千恵子抄 2013-11-30 00:18:38 | 千恵子抄 千恵子は東京に空が無いといふ、 ほんとの空が見たいといふ。 私は驚いて空を見る。 桜若葉の間に在るのは、 切つても切れない むかしなじみのきれいな空だ。 どんよりけむる地平のぼかしは うすもも色の朝のしめりだ。 千恵子は遠くを見ながら言ふ。 阿多多羅山の山の上に 毎日出てゐる青い空が 千恵子のほんとの空だといふ。 あどけない空の話である。 検索用・片山千恵子