雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載127)



韓国ドラマ「30だけど17です」(連載127)




「30だけど17です」第15話(音楽祭の舞台へ)③


☆主なキャスト&登場人物

○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)
★★★

  ウジンは仕事から帰宅する。迎えに出て来たトックの頭を撫でてやってから、ソリの部屋の前に立つ。
 ドアをノックしかけて思いとどまる。
「時間が遅いかな…」
 振り返るとトックが足元で座っている。
 ウジンはトックを抱いて自分の部屋に上がった。机の前に立つとソリからのコメントが貼りつけてある。メモ用紙を握った。


― 悩み事は―もうなくなりました。ですからもう心配いりません。心配していただきありがとうございます。


 コメント容姿を握ったままウジンは思案に落ちる。
「本当に大丈夫なのかな?」
 コメントに再び見入る。
「ん?」
 追伸があるのに気づいて用紙を裏返す。
「本当に大丈夫ですから」
 心理を読まれてウジンの口もとはほころんだ。


 気持ちの吹っ切れたソリの仕事ははかどった。仕事が手に付かなかった日中の分も見る見る取り返していった。
 ふと気が付くとドアの外にペンの気配がある。ソリはドアを開けた。
「ペン! 中に入りたいの? おいで」
 ペンを抱き上げた時、外の本棚の枠にメモ用紙が張り付けてあるのに気づく。手にして読んだ。


― 分かったよ。どんなことでも協力して応援するからね。


「最後の”フ”は何かしら?」
 メモ用紙を裏返す。
「ファイトの”フ”です」
 ソリも口もとをほころばせ、ペンに頬ずりした。
★★★


 赤の染色について意見を求められ、ウジンは言った。
「もう少し濃くてもいいよね。どう思う?」
 ソリを見た。
「よく分からないけど…」
 戸惑いながらソリは色の付いた部分を指さして意見を言った。
「染みた部分も雰囲気があります」
「なるほど」
 製作所の所長は頷いた。
「グラデーションでもいいな。どうです?」
「悪くないですね」
 ウジンも同調する。
「センスがあるな。そういえば舞台が滑ると騒いでた時、機転を利かして用意してくれたのもこの人だったな」
 ソリは嬉しそうに目を落とした。
「もしや、結婚されておられる?」
 所長はソリを気に入った表情で訊ねた。  
 ソリはびっくりした。
「とんでもない。結婚なんてまだですよ」
 両手を振って否定する。
 所長はすかさず言った。
「うちの息子も独身なんだ」
 所長の言葉にウジンはぎょっとした目を向ける。ソリたちは困惑で目を合わせる。
「ちょうどよかった」


 ソリたちの事情を知らない所長は仕事をあと回しで休憩を入れ、ソリを前に息子の売り込みを始めた。
「息子は韓方医だが、女性と会う暇がなくてね。かくかくしかじかで江南にマンションも持っている…」
 離れた場所で2人を眺めることになったウジンは所長の話にライバル心を燃やし、ぶつぶつ言った。
「マンションより住むには一戸建ての方が快適で暮らしやすい…」
 傍に立つ製作所のスタッフはウジンを見て怪訝そうにする。
 ウジンの焼きもちを知らない所長は構わず続ける。
「…背も高くて183㎝ある。写真を見せよう。わしに似ず男前なんだ」
 ポケットから携帯を取り出す。
 ウジンは対抗して肩を怒らせ、背筋をのばした。
「あ、いえ〜、私は別に…」
 困っているソリに気づかず、携帯を弄り回す。
「えっと〜、写真はどこだったっけ…どれどれ、早く出てこい」
 ソリは顔をそむけて小さな声でぼやく。
「写真は別に見せなくても」
「出てこないなあ…?」
 その時、所長の携帯が鳴った。
「誰だ? コンデザイナー?」
「どこに行ったんだ?」
 携帯を握って話すウジンの声が目の前でする。
「ああ、ここにいましたか?」
 ウジンは所長を見て語りかける。
 所長は目の前に立つウジンを見上げて言う。
「ずっとここにいたのになぜ電話を?」
「質問があって」
「何です?」
 少し間をおいてウジンは答える。
「なぜか忘れました」
「なら、思い出したらまた訊いて」
 そう言って所長はソリの方を向く。
「住んでるマンションは、話題の億ション近くの高級マンションでね…」
「しょ、所長!」
 ウジンは慌てて切り出す。
 所長は手を止めた。ソリとともにウジンを見た。
 よこからの口出しがはっきりし、さすがにウジンも「質問を思い出した」とは言えない。
 愛想笑いを浮かべて言った。
「コーヒーでもどうです」
「飲んだよ」
「そうですか…」
「今週、息子の韓方医院へぜひ…」
 所長はソリに向けて話の続きを開始した。
「しょ、しょ、所長!」  
 所長は口を開けてウジンを見た。
 ウジンは引かずに言った。
「今週はすごく忙しいんです」
 ソリもウジンの話を受けて切り出した。
「お話はありがたいのですが、お見合いするのはまだ早い気がします」
 ウジンはほっとしてスケールを取り出した。
「おしゃべりしてないで手伝って」
 目の前のテーブルの寸法を測りだす。
「ほら、こっちを持って」
 ソリは小さな声で訊ねる。
「どうしてこれを?」
 ウジンは測った寸法の方を口にする。
「1メートル35㎝」


 作業が一段落してペットボトルの飲み物を口にしてるウジンの傍を所長が通りかかって話しかけてきた。
「どうした? 喉がカラカラか?」
「…」
「そうだな、喉が渇いて当然だ」
「えっ?」
「長い付き合いだが、初めて君の心の内が見えたよ」
 そう言って背を帰した。
「いえ、み、見せてなんか…」
 所長は笑みを浮かべて立ち去った。


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