Memorandums

知覚・認知心理学の研究と教育をめぐる凡庸な日々の覚書

心理学と進路指導 2

2005-02-06 | Education
承前

 進路指導の問題に限らないが、「好きなことを探しなさい」「自分の好きなことをやりなさい」「好きなことがみつからない」といった表現から考え始めてみたい。
 これらの表現はしばしば親や教師が無批判、無責任に使うように思われるし、一方そのような考え方の風潮に振り回された若者が迷いを深めてしまった状況を示しているようにみえる。しかしこれは「意思」決定における、過剰な「意思」への期待の結果ではないか思う。はじめから「好きなこと」がある、つまり「意識される」ことがそれほど普通の状態であろうか。
 進路選択の問題に限れば、選択の過程すなわち情報の収集やそのための人との出会いから、はじめて興味が生まれることもあろう。さらには、むしろ仕事をはじめてみるうちに、そのことに「好き」と感じる経験が付随するようになるのではないか。
 先の見えないことに不安を感じることは当然だが、そのことは先に(「好きだ」ということが)わかっていれば不安ないだろう、迷わないだろうという単純な論理に結びついてはいないだろうか。
 職業選択などの先の見えない複雑な課題では、むしろ常に不安や迷いはつきまとうはずであり、またはじめからそれらを解消する「好き」という前提は成り立たない。それにも関わらず、そのような前提を求めれば、混迷は深まるばかりであろう。
 先がみえないことに取り組み、身の回りの事実、経験の中から仕事や自己についての主観的評価を重ねていく作業が、実際の職業選択の「過程」であると考えたい。

以下,次回。

Reference
Hide's 2005,02,04
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