自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ジャガイモ栽培物語《タネイモ編》(22)

2015-07-16 | ジャガイモ

夏を迎える前に種子をつくって枯れる植物は,夏の暑さを乗り越える戦略として種子をつくります。暑さが苦手だからです。逆に冬を迎える前に種子をつくる植物は,寒さを凌ぐ策として種子をつくります。寒さが苦手だからです。

暑さに強い植物は夏生き生きと成長を続けます。寒さに耐えられる植物は冬,それぞれの戦略で生き延びます。

ジャガイモはどうかといえば,原産地のアンデスの気候を思い浮かべると理解しやすいでしょう。冷涼な気候が好きで,暑さには弱いという性質をもっています。したがって,我が国の気候では,夏は出芽・発芽しません。

夏に出芽・発芽しない植物は一般的には休眠状態に入っているといえます。つまり,夏眠しているわけです。夏眠している種イモや種子は,夏の暑さが去り涼しくなることで季節の推移を感知します。同時に,イモ・種子の中でなにがしかの目覚めが始まります。まるで,薄っすらと目が覚めるごとく。ぼんやり,ほのかに目覚めるように。

しかし,もっと本格的な目覚めは,厳寒期を経て寒さが緩み,春の暖かさを感じかけたときに始まります。厳しい寒さこそが,完全覚醒の条件になります。体内時計のメカニズムによるものだといえば簡単に片づけられそうですが,そのメカニズムの巧妙さには驚き入ります。

これからわたしが試みたい観察実験は次の内容のものです。

真夏の今,種子を冷蔵庫に一定期間入れておき,それを蒔くのです。一気に低温を体験させることから,これを仮に“擬似冬季体験”と呼んでおきます。 一定期間としては最低10日間辺りを考えています。併せて,これとの発芽比較をするために,実験対照群として寒さ体験をさせない種子を蒔きます。そして,両者の発芽のしかたを比べるというものです。


わたしは,寒さ体験の期間が長いほど目覚める確率が高いと予想しています。それで,期間を10日,20日,30日,の3例で検証してみようと思います。

じつは,ここまで種子の発芽にこだわる理由は,北海道農業試験場からご教示をいただいた結果,低温経験をした種子,しなかった種子の両者を比較しないことには,発芽と低温体験の因果関係について論じることはできないとわかったからです。昨夏は,冷蔵庫に入れた種子を蒔いただけで,低温の効果があったように思い込んでいた節があります。その体験にもとづいて先頃,ジャガイモの種子の発芽について誌上で公表したのですが,今も気になる点が残り続けています。なんとか,これをすっきりさせておきたいという気持ちが強くあります。

この反省をふまえて,実験条件を整え再び発芽実験に挑むのです。

7月14日(火)。さあ,実験開始です。今夏取り出して乾燥させた種子の一部を紙袋に入れ,冷蔵庫の中に置きました。残った種子については,室内に置いています。