国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(62)が18日来日し、小池百合子東京都知事(64)と都庁で会談した。小池氏がコスト削減を名目に検討を進める2020年東京五輪・パラリンピックのボート、カヌー・スプリント会場の見直しについて、バッハ会長は「(13年の)五輪招致した際に決めた大原則を守ってほしい」と、暗に計画通り「海の森水上競技場」での開催を支持した。一方、会場見直し問題が決着しない場合にIOCが韓国での代替開催案を検討していることが判明した。
午後3時前、予定を変更し完全公開で行ったバッハ会長との約40分間の対談は、小池知事にとってほとんど実りのないものとなった。紺色のスーツ姿の知事が笑顔でバッハ会長を出迎え和やかムードの会談は、開始5分、「長沼ボート場」開催に前向きな小池氏が会場見直し問題に斬り込むと緊張が走った。「世論調査では開催費用の見直しに80%が賛成している。(五輪招致時に)復興五輪としていたが、(現行案は)それに資しているか」と同意を求めた。
だが、バッハ氏は首を縦には振らない。「必ず守らなくてはならないのは、都が3年前に決めた大原則。このルールを変えないことが日本、東京都、IOCにおいて理にかなっている」。大原則とは13年の招致時に都が掲げた、選手村から半径8キロ圏内で開催され、経費7340億円で収める「コンパクト五輪」のことだ。何度も「大原則」を用いて、暗に計画通り「海の森」での開催を支持した。
小池氏は時折、顔をこわばらせたが「多くの国民が会場の経費がいくらかを知っている。特にパブリックマネーを使う都民の納得が必要だ」と必死に応戦した。
東京の五輪招致と時を同じくしてIOC会長に就任したバッハ氏にとって、東京大会は思い入れがある。14年には提言「アジェンダ2020」を策定し、コストカットを推進してきた。しかし、今回は経費がかかる「海の森」を推した。東京の準備状況を監督しているのはバッハ会長の懐刀と言われるIOCのコーツ副会長。ボート競技出身で「海の森」が白紙となれば「コーツの顔がつぶれる」(組織委関係者)。バッハ会長は今回ばかりは「経費」より「協調」を選択した。
小池氏は今月中に都として結論を出す方針。「長沼」実現へ向けて最大のハードルは「海の森」を推す組織委、競技団体の考えを変えることだ。バッハ氏は小池氏にチャンスも与えた。11月中に都、政府、大会組織委員会、IOCで構成する「4者会議」の開催を提案。実務者レベルで話し合い、当事者同士が納得できる答えを模索するように促した。
この日、「海の森」が建設されなかった場合に備え、IOCが韓国の忠州で開催する案を検討していることが判明した。設備が整っており、経費はほとんどかからない。唐突に見える「韓国開催案」は「組織委、競技団体を説得できないなら、長沼を諦めなさい」というバッハ会長のメッセージととれる。組織委、競技団体に続き、IOC会長に突き放された小池氏。“四面楚歌”に陥った都知事がどんな秘策を繰り出すか注目される。(スポーチ報知)
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