矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

フェローの方を、自分の母校で見学実習へ

2008-11-04 09:48:18 | Weblog
日本に帰国した大きな目的のひとつは、日本ではまだまだ確立されていない体系的な研修システムを構築することでした。私の専門領域の感染症は、専門科としても確立していない状況で、日本での診療レベルの向上は最重要課題のひとつである、と認識してきました。

自治医科大学で、2006年からフェローシップを立ち上げました。当初はポジションも確立しておらず変則的な形でのスタートでした。2007年からは病院の公式ポストをいただけることとなり(シニアレジデント枠)、医師としての資質の高いお二人が高い志をもって赴任されました。

その中のひとりは、とても国内だけで研修したとは思えないほど、米国の標準的な診療にも知識がありました。私は、一緒に1年ほど働いただけで、すでに彼女が自治医大で学べることは限界がある、と直感していました。

そのため、米国で自分が受けた「贅沢なまでの恵まれた環境、教育内容」を彼女にも提供したくて、いろいろ画策した結果、学内での理解、後押しなども得られ、今回、4ヶ月ほどの米国での見学実習が実現しました。

さっそく彼女から近況の報告がありましたが、米国の大学病院における「シャープな診療」を肌で感じているようです。くしくも、彼女がついている指導医は、私が指導医をしていたイリノイ州の大学で、私のレジデントだった人です。

そのレジデントだった彼女も、感染症のフェローシップを終了し、母校に指導医として赴任していました。時の流れを感じるとともに、米国式の「屋根瓦」方式の研修システムの奥深さを感じています。研修医から指導医へ、教えられる側から教える側へ。そして一旦、指導医になれば、「年功序列が存在しない」世界のため、プロフェッショナルとしては対等に、学術的な意見を交換できる、そんな世界です。

一流のプロフェッショナルを育てる環境を、日本でも築きたいと切に思います。

「なあなあ」な診療(鑑別診断が甘い診療)、「標準からずれた診療」、「基本知識の欠如、基本事項の未修得に起因する見落としだらけの診療」を改善することが、日本の医療現場の重要課題である、と私は認識しています。

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