自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

今年のロウバイ(8)

2015-02-23 | ロウバイ

下向きに開いた花を見上げながら,中を覗いていくと,クモが一匹。ウロコアシナガグモです。一年ぶりに再会しました。といっても,同一個体ではないでしょうけど。そのときは,マンサクの花でキタオオブユを捕らえて食している最中でした。

ウロコアシナガグモはごくふつうに見られるクモです。緑がかった体色,金属光沢などが特徴として挙げられます。網を張って獲物を捕獲するほか,枝や花にいて直接獲物を捕らえることもあります。

この日は,ロウバイの花の中。そこにいて,獲物が来るのをじっと待っていました。結局,一日獲物を待ち続け,なに一つも捕らえることはできませんでした。 

 
いい匂いのする空間で,じっとしているだけでも心地よいでしょう。もっとも,クモの嗅覚にこの匂いがどんなふうに受けとめられているのか,それはわかりません。

 
じっとしているように見えますが,ときどきは脚の位置を変えたり,場所を変えたりしていました。


どこからやって来たのか,この木にどれほどのなかまがいるのか,そうした疑問に直接結び付く情報は今のところ得られていません。 

 


早春,マンサクの花と訪花昆虫(12)

2015-02-23 | マンサク

アカバナマンサクの花が開いて,そして花粉が葯からこぼれかけました。

そこをさっそく訪れたのがアカムシユスリカ。あまりに小さいので,余程注意深く観察しないと目にとまりません。 この虫から伝わる食餌行動は,他の昆虫とは図抜けています。とにかく,時間をかけて,執拗に餌にありついているといった感じなのです。目があちこちに移る落ち着きのなさなんて,微塵も感じられません。


たまには位置を変えながらも,やっぱり一つの花で食餌。そのうちに,からだには花粉が確実に付着します。 


このシマバエはこれまでに一度見ただけです。姿をどう言い表したらいいのでしょうか。 背がぽこんと丸まっています。複眼には縞模様がはっきり見えます。4,5mm程度の体長。ほんとうはからだを横から撮影したかったのですが,ついにその姿勢にはなってくれませんでした。


頭部を中心に,ずいぶん花粉が付いています。花粉まみれといったほうがよさそう。 

 
シマバエという程度しかわかりません。これ以上の同定作業は一時保留にしておきます。 

こんなわけで,アカバナマンサクの花からも目が離せません。 

 


早春,マンサクの花と訪花昆虫(11)

2015-02-22 | マンサク

この日は寒い日でした。それでも,風がほとんど感じられず,花に日の光が当たっていると,ツマグロキンバエがいました。はじめ,枯れ葉にとまっているので,どうするか見ていると,歩いて花に移動しました。そうして,そこで餌を舐めていました。 でも,ほんのしばらくだけ。

 

 
間もなく萼の上に移りました。静止した姿は堂々としたもの。からだには花粉がほとんど見られません。この時点では,餌には恵まれていないということでしょうか。

 


しばらくすると,また元の位置に戻ってきました。 

 


気温が低いので,まだまだ動きが鈍そう。マンサクの開花は長期間に及びます。このツマグロキンバエもたくさんの餌を口にできるでしょう。そのうちに,キンバエのなかまも増えてきます。こうして春が確実に近づいています。

 


今年のロウバイ(7)

2015-02-22 | ロウバイ

花を見ていると,黒いものが中で動いていました。よく見ると,どうやらハエのなかまです。レンズを向けると,どうやらタネバエのようです。 からだには花粉が付いています。とくに,背部分はオシベの葯に触れたようで,どっさり! まだ葯に触れている姿勢で,食餌に懸命の様子。

からだには剛毛がたくさん。すらっとした体型。とくに脚の長さが際立ちます。タネバエの一種としてくくっていってしまうと,間違いをしでかすことになるのかもしれません。しかし,この際,誤解を承知でそう呼ぶことにします。


しばらくして,花の外に出てきました。花粉の付いた位置から,ハエの行動がなんだかいい当てることができそうです。 

 
これで別の花に移動するのかなと思っていたら,また後戻りしました。この花がお気に入りなのでしょうか,食餌が続きました。

 
いつまでもいるわけにはいかず,結局わたしはその場を離れました。それにしても,タネバエの行動からは小さないのちが生き抜く執着心のようなものがジワーッと伝わってくるひとときでした。 

 


早春,マンサクの花と訪花昆虫(10)

2015-02-21 | マンサク

マンサクの花が開き始めてから一カ月が経過。今では木全体に花が付いて,満開状態です。こうなると,昆虫が目立ちます。目立つといっても,一匹一匹は数mm。とても小さいので,よくよく探していかないと目にとまりません。

目が慣れてくると,意外に見つけやすくなります。小さいので,外界を認識する力がそうすぐれているわけでもなさそうです。だって,割合平気に近づいても逃げる気配はありませんから。観察しやすいといえばそうです。しかし,小さい分,観察も撮影も苦労続きです。

花弁にとまっていたのが,このハエ。出現時期や格好から,ブチマルヒゲヤチバエのような気もしますが,タネバエかもです。今のところ不明です。 

 
葉の上で見つかったのが,下写真の小さなハエ。小さくて,スマートで,とても機敏そう。この体内に,いのちが脈づいているふしぎを感じます。

 


冬であっても活動のチャンスを窺っているハエ類はかなりの数にのぼります。 このふしぎもついつい感じてしまいます。 

 


今年のロウバイ(6)

2015-02-21 | ロウバイ

ハエのなかまは国内で3000種といわれていますから,これについての細かな同定作業は到底わたしにはできません。このことは以前にも書いたことなのですが,それほど自然は多様で豊かで,人間がその真実の姿を見届けるのは困難な話だということです。

金属光沢を放つ写真のハエにしても,キンバエのなかまか,イエバエのなかまか,その辺りでさえ不明瞭です。大きなキンバエの一回り,二周り小型のハエです。ロウバイの花では初めて観察しました。 


からだには,花粉がたっぷり。 

 
なんだか贅沢な食餌場所のような気がします。

訪れる昆虫の種類は思いのほか多いとはいえ,絶対数はごく限られています。寒い最中のことですから,成虫で動き回るのはどうみてもいのちあるものには不利な環境です。この環境に微妙に適応しながら,たくましく生きているのがハエです。活動する昆虫の絶対数が少ない上に,このハエですら体型は大きい部類に入るのですから,マアいってみれば“我が物顔”風ののびやかさで食餌をたのしんでいるのでしょう。

環境に適応するハエの生態は驚くべきものです。

 


ロウバイの花(後)

2015-02-20 | ロウバイ

2回目の今回は,花をさらにくわしく解剖してみようと思います。しかし,顕微鏡で覗くわけではないために,おのずと限界があります。

花が開きかけたときに,やや斜め上から写しました。オシベの葯から花粉がこぼれかけています。真ん中にあるのがメシベで,薄っすらとした複数の柱頭が見えます。オシベより短めなのですこしわかりづらいかと思います。すでに他の花から花粉が運ばれて来て受粉が完了していれば,タイミングはばっちりというところです。 

 

 
十分に成熟した花を覗いてみます。もう受粉が終わった段階です。オシベがメシベを取り囲んでいます。このときに,訪れた昆虫のからだに花粉が付き,他の花のメシベに届けられるのです。手前のオシベを取り除くと,メシベの形状がよくわかります。下は結構太り気味,先端の柱頭はぼやっとした感じです。

 
オシベをすべて取り去ると,メシベの先の様子がすこしわかってきます。なんだか広がっているようです。花粉を受け入れやすいようにできていると考えられます。

 

 
オシベの付いた状態で,メシベの中を見てみましょう。縦方向に切って,断面を観察します。すると,根元辺りの膨らんだ箇所(子房と呼ばれる赤ちゃん部屋)に胚珠(タネの赤ちゃん)が数個詰まっているのがわかります。それぞれの胚珠からは,棒状の組織“花柱”が柱頭に向かって伸び,束状になっています。複数の先端が寄り添ったこのかたちは,受粉時,花粉が付着しやすいのでしょう。 

 
花を解剖すると,昆虫と花との“切っても切れない関係”がより深く見えてきます。その目でロウバイを訪れる昆虫を観察すると,昆虫の生態がさらに興味深くなるように思います。 

 


早春,マンサクの花と訪花昆虫(9)

2015-02-20 | マンサク

ユスリカのなかまでしょう,小さいからだながら,じつにたくましい格好をした昆虫を見ました。口を見ると,なかなかのスゴサを感じさせます。オシベの葯はまだ弾けていなくて,花粉が見えません。ここには,餌がまだないようです。 


これはアカムシユスリカでしょう。餌を摂るのに集中しています。 


花粉がたくさん出ている花でも,同じアカムシユスリカがいました。からだを見ると,生活ぶりが見えてきそう。 


食餌が終わると,歩いて花弁の端まで行って,また引き返してきて。 


こんなふうに,探せば目に付く程に訪れているのがこのユスリカ。 当然,オスもメスもいるわけで,カップルが誕生する例もあります。運がよければ,それが目にとまるかもしれません。

 

 
こうした風景は,静かながら,いのちの躍動を感じさせてくれます。 

 


ロウバイの花(前)

2015-02-19 | ロウバイ

わたしが観察しているロウバイはソシンロウバイと呼ばれている品種です。まだ,花の中身をきちんと確認できていないので,この際記録しておこうと思います。

褐色をして外側を取り巻くように位置するのが萼(がく)。その内側では,花弁(花被片)が蕊をしっかり守っています。花弁が開き始めています。同時に,中心部のメシベを取り囲んでオシベが開き始めました。しかし,葯にはまだ花粉は見えません。中心にあるメシベを見ると,先(柱頭)が複数に分かれています。この形状によって,受粉確率が高まります。

 
基本的には,どんな植物も一つの花の中で受粉が完了してしまう“自家受粉”を避けようとします。それは,近親結婚を避けるしくみ。種としての多様性を将来に向けて残すのに,とても不利なためです。結局,オシベが開いているときは,メシベだけが「お先に」という具合に熟しているのです。これを雌性先熟と呼んでいます。

したがって,上写真では,メシベは花粉の受け入れ可能な状態,オシベは送粉の準備がまだできてない状態です。このとき,昆虫がロウバイの他の花(理想的には“他の株”!)から花粉を運んできて,受粉が行われます。これが受粉の第一ステップ。

その後,オシベがメシベを包み込むようにして密着します。と同時に,オシベ先にある葯からが吹きこぼれます。


さらに近寄って撮影しました。 


もっと近寄って撮影。花粉が外側に向かって,出ています。ここに昆虫が訪れたら,花粉がからだに付着して,別の花のメシベに運ばれていきます。 


以上の様子を横から見てみます。オシベがメシベを包んで……。

 
やがて,花粉が出てきて……。


もちろん,同一の花の中でオシベの花粉がメシベに付くことは十分考えられます。先に近親結婚を避ける巧妙なしくみについて説明しましたが,じつは,自家受粉によっても種子ができるのです。理由は,昆虫が訪れなかった場合を想定すれば理解できます。最悪の場合でも,同じ花の中で受粉が完結して種子をつくるという保険が掛けられていることによります。子孫を残すための最低保障。これが受粉の第二ステップ。

以上をまとめると次のようになります。「まずは,近親結婚を避ける受粉で。それでもダメなら,近親結婚を受け入れる受粉で」。ほんとうに,ロウバイは巧みな作戦を身に付けています。びっくりです。 

 


今年のロウバイ(5)

2015-02-18 | ロウバイ

大きなキンバエのなかまが訪れました。花の中に入り切れない程の大きさです。


後脚が花弁の縁に付いているのがわかります。

ロウバイの花に来た,そうした昆虫を写真に撮るのは一苦労です。ほとんどの花が枝から垂れ下がるように,地面方向に開いています。木がまだ小さいので,しゃがみながら真上を見上げる姿勢を保たなくてはなりません。なんと窮屈なこと! 

 


それでも,からだに付いた花粉を見て,「ほほーっ! これは,これは。苦労して観察した甲斐があったな」と,思わず「ほっ!」。  

 


別の花に別のキンバエがいました。なにやら賑やかな風景です。 

 


花から出ると,次の花に移って行きました。そこでも一心に,そして時間をかけて食餌をしていました。 

 
別の花に目を移すと,そこにもキンバエが。からだの花粉は目立ちません。というか,ほとんど付いていないので,活動はこれからという感じ。


頭をすっぽり花弁の内に入れて,餌を貪り食べている様子。メタリック色のからだが,日を浴びて輝いています。 


開催中の写真展を鑑賞してくださった方がおっしゃっていました。「ハエがこんなに美しいなんて,思ったことがありませんでした」と。これは,宿ったいのちを感じて自然に出てきた感想です。