。こう続けている。

・・・ということで、公判の停止という抗議活動を行っているフランスの司法。9日夜のFrance2のニュースによると、公判・審議のストップは195ある裁判所のうち170か所にまで拡大しているそうです。

相手が大統領であろうと、言うべきことは言う、戦う時には戦う。しかも、連帯をする。自分だけいい子になろうと抜け駆けする人は非常に少ない。一方、日本では、階段を外されることが多い。おだてられ、先頭になって抗議を行うと、ふり返れば自分だけ。誰も付いて来ていないどころか、非難のまなざしが。そんなことがよくありますね。だから、おかしいと思っても、抗議したり、反対の意思表示をすることが少ない。せいぜい、陰で愚痴るのが関の山。あるいは、不満が嵩じて、一人、暴発してしまう。

これまた、彼我の差ですが、もちろんどちらが良いとか、正しいということではありません。それぞれの社会で、長い年月かけて形作られてきた生活の知恵。それぞれの社会で生まれた処世術です。ただし、さまざまなツールで、異なった社会を知ることができるようになった今日、もしちょっと変えたほうが良いのではと思えることがあれば、少しずつ変えて行った方がより幸せになれるのではないでしょうか。この点、日本はキャッチアップのうまい国。よその良い制度、良い方法はうまく取り入れたいものです。

しかし、誰が始めるかが、やはり問題だ!
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