噛ませ犬のゲシュタルト

基本スタイルは、壁ハメ。

ラフ・メイカー

2007-03-28 11:49:59 | 
憂鬱な気分だった。
それも、ただ憂鬱なだけじゃない。
とんでもなく、憂鬱だった。

季節はもう春になろうとしているのに
オレには何も良い知らせなんかなかった。
むしろ、逆の知らせの方がよく来たというべきか。
一年前に田舎から上京してきて
東京の大学に入ろうと、この一年間必死に勉強してきた。
住居は、四畳半の狭くて息苦しいアパートに一人暮らし。
良い環境、とは言えなかったが
大学に入る事を考えたら少しも苦じゃなかった。
なのに

受ける大学という大学に
全て落ちた。

滑り止め程度に考えていた所にすら、かすらなかった。
この春から晴れて浪人決定。
そんな事実がオレを強く打ちのめしている真っ最中だった。
田舎にいる彼女には、試験の結果は逐一報告していた。
最後の大学に落ちた、という連絡をしてからというもの
彼女に電話がつながらなくなった。

生きていれば何か良い事がある、なんて
とんでもない大嘘だ。
じゃなきゃ、なんで今オレには
良い事が何もないのか。
もう、世界を呪いたい。
そんな気分だった。


部屋にずっといても気分が塞いでしまう。
そう思い、外に散歩に出る事にした。
外は桜が満開で
並木道には大勢の人が桜を見ながら散歩していた。
ひどく、
腹立たしい光景だった。
理由はなかった。
ただ、晴れやかな光景を見ているだけで妙に気が立ってしまう。
これじゃ、何の気晴らしにもならないじゃないか。

(続く)