雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「病院船」から(連載183)

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  韓国ドラマ「病院船」から(連載183)




「病院船」第17話➡病院船の危機⑥


★★★


 ジェゴルも別の家を訪問した。
 するとそこにはPC医療のスタッフらが先に訪れていた。PC操作の指導が始まり、取材班も同道して撮影を行っていた。
「ここに…腕を入れて巻くだけです…ボタンを押して…」
 現場の状況にジェゴルは面食らった。
「何だ、これは…?」
 ノートブックを持たされたお年寄りらが順番待ち状態で座っている。そのうちの1人が看護師らしい若い女性にノートブックの扱いを学んでいたからだ。
「この場合はこれ、下のボタンを…」
「これ?」
「その隣です」
「これ?」
「いいえ、青いボタンです」
「無理だよ。早く出て」
 脇から指示が出る。指導員はカメラの視野からさっと逃れた。
「何だ?」
 その光景にジェゴルは呆れた。
「まったく…」
 指導員が引き下がったとたん、お年寄りのおばさんはノートブックの使い方が分からなくなっている。
「どれを押すんだっけ…? これ?」
 あれこれ迷って何かボタンを押すと周囲からいっせいに拍手が起こった。
「そうです。お見事です」
 ジェゴルは思わず爆笑しそうになった。


★★★


 ヒョンとジェゴルはそそくさ患者宅を後にする。病院船の近くで2人は合流した。
「終わりか?」とジェゴル。
 ヒョンは訊ね返した。
「ソさんは?」
「門前払いされたよ」
「なぜ?」
 ジェゴルは遠くを見た。
「遠隔診療の広報映像を撮るんだとか…」
「広報映像?」
「ノートパソコンを渡されて、お年寄りたちはみんな大興奮してたよ」
「…」
「保健政策課長の話が耳に入ったんだが、遠隔診療を試験運用をする島は26か所だそうだ」
「26島?」
「ああ。妙なことにその対象の島はぜんぶ―病院船の診療区域だ」
 ヒョンは厳しい表情になった。




 2人は病院船に戻ってきた。ヒョンの診療室で話をした。
「遠隔診療は本当に可能なのか?」
 ジェゴルは診察台に腰をおろして問いかけた。
「画面だけで診療と処方を行うとか…」
「考えられないな」
 ヒョンは聴診器を外して机上に置いた。
「聴診、視診、触診、打診…すべてやっても誤診は起こる。画面だけでやるのはとても無理だ」
「だよな」ジェゴルは頷いた。「SF映画並みの人工知能が診断するならまだしも、映像通話だけで処方までするなんて―無茶な話だ」
「…現行の医療法にもそぐわない」
 ジェゴルは下を向いて頷き続けている。
 ふいにヒョンを見た。
「ソン先生と連絡は?」
 ヒョンは黙ってジェゴルを見つめ返す。
「事情聴取の最中ってことか…度胸のある彼女でも警察署の中では不安だろうな」
「迎えに行くつもりだ」
「そうだな。早く連れ出してやれ」
 ジェゴルはヒョンの肩を叩いて出て行った。




 
 ウンジェは刑事に妊婦の手術を行った日の状況を説明した。
「母胎を内診したところ、臍帯脱出と判明したのです」
「…」
「すぐに処置しなければ胎児に酸素が行かず、死産する可能性がありました。そこで緊急手術をするしかありませんでした」
「家族に説明は?」
「しました」
「家族は聞いてないと言ってるが」
「そんなことはありません」
 刑事は書類に目を落とした。
「手術の同意書もないようだが…同意書にサインは? サインしてもらいましたか?」
「もらってません」
 刑事は目を光らせた。
「ですが十分に説明を行い、同意を得ました」
「その証拠は?」
「看護師が同席していました」
「それは信用できない。同僚なら口裏を合わせられるだろ」
「刑事さん」
「だから同意書が必要なんです。外科医にとっては基本的事項でしょうが」
「…」
「初めての手術で動揺したんですか?」
 ウンジェは刑事を強く見つめ返す。
「吸引した時は―どうでした? やはり平静ではなかった?」
「質問の意図は何でしょうか?」
「不十分な吸引が原因で胎児は重体に陥ったのでは?」
「違います」
「では、どうしてだ?」
「重体になったのは残念ですが、原因が吸引とは断定できません」
「だが、原因のひとつにはなりうる。私は捜査の前に専門家の意見を聞きました。吸引が不十分で羊水や胎便が肺に残ると、呼吸不全が起こるとか。吸引は100%問題なかったと言えますか?」
「いいえ。何事も100%否定はできません」
「では、吸引が原因とも考えられる」
「ですが、断言はできません。新生児呼吸窮迫症候群は原因の特定が難しく、経過を見て判断します。何よりも今回のケースは、低出生体重児なのが一番の原因…」
「ああ、結構です。吸引時の状況説明を」
「はい? 説明とは?」
「へその緒を切った後、吸引する過程で何が起きたのか聞きたい」
「それは…」
「何です?」
「…」
「なぜ、黙るんですか」
 ウンジェはへその緒を切った時のことを思い浮かべた…。
「ソン先生」
 刑事は机を叩いた。
「答えてください」
「吸引時の記憶がないのですか? それとも他の人が吸引を?」
「…いいえ。違います…私が吸引しました」
「本当に…? なら、説明できるでしょう?」
 ウンジェは答えるのをためらった。
「ここからは内科医の僕が担当する…」
 ヒョンの言葉が脳裏をよぎった。
「いいえ。吸引は私がやりました」
 ウンジェはきっぱり答えた。






 ウンジェは肩を落として警察署を出た。
 事情聴取をした刑事は最後に言った。
「必要があればまた話を伺います。そのつもりでいてください。吸引の件だけでなく、同意なしの手術も問題がありますから…」
 ウンジェは空に向けて大きくため息をついた。
 あの時、自分は同意は得た。妊婦の母親から”同意”の確認を取った。それがなかったことになっている…。
 第三者からそれが伝わってくるのは彼女ににとってショックだった。刑事の嫌味な言葉よりその現実がウンジェの心を痛めつけていた。
 ウンジェは母親とのやりとりを思い起こした。
 
―問題は…」
―他にも何か?」
―私は産科医でなく外科医なので…だから」
―それで?」
―帝王切開を行ったことがありません」
―初めてだと?」
―…私を信じて任せていただけますか?」
 母親は迷っていた。
―家族の同意なしに手術は出来ないのです」 


 ウンジェは呟いた。
「確かに説明した…予測できる危険もすべて話したわ。同意も得たのに、なぜ否定を?」
 下を見た。またため息が出た。
手をこまねいている段ではない。
 顔を上げると通りに向けて走り出した。





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