ひだまりクリニック~産んだ後にも母親学級~

杉並区で小児科医がひらいている母子で集えるクラスです。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

予防接種がいやだな・・・という方へ

2015-01-28 00:50:59 | 医療情報

クリニックを始める前に医療講座を担当したとき、予防接種がテーマになることがありました。

予防接種が不安だという方の気持ちも考えつつ、医師として受けないことの危険を知るからこそ、

ちゃんと伝えないと、と一生懸命取り組んだものです。

でも、今、実際にクリニックをして、

大事なものです、同時接種効率よく接種しましょうというHPもありますから、

不安な方はいらっしゃらないんですね。

基本的に接種しようと思っている方、受けないことは危険であると理解している方がほとんどです。

納得できるようにご説明しようと思っていますが、最初に不安を口にする方はあまり見えません。

たぶん世間の一般の割合よりもかなり少ないと考えられます。

一方、やはり保健センターの健診などでは、そういう方が一定割合でいらっしゃるという現実が見えます。

乳児健診(4か月くらい)で、予防接種欄が真っ白という方は、最近はあまりいらっしゃいません。

でも、確実に一定の割合でいらっしゃいます。

(10年前は、乳児健診のときのBCGが初めての予防接種という時代でしたが)

予防接種について考えること、良いものかどうかを検討すること。

子どものことに関して熱心に考えるという姿勢は素晴らしいのですが、

判断の材料にしている情報に偏りはないでしょうか?

予防接種を子どもに受けさせないというのは、自分の病気の治療で医療拒否をするのと違うのです。

子どもの意志は、そこにはないからです。

 最近、予防接種に抵抗感があるというお母さんの疑問に答えてほしいという原稿依頼がありました。

自分にできるなら、また、少しでも考え方をシフトしてもらえることになるならと書きました。

ですが、どうも日の目を見ないようですので、ここにその文章を出すことにします。

予防接種は必要なものだと信じています。

せっかくのメリットは利用した方がいいです。

子どものいのちと健康に関わる病気を予防できるのは大きなメリットであるということを伝えたい、

そういう思いで書きました。

長いですが、興味のある方はお読みください。

 

①目まぐるしく変わる予防接種制度について
 
日本は20年ほども世界の情勢から取り残されていたのです。
新型インフルエンザの流行時、大騒ぎになったのをきっかけに予防接種は自前で用意できない国なんだとわかった人も多かったのです。
輸入に頼るしかなく、やっと手に入ったころには流行はおさまっていたという経験で、予防接種がどれほどおくれているか知られるようになりました。
その頃、ヒブ・肺炎球菌のワクチンは先進国では常識で、細菌性髄膜炎は過去の病気になってましたが、日本ではまだ承認されていなくて、年間1000人の子ども(そのうち半数以上は0歳未満)が発症し、そのうち5%が死亡20~25%が後遺症となっていました。
今、定期化されていますが、承認後数年は定期化されず、助成の地域格差があり大きな問題でした。
定期化に向けて一生懸命活動された方々は、子どもの細菌性髄膜炎を経験された方、治療したものの後遺症のあるお子さんのお父さんお母さん方だというのも事実です。予防接種が世界から遅れること20年…その間に細菌性髄膜炎で亡くなった日本の子どもは、何百人もいます。後遺症を残してしまった子はその4~5倍もいます。
活動されているお母さんが「日本の子でなかったらこの病気にはならなかった」と知ったときの苦しさはどれほどのものだったでしょうか。
ここ数年の、ヒブ肺炎球菌の定期化、不活化ポリオワクチンの承認と定期化、四種混合の承認と定期化、水ぼうそう二回接種定期化。
これは、国をあげてこれらの感染症の後遺症や死亡をなくしていこう、また基礎疾患のある人を、社会の接種率をあげることで守ろうという表れです。
目まぐるしい変化というのではなく、世界常識からの極端なおくれをやっと取り戻しただけなのです。
現に、進んでいる国では、四種混合どころか、六種混合の接種となり、被接種者の負担が軽くなっていってます。
 
②2か月から接種
 
赤ちゃんはお母さんの胎盤経由で抗体という免疫物質をもらって生まれています。
なので、生後半年までは風邪を引きにくいといわれています。
だんだんお母さんからのプレゼントである免疫がなくなり、自前のものを作るのですが、その免疫がなくなってしまう前に赤ちゃんがかかっては命に関わる病気の免疫をつけてあげたいから2か月なのです。
接種したときから赤ちゃんを守ってくれますから、接種可能になったらすぐにといわれるのです。
2か月になったらワクチンデビューということです。
ときどき、小さいので接種が不安だという意見も聞きますが、小さいからこそ早く接種してあげたいのです。
「もう少し大きくなってから」というのは、根拠もないことで、逆に無防備で危険な時期が長くなるだけなのです。
 
③同時接種
 
早く効率よく免疫をつけてあげるために同時接種は必要です。
進んだ国のように六種混合などがあると負担はかなり減りますが、いま日本では不可能なので(個人輸入しているクリニックではできます)同時接種はかなり大変に思うかもしれません。
ですが、単独接種ですと何回も通院することで保護者と赤ちゃんの負担が大きいこと、終了するまでに時間がかかってしまうことで免疫の獲得が遅れるというデメリットがあります。
私は、2か月でヒブと肺炎球菌の同時接種、希望者にはロタワクチンとB型肝炎のワクチンの任意接種も同時にしています。
やVPDの会http://www.know-vpd.jp/dl/schedule_age0.pdfが勧めるスケジュールです。
つまり、任意接種も受けると2か月で4種類・3か月で5種類・4か月で4種類・5か月で1種類ということになります。月例でするものは一回で接種、月に一回の通院ですませていけるので、スケジュールも簡単に作れます。
2か月の4種類を単独で接種すると4回通院7週間かかります。
3か月の5種類を単独で接種すると5回通院8週間かかります。
どんどんスケジュールがずれこみ、免疫が落ちてくるのに間に合わなくなってしまうのです。
私のクリニックでは8割くらいの方が任意接種も選び、ほぼすべての方が同時接種を希望されます。
 
③副反応
 
赤ちゃんの時期の予防接種の副反応は、よくあるものは肺炎球菌で、だいたい5人に1人くらいの割合で、翌日までに発熱します。早いと数時間で、長くても1日で下がる方がほとんどです。
熱だけで他に症状はなく機嫌もよく全身状態はよいというものです。
これは副反応ということではありますが、よく免疫がついたと考えてもいいもので、単独接種でも、同じことが同じ率で起こります。
同時接種をしたために熱が長くなったり高くなったりすることはありません。
 
ただ、予防接種のあとだけ風邪を引かない、病気にならないということはなく、赤ちゃんの接種がされる時期は突然死が起こることが多い時期と重なりますので、予防接種をした後に突然死にならないということはなく、同率で起こることが、たまたま予防接種の翌日だったために副反応と間違えてとらえられたりすることがあります。それを紛れ込み事故といいますが、そのことのために一時同時接種での見合わせがあった時期がありました。
けれど、それは統計学的に完全に否定されて、一か月後に同時接種は安全ですから同時接種を勧めましょうということになり、以前よりもずっと同時接種はすすんでいます。
同時接種をしないと、任意を含めるとスケジュールはとてもこなすだけでも大変になります。
また、予防接種後の日が多いほど、何か起こらないかな?と気をつかう日が多いということになり、精神的に大変ではないですか?
 
また、同時接種時どのワクチンが副反応の原因になっているかはわからなくていいのです。(局所の腫脹などは、接種部位を記録することが大事ですが)定期接種と任意接種を同時にすることによって、万が一の補償額が定期接種でされるということも同時接種のメリットだとされています。
(定期接種と任意接種では万が一のときの補償額は全く違います)
 
④メリットとデメリット
 
予防接種を受けるメリットとデメリット・受けないときのメリットとデメリットを比較すると、せっかくの現代医療の恩恵を拒否するのはあまりにももったいないと私は思います。
自然にかかって起こることと、ワクチンによって起こることを比べると、自然にかかることの方が、大きな取り返しのつかない出来事が起こり、程度も率もずっと高いのです。
 
医療は、自然に起こること病気や死に対して人為的に何かできないかということで自然発生的に起こってきましたし、先人のたゆまぬ努力と継承によって、今の医療があります。
予防接種は、人間が本来持つ免疫力をうまく利用しているとても良質の医療だと思います。
もちろん、予防接種による副反応はありますが、受けないでいるために起こってしまうことよりも、ずっと軽くすむように工夫されてきました。ワクチンそのものの工夫やスケジュールの工夫など、これからもよりよいものになっていくでしょう。
今予防接種がなくなったら、とても大変なことになります。
メリットは見えないのですが、麻疹が流行しなくなったのは予防接種のおかげです。
接種率が低くなると流行してもおかしくないのです。
今も先進国で宗教上などの理由で接種率が低い集団での流行はあるのです。
「予防接種を受けなくても私の子どもはかかりません、私はきちんと手当をして食養生も頑張っているから」とおっしゃる方に出会ったことがありますが、それは間違っています。
周りの人が接種してくれて、接種率が高く維持されているので流行にさらされないという理由で病気にならないでいるのです。
 
予防接種は、自己防衛(自分が病気にならない・軽く済ませることができる)と同時に、社会で予防する・流行を減らすという社会防衛にも大きな意味があります。社会防衛(みんなが免疫をもつこと)により、予防接種のできない年齢の子を守る、親が子どもに感染させない、予防接種ができない状態の人・あえて予防接種をしない人を守るということになります。
 
昔、予防接種がないとき、麻疹は20年に一回大流行しました。(という文書が残ってます)
流行後には「命定め」で生き残った人が接種率の高い社会にいました。年々免疫を持つ率が減って再び大流行があったのです。
流行と飢饉が重なった時は数人に一人亡くなったという記録もあります。
今の世界でも内戦状態などで衛生環境が悪かったり予防接種ができない地域では、しばしばVPD(予防接種で守れる病気)が流行して、多くの感染者がでて、死亡や後遺症も増えます。
 
予防接種の研修で100人ほどの小児科医が集まった時の話です。
「麻疹でお子さんをみとったことのある方は?」と司会者が挙手を求めました。
半数以上の小児科医が挙手しました。私は幸い経験がありません。
でも、その多さに私は驚きました。
と同時に、そうであろうとも思いました。麻疹の死亡を経験したことはないですが、とても重い病気だということは知っていますから。
予防接種など必要ないという考えをネットなどでまき散らしている人は無責任だと思いますし、不安な人々を煽って面白がっているのではないかと思うこともあります。
(でも、何かあっても決して責任はとりません。責任は接種しない親にあるでしょう)
必要ないという人は、重い状態の麻疹を診たという経験がある人でしょうか?
重い状態の治療をする人でしょうか?
重い状態の患者を診る立場の人は口々にいいます、予防接種をしてほしい、と。
亡くなった子どもを前に「どうして予防接種をしなかったのだろうか」と嘆き苦しむ保護者の姿を知っているからです。
 
ネットを不安な気持ちで検索するのは危険かもしれません。
どんどん不安な気持ちになってしまう場所を見てしまいます。ネットはそういうしくみにできてます。
上でご紹介したVPDの会は、正しい情報を伝えているので、お勧めです。
 
医師の利権が・・・などと言う意見もありますが、医師自身も受けない怖さを知ってますので、せっせとわが子に接種してます。自分にも接種してます。
 
⑤接種しないとどうなるか
 
自然罹患することになると、合併症にも、ある確率でかかります。
(おたふくかぜに自然になるとムンプス難聴といって1000人に1人の割合で治らない難聴になります)
重症化すると命に係わる病気もあります。
麻疹肺炎や麻疹脳炎、細菌性髄膜炎、百日咳や日本脳炎・・・
弱い子に感染させる可能性というのももちろんあります。
弱い子というのは、予防接種ができない子のことです。
悪性疾患・先天性免疫異常症・免疫抑制剤を内服している基礎疾患を持っている子などです。
また、ある一定の年齢にならないと接種できないというワクチンもあります。
 
自然にかかって免疫を得るということが自然でよいことである、と考えるのはそれぞれの自由でいいのかもしれませんが、それはあくまでもそう思っている保護者の考えです。
(また、多くの定期化されている病気に関しては、日本では今後は流行しなくなるでしょうから、自然にかかることは難しいかもしれません)
お子さんの立場では、現代を生きる子どもとして、当然すべての子どもが受ける権利のある医療のメリットを受けられていないということになります。
だから、厳しい先生からは「医療ネグレクト」という言葉すらでてくるのです。
宗教上の信条のために輸血をさせないで、いのちの危険になるというものが医療ネグレクトです。
「エホバの証人」が有名で、現在は子どもの命のために一時児童相談所が親権をはく奪して手術をすることになっています。
 
私は、予防接種を拒否するのはもったいないと考えています。
自分の判断で(可能性としては現実には低いですが0ではない)子どもが死亡したり後遺症が残ったり、ということになったら、どれほど苦しいか。
よく考えて、そして、すべてを引き受ける覚悟は最低必要ではないかと思います。
 
また、将来外国に留学、子ども時代でも親の転勤、ということになったら、入園入学時の予防接種の証明は必須で、定期接種時期がすぎていると、全額自費で、また期間が限られていると同時接種でということになるでしょう。
全く受けていないと数十万円になる例も聞きます。
また補償額も定期接種のときよりもかなり低いものになります。
 
医療不信が予防接種忌避の気持ちにはあるのでしょう。
でも、医療をすべて拒否するのはもったいない、またできることではないのではと思います。
「予防接種は毒である」と主張する人は、予防接種をしなかったために病気になった時に治療してくれますか?
それどころか、重くなったら病院へと言っていませんか?
 
予防接種のおかげで、ヒブによる髄膜炎はほとんどなくなりました。
ロタウイルス胃腸炎の入院も5分の1ほどに減っています。
 
私は、医療は納得が大事だと思います。
よく考えて納得できる答えを出してください。
もし、接種しない選択をされる場合は、何があっても自分の責任だと引き受ける覚悟と、周りの接種してくださる方々に感謝する気持ちを持っていただきたいと思います。

 みなさんは、新幹線・飛行機・地下鉄・車に乗りませんか?おそらく乗りません!という方はほとんどいないでしょう。先人たちの努力と工夫でより便利により安全になっている文明のメリットではないでしょうか?どれもが絶対の安全はないですが、普通にはほとんどリスクはない、そして、生活にないと本当に不便でしょう?当たり前のことになっていて、現在運航されているものを裏方で支えている専門家の人のことも見えていないです。

同じことが予防接種でも言えると思います。多くの人たちが、よりよいものをと努力してきた結果が今のワクチンです。まだまだ日本の予防接種には世界に追い付いていない問題点があります。でも、どんどんよいワクチンになり、どんどんよいスケジュールになっている。今の赤ちゃんは幸せだと思います。専門家を信用して、現代に当然のようにある恩恵を得るという点で、飛行機・電車・車を利用することと、予防接種を受けることは共通していることだと思います。

5年前の赤ちゃんよりも、細菌性髄膜炎格段になることは格段に減りました。ポリオの 麻痺 になることもありません。ヒブ髄膜炎はほとんど消えた病気になっています。

50年前の赤ちゃんに比べて、麻疹や風疹の脅威にさらされることもほとんどなくなりました。
先天性風疹症候群も減りました。
去年までの大流行は過去の風疹の定期接種の制度に問題があったために、成人の免疫が低いために起こりました。何年も先の赤ちゃんに影響が出ているのです。
 
受けたくないというのは、もったいない。
自然にという気持ちが強いのかもしれませんが、今の日本では全くの自然にこだわるのはむしろ不自然に思えます。
これは私の気持ちですが、実際に悲しいことが起こることをよくわかっているものの意見です。
医療と自然は両 立すると私は思っています。
お産が医療によって守られているために安全な自然分娩ができるのと一緒です。
現代の医療のメリットのいいとこどりをしてもらいたいなと思います。
 
 
長い文章、お疲れ様でした!
 

 

コメント   この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2月8日 小学生向けの患者塾... | トップ | 「復職前に知っておきたい子... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

医療情報」カテゴリの最新記事