ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

タバコの生産・販売・消費を禁止すべし・・・ジャック・アタリのご託宣。

2011-02-08 20:43:39 | 社会
先日、『国家債務危機』(“Tous ruinés dans dix ans ? Dette publique : la dernière chance”)の出版を機に来日、多くのメディアで紹介されたジャック・アタリ(Jacques Attali)。現代フランス、最高の知性の一人とも言われています。ミッテラン大統領の側近中の側近で、補佐官も務めました。欧州復興開発銀行の初代総裁、21世紀の新しいフランス国家像を検討する「アタリ委員会」(Commission Attali:正式名称は、Commission pour la libération de la croissance française)の委員長などの任にあたった経済学博士であるとともに、グルノーブル大学交響楽団の共同指揮者やオルセー美術館の理事になるなど、幅広い分野で活躍しています。

この知性の塊、その発言が今、ちょっとした物議を醸しています。タバコの生産も、販売も、購入も、禁止すべきだ・・・7日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

ニューヨークでは公園や浜辺をはじめ戸外の公共スペースでも喫煙が禁止され、ハンガリーのブダペストではバス停での喫煙も禁止され、違反者には185ユーロ(約20,500円)の罰金が科されるというヨーロッパで最も厳しい反喫煙法のひとつが施行された。そのタイミングで、ジャック・アタリがタバコの生産・販売・消費を禁止すべきだと発言。議論を呼んでいる。

ジャック・アタリによれば、タバコの生産から消費までの全面禁止により、当初は税収面でマイナスになるが、やがてプラスの影響が出てくるということだ。彼は自分のブログで次のように述べている。問題になっている薬のメディアトール(Médiator)以上に大きな問題、それはタバコだ(メディアトールは太り過ぎの人や、太り過ぎが原因の糖尿病患者に用いられた薬ですが、心臓や血圧に副作用を及ぼし、死に至る場合もあるとして多くの国々では1990年代後半に使用が禁止されました。しかしフランスでは2009年11月まで使用が認められており、その結果、500~2,000人が副作用で死亡したのではと言われています。しかも、その薬の製造元のオーナーがサルコジ大統領と近い関係にあるため、政界を巻き込んだスキャンダルになっています)。

ジャック・アタリ、続けて曰く。この明らかに有害で、世界中で毎日13億人が吸い、毎年エイズとマラリアによる死亡を合わせた数よりも多い500万人を死に至らせているタバコに、どうしてメディアトールに対するのと同じ厳しさで対処しようとしないのか。その寛容さ、意識のなさには唖然とするばかりだ。

だが、タバコが国家に収入をもたらすのも事実だ。2009年、100億ユーロ(約1兆1,200億円)の税と60億ユーロ(約6,700億円)の付加価値税を国庫にもたらした。

しかし、もはや、言を左右する時ではない。タバコの生産・販売・消費を禁止すべきだ。この禁止により、職を失う人が出ることや、税収の落ち込みがあること、しばらくブラック・マーケットが活性化してしまうことなどは理解しているが、それらはニコチン中毒を治すために必要な出費と考えるべきだ。

長期的に見れば、国民は生活の質を高め、より一層の長寿を享受できる。経済・財政も含めて、ポジティブな結果を得ることができるのだ。この禁止策について、2012年の大統領選挙の候補者たちがどう答えるのか、興味津々で見守ってゆきたい。

・・・ということなのですが、禁止したとしても、長期的には財政的に問題とならないのはなぜなのか。詳しくは紹介されていませんので分かりませんが、ジャック・アタリのことですから、それなりの数字と分析・予測に基づいて言っているのだと思います。タバコに関する税収と、喫煙・受動喫煙に起因する医療費などの社会保障費、その兼ね合いなのでしょうね。

ジャック・アタリのご託宣に従えば、タバコは全面禁止できる。後は、政治家の決断次第。やはり、最後は、政治家の判断になってしまいますね。薬のメディアトールに関するスキャンダルでも窺い知れるように、フランスでもロビー活動に弱い政治家が多い。どこまで一般国民の利益を第一に考えた施策を採用できるのか。政治家の人間性が問われるのでしょうね。日本でも、禁煙への動き、永田町では、どう考えているのでしょうか。

因みに、主要国の喫煙率は・・・(2007年、OECD)
(左:男)      (右:女)
01位 トルコ:51.1%     オーストリア:32.2%
02位 韓国:46.6%      ギリシャ:31.3%
03位 ギリシャ:46.0%    アイルランド:26.0%
04位 日本:41.3%      オランダ:26.0%
05位 オーストリア:40.7%  ハンガリー:24.6%

26位 アイスランド:21.3%  カナダ:15.5%
27位 カナダ:19.1%     アメリカ:14.9%
28位 アメリカ:19.1%    日本:12.4%
29位 オーストラリア:18.9% ポルトガル:9.0%
30位 スウェーデン:13.9%  韓国:4.5%

北米や北欧で喫煙率は低くなっており、ヨーロッパの他の国々で高くなっていますね。面白いのが、日本と韓国。男性の喫煙率はトップクラスですが、女性の喫煙者は少ない。女だてらに、タバコなんか吸って・・・という名残りなのでしょうね。紫煙の彼方に男女差別が見える。

因みにフランス人の喫煙率は、2002年のデータで、男性が約40%で、全体で34%程度と言われていますから、女性は28%程度なのだと思います。しかし、2007年2月から屋内の公共の場を禁煙にしましたから、その後はかなり減少しているものと思われます。

タバコの煙のないフランス映画なんて・・・という気もしますが、健康のためです。ぜひとも、禁煙へ。ジャック・アタリの提言に拍手です。
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