自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ある少年からの質問

2013-08-27 | 随想

15年ばかり前に,紙作りに関する一冊の児童書を書きました。それが縁で,今も全国の子どもから質問の手紙や電話をもらうことがあります。うまくいった感想や,逆にどうしたらうまくいくのかといった質問が届くのは,書き手としてとてもありがたいことです。

先日も,出版社を経由してそうした問い合わせがありました。内容は,「夏休みの自由研究,スイカの実で紙を作りましたが,透明にならないばかりか,でこぼこしたものになってしまいました。おまけに,乾かしているうちにカビが生えてきました。どうしたらいいの? おじさん,教えて」というもの。編集者に手短く回答したあと,「『もし必要なら直接電話をください』と伝えておいてください」と付け加えておいたら,しばらくして電話がかかってきました。この子は神奈川県の小学4年生Hさん。

スイカを材料にした紙作りについては,これまで何度か子らに伝授してどれもうまくいきました。それで,聞き出す内容ははっきりしています。

やりとりしているうちに,Hさんはことば遣いがきちんとしていて,ポイントを伝えることがとても上手だということがよくわかりました。結果,やりとりがとてもスムーズにいきました。たとえば,材料を分解するために入れる重曹の量について「粉石けんのカップ一杯分を入れて煮ました」と即答したのですから。それで,わたしから聞き出すことはきちんと聞き出せ,理解できたようで,わたしとしても伝えるべきことは時間をかけずに伝えられたように思いました。

Hさんの紙作り法は初歩的なミスが重なっていました。木枠にネットを置き,そこにスイカを流し込んでそのまま乾燥させておいたのです。それも1cmほどの厚みで。

スイカの実にある繊維はほんとうに弱いので,弱いアルカリで短時間で分解しなくてはなりません。重曹の分量を控えることをアドバイスし,板に載せた木枠の中に直接繊維を流し込むよう話しました。ただし,厚みは5mm程度にして。じつは,今の時期だとカビが生えて当たり前なのです。それですこしでも早く乾かす手を伝え,複数枚作ってみるように伝えました。

成功すればそれはうれしい体験に違いありません。失敗したときは悔しい思い出になるかもしれませんが,そこから学びとる経験知が残ります。次回に活かせばよいのです。もっとも,そんなふうに息長く構えられればの話です。H少年には,「成功・失敗にかかわらず,結果を知らせて!」と話しておきました。さて,どうなることでしょう。

 


クロアゲハの成長(13)

2013-08-27 | クロアゲハ

6月26日(水)午後5時。孵化後,ちょうど29日が経過。

飼育箱の底に横たえておくのは自然の理に叶っていないと思い,接着剤で篠竹の支柱に付けました。


 

7月12日(金)午後5時。孵化後,ちょうど45日が経過。蛹化から16日が経ちました。変化はありません。腹部に指を触れると動きます。

7月14日(日)。見ると,腹部をピクッと動かします。それも度々。これまでに感じなかった動きです。午後5時。孵化後,ちょうど47日が経過しました。

順調なら,色が大きく変わってくるはず。わたしはクロアゲハの羽化を観察したことがないので,とてもたのしみにしています。

7月22日(月)午後5時。孵化後,55日が経過。幼虫のからだに動きはまったくありません。色が少し変わってきました。緑系統の色合いが褪せ,腹部の節間が白っぽい色から黒に変化。

その後の話です。8月に入って,体色がはっきり黒っぽくなりました。それに硬いまま。というより,7月14日と比べはっきり硬化しています。「おかしいな,おかしいな」と思ってそのままにしていました。8月中旬のある日,たまたま「これは変だ」と思い触ると,腹部がパカッと折れました。なんと,中は空洞! すでに死に絶えていたのです。

あれほど羽化をたのしみにしていたのに,痛ましい結末を迎えました。長期観察が中途半端な結末になっただなんて!